案件紹介制度・初案件獲得保証・延長保証の条文

「初案件が取れるまでサポート」は強い訴求です。書き方を誤れば、案件の獲得そのものを約束した契約になります。

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スライドと契約書で保証の条件が食い違えば、優先するのは契約書。事業者が想定したより緩い基準で保証の義務を負います。

このページの要点

  • 保証の対象は案件の獲得という結果ではなく「支援の継続」。独立した条として置く。
  • 適用の条件(視聴・課題・出席・活動・完済・規程遵守)を、視聴ログや出席記録などの記録で判断する。
  • 案件紹介制度は審査制とし、紹介の義務なし・手数料なし・受講契約とは別の業務委託契約で行う。
  • 販売資料にも保証の意味と条件を強調表示の近くに書き、スライドと契約書の条件を一つにそろえる。

結論:保証するのは「支援の継続」。結果は保証しない

結論

副業スクールの「初案件獲得保証」「収益化まで伴走」は、案件の獲得や収入という結果ではなく、条件を満たした受講者への支援を続けることを約束する制度として書きます。適用の条件、判断の資料、申請の期限、終了の事由を条文にし、販売ページの表示にも同じ意味を近くに書きます。案件の紹介制度は、受講契約とは切り離した審査制の制度として設計します。

セールス代行のスキルを教える高額のスクールで、事務所は依頼者の全21条の原契約書を、全49条の受講契約書に再構成しました。その途中で、依頼者から「初案件獲得保証」を追加したいという希望がありました。「初案件が取れるまでサポートします」という訴求は、受講を検討する人にとって強い魅力ですが、書き方を誤れば、案件を取らせること自体を約束した契約になり、取れなかった受講者から全額の返金や損害賠償を求められかねません。

事務所は、保証の対象を「案件の獲得という結果」ではなく「支援の継続」と定め、独立した条として書きました。案件を取れるかどうかは、受講者の活動量、市場の状況、相手方の判断に左右され、事業者が支配できない結果だからです。事業者が約束できるのは、受講者が一定の条件を満たしている限り、支援の期間を延ばし、支援を続けることです。

事務所の改訂例|初案件獲得保証の追加(セールス代行スクール)

保証の位置づけ

改訂前初案件を獲得できるまでサポートする、という訴求を追加したい。(依頼者の希望)
改訂後保証の対象を「支援の継続」とし、受講契約の中に独立した条として置きました。適用の条件・判断の資料・申請の期限・終了の事由を条文にしています。

理由案件の獲得は事業者が支配できない結果であり、結果を約束すれば、獲得できなかった受講者への全額の返金などを求められかねないためです。

表示との関係

改訂前販売資料に「初案件が取れるまでサポート」と表示。(依頼者の資料)
改訂後表示が案件の紹介・成約・報酬を保証する意味ではないことを条文にし、販売資料にも近接して表示するよう求めました。

理由契約と表示の意味がずれると、受講者は表示の意味で契約したと主張できるためです。

初案件獲得保証の条文:条件・資料・期限・終了

保証の条は、四つの要素で組み立てています。誰が使えるか(適用の条件)、それをどう判断するか(判断の資料)、いつまでに申請するか(申請の期限)、どういうときに終わるか(終了の事由)です。

条文例受講契約書(初案件獲得保証)

  1. 本保証は、案件の紹介、案件の成約又は報酬の獲得を保証するものではなく、次項の条件を満たした受講者に対し、初めての案件の獲得に向けた支援を継続することを内容とします。
  2. 本保証の適用を受けるには、受講者が次の条件をすべて満たしていることを要します。
    (1) 全ての動画を視聴したこと
    (2) 全ての課題を提出したこと
    (3) 個別コンサルの全てに参加したこと
    (4) 継続的に応募活動を行っていること
    (5) 受講料の支払債務を完済していること
    (6) 本契約及び当社の規程に違反していないこと
  3. 前項の条件の充足は、視聴ログ、課題の提出記録、個別コンサルの出席記録、応募の記録及び受講者の活動報告により判断します。
  4. 本保証の申請は、受講期間の満了日の14日前までに行うものとします。
  5. 本保証の期間中、当社は、受講者が行うべき活動の基準をあらかじめ示します。当社は、受講者の不利益にならない範囲で、この基準を調整することがあります。
  6. 受講者が活動を停止する場合は、当社に申し出て保証を休止し、再開を申し出ることができます。受講者が連続して30日間活動を行わず、かつ、当社からの連絡に応じないときは、本保証は終了します。

第1項で保証の意味を限定し、第2項・第3項で条件と判断資料を客観化しています。第6項は、保証が受講者の活動を前提とする制度であることを、終了の事由の形で示したものです。

条件を客観的な記録で判断する点が要です。「真剣に取り組んだ受講者」「積極的に活動した受講者」のような書き方では、保証を使えるかどうかを事業者の評価で決めることになり、受講者との争いになったときに説明ができません。視聴ログ、提出記録、出席記録、応募の記録は、どれも事業者の側でも受講者の側でも確かめられる事実です。

活動の基準を「あらかじめ示す」とし、調整は「受講者の不利益にならない範囲」に限ったのも同じ理由です。保証の期間に入ってから事業者が基準を厳しくすれば、事後的に条件を変えて保証を使わせないことになります。休止と再開の手続を置いたのは、受講者の病気や家庭の事情で活動が止まったときに、すぐに保証が終わるのではなく、事情を伝えれば止めておける道を用意するためです。そのうえで、連続30日の無活動と連絡の不応答が重なったときは終了する、という終わり方を決めておきます。

条件の中に「受講料の支払債務を完済していること」と「規程に違反していないこと」を入れたのは、保証が受講契約の上に乗った制度だからです。分割払いの途中で支払が止まっている受講者や、他の受講者への勧誘など規程に反する行為をした受講者にまで、支援の継続を約束する理由はありません。申請の期限を受講期間の満了日の14日前までとしたのも、保証の期間に入る前に、条件を満たしているかを記録で確かめる時間をとるためです。期限を置かなければ、受講期間が終わった後に申請が届き、すでに終わった期間の活動を後から確かめることになります。

「初案件が取れるまでサポート」の表示:契約と販売資料をそろえる

保証の条をどれだけ丁寧に書いても、販売ページに「初案件が取れるまで、とことんサポート」とだけ大きく書いてあれば、受講者は結果の保証として受け取ります。事務所は、この表示が案件の紹介・成約・報酬を保証する意味ではないことを契約書の中で条文にしたうえで、販売資料にも同じ説明を表示の近くに置くよう求めました。

Instagram分析講座の成果保証のレビューでは、逆の失敗の形を見ています。講座のスライドでは「成果保証」「目標の数値に達するまでサポート継続」が大きく書かれ、その条件は小さく書かれていました。しかも、スライドに書かれた投稿の条件(保証の対象から外す投稿の種類)と、契約書に書かれた条件が一致していませんでした。契約書の条件が優先する以上、事業者がスライドで想定していたより緩い基準で保証の義務が生じることになります。表示と契約の不一致は、どちらに転んでも事業者に不利に働きます。表示の問題全体は「稼げる」の表示で扱います。

保証の表示は、消費者契約法の取消しとも関わります。「初案件が取れるまでサポート」と大きく伝え、条件を伝えていなければ、受講者は案件が取れる、つまり収入が得られると受け取ります。将来の収入という不確実な事項について確実であるかのように伝えたと評価されれば、断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号)による取消しの主張を招きます。保証制度は、受講を後押しする訴求であるほど、その意味と条件を同じ強さで伝える必要があります。

事務所の改訂例|保証の書き方(Instagram関連の講座のレビューから)

成果保証のスライド

改訂前「成果保証」「目標の数値に達するまでサポート継続」を大きく表示し、条件は小さく表示。投稿の条件がスライドと契約書で異なる。(依頼者の資料)
改訂後保証の意味(支援の継続)と条件を、強調した表示の近くに同じ大きさで書き、スライドと契約書の条件を一つにそろえるよう指摘しました。

理由強調表示と打消し表示のバランスが悪いと、受講者は結果の保証と受け取ります。条件の不一致は、契約書の緩い基準で義務を負う結果を招きます。

収益化まで支援を続ける訴求

改訂前受講料を取り戻せるまで支援する、という趣旨の訴求のみ。(依頼者の案)
改訂後伴走の条件、収益を保証しないこと、伴走期間の上限(18か月)を定義し直しました。

理由条件も上限もない伴走は、事実上の収益保証と受け取られかねないからです。

Instagram収益化コンサルの依頼者からは、参考として他社の契約書のレビューも依頼されました。その契約書には「売買代金相当額以上の収益化が図れるまでサポートを保証する」という条項がありました。事務所は、これを事実上の収益(投資の回収)の保証と読まれかねない条項として指摘し、消費者契約法4条1項2号の断定的判断の提供との関係や、同じ契約書の中の他の条項との矛盾も挙げています。依頼者自身の、受講後の収益化まで支援を続けるという訴求は、こうした問題を避けるため、上の改訂のとおり条件・非保証・上限で定義し直しました。

延長保証:成果の保証ではなく、追加のサポート期間

セールス代行のスクールでは、初案件獲得保証とは別に「延長保証」も置きました。これも成果を保証するものではなく、条件を満たした受講者に3か月の追加サポートを提供する制度で、申請は1回限りとしています。初案件獲得保証が「初めての案件に向けた支援の継続」、延長保証が「期間の延長」と、それぞれの制度が何を延ばすのかを分けて書くことで、二つの保証を重ねて使えるのか、どちらが先なのかといった疑問が生じないようにしました。

申請を1回限りとしたのにも理由があります。延長を何度でも申請できる形にすると、受講期間が事実上なくなり、受講料が何か月分のサポートの対価なのかが分からなくなります。また、延長の回数に上限がなければ、受講者の側でも、いつまでサポートを受けられるのかの見通しが立ちません。延長の期間と回数を決めておくことは、事業者の負担を限ることであると同時に、受講者に約束の範囲をはっきり示すことでもあります。

保証や延長の期間中に提供するサポートは、受講契約の本来の期間に提供するサポートと、内容を同じにするのか、範囲を絞るのかも決めておきます。期間の延長に伴って、個別コンサルの回数やチャットの対応までそのまま続けるのか、案件の獲得に向けた支援に絞るのかで、事業者の負担は大きく変わります。条件を満たした受講者に何を続けるのかを書いておかなければ、保証の期間中に受講者が期待するサポートと、事業者が想定していたサポートが食い違います。

保証制度を置くと、受講契約の終了時期が受講者ごとに変わります。保証や延長の期間中に受講者が途中でやめた場合の精算、保証の対象となる期間に提供したサポートを受講料のどの部分の対価と考えるか、といった点も、返金の条とそろえて設計します(返金・中途解約の精算)。

審査制の案件紹介制度:受講契約と切り離す

同じスクールには、受講者に案件を紹介する制度もありました。事務所は、この制度を受講契約の役務に含めず、別の制度として次のように設計しました。

案件紹介制度で定めたこと(セールス代行スクール)

項目定めの内容理由
対象全員が対象ではない審査制受講料の対価として全員に紹介を約束する形にしない
審査結果理由を開示しない審査の基準をめぐる個別の争いを避ける
紹介の義務審査に合格しても紹介の義務はない合格を案件の約束と受け取らせない
手数料紹介手数料は受け取らない受講者の報酬から事業者が利益を得る構造にしない
参加時の契約受講契約とは別の業務委託契約を結び、契約が成立するまで報酬請求権はない案件の仕事と受講を契約の上で分ける
制度の変更・終了変更・終了しても補償しない制度の継続を受講の対価と結びつけない
情報の提供案件のクライアントに受講者の情報を提供するときは、提供先・内容・目的を示して同意を得る受講者の個人情報を、受講契約の目的を超えて使わない

このスクールのレビューでは、受講料の支払と将来の収入の機会が結びつけて説明されるおそれがある点を捉えて、業務提供誘引販売取引との関係を問題として挙げました。ただし、当たるかどうかは販売ページ・広告・個別相談の説明全体で判断されるとして、結論は留保しています。制度を受講契約から切り離して書くことは、当たらない方向に整理するための前提ですが、それだけで結論が決まるわけではありません。勧誘の場で、案件紹介制度を受講の理由として伝えていないかが、最後に問われます。

受講者の情報を案件のクライアントに渡すときの同意は、個人情報の扱いとしても欠かせません。氏名や経歴だけでなく、講座での成績や商談の動画を渡すなら、何を誰に何のために渡すかを、その都度示して同意を得ます。受講実績を宣伝に使うときの同意の取り方も、同じ考え方です。

ご質問と回答|保証制度と案件紹介制度の置き場所

初案件獲得保証は、受講契約とは別の書類にした方がよいですか。

セールス代行のスクールでは、受講契約の中に独立した条として置きました。保証は受講契約の上に乗った制度であり、受講料の完済や規程の遵守を条件にする以上、受講契約と切り離すと条件の参照が複雑になるためです。一方で、案件紹介制度は、参加するときに受講契約とは別の業務委託契約を結ぶ設計です。保証は受講契約の中、案件の仕事は受講契約の外、と置き場所を分けています。

卒業生のマッチングと、約束の有無の欄

SNS起業講座とオンライン秘書養成講座のスクールでは、卒業生のコミュニティで法人からの依頼をマッチングする仕組みのために、依頼者(仕事を出す法人)側の利用規約を作っています。その規約では、特定の人材を必ず紹介するものではないこと、実務と請求は依頼者とメンバーの間で直接行うこと、運営を介さない直接の契約や報酬の交渉ができること、メンバーの引き抜きやスカウトを禁じること、プランごとのマッチング支援の上限(月3回)を定めています。マッチングの場を提供するだけで、仕事の当事者にはならないという立場を、仕事を出す側の規約でも示しておく書き方です。

それぞれの定めには理由があります。実務と請求を当事者どうしで直接行うと定めるのは、運営者が仕事の発注者や請負人の立場に立たないためです。運営者が請求を取りまとめれば、受講者に仕事を提供しているのは運営者だと評価されやすくなります。引き抜きやスカウトの禁止は、コミュニティのメンバーを法人が個別に囲い込み、マッチングの仕組みの外で取引を続けることを防ぐためです。プランごとの支援の上限は、運営者がどこまで関与するかを、仕事を出す側にも示しておくためです。受講者(メンバー)側の規約と、仕事を出す側の規約の両方で、運営者の立場を同じ言葉で書いておくことが要になります。

インスタ・アフィリエイトの起業支援講座の修正契約書では、別紙に「仕事・案件の提供又はあっせんの約束:□なし □あり(内容・条件)」という欄を設けました。約束しないなら「なし」に印を付け、約束するなら内容と条件を書いて守る、という構造です。この欄があれば、受講者は契約の時点で、仕事の紹介が約束されているのかいないのかを書面で確かめられます。収益の保証は、一般に設けないものとしています。

この欄の利点は、約束しないことと、約束したことの両方を、受講者ごとに書面に残せる点にあります。個別相談の中で、講師が特定の受講者に「あなたには案件を回します」と伝えた場合、その約束は契約書の外に残り、後から言った・言わないの争いになります。欄があれば、約束するなら書き、書かないなら約束しない、という運用を講師にも徹底できます。約束を書いた場合は、それを守る義務が生じるため、案件の量や条件を確実に守れる範囲でしか書けません。その制約こそが、過大な約束を防ぐ働きをします。業務提供誘引販売との関係では、約束を書いた時点で、仕事のあっせんを受講の内容としていることになるため、業務提供誘引販売取引としての整理も必要になります。

ヒヤリングの問い|保証制度・紹介制度を設ける前に

  1. 保証の対象は何ですか(案件の獲得、収入、支援の期間)。

    結果を保証するのか、支援の継続を約束するのかで、条文の書き方とリスクがまったく変わります。

  2. 保証を使える条件を、記録で確かめられますか(視聴ログ、提出記録、出席記録など)。

    条件は、事業者と受講者の双方が確かめられる記録で判断できる形にします。

  3. 販売ページやセミナーのスライドで、保証をどう表示していますか。

    表示と契約の条件が一致しているか、条件が強調表示の近くに書かれているかを確かめます。

  4. 案件の紹介に、手数料や報酬の受取りはありますか。紹介先に受講者の情報を渡しますか。

    手数料の有無は業務提供誘引販売の評価に、情報の提供は個人情報の同意に関わります。

起きがちなこと

よくあるご質問

保証制度をつけるなら、契約書に何を書けばよいですか?

保証の対象が結果ではなく支援の継続であること、適用の条件(視聴・課題・出席・活動・支払の完済・規程の遵守など)、条件を判断する資料、申請の期限、活動の基準、休止と再開、終了の事由を書きます。販売ページにも同じ意味を表示の近くに書きます。

「初案件が取れるまでサポート」と表示してもよいですか?

表示するなら、それが案件の紹介・成約・報酬を保証する意味ではないことを、契約書で条文にし、販売資料でも表示の近くに書いておきます。強調した表示だけで条件が小さいと、受講者は結果の保証と受け取ります。

案件を回すときの契約は、受講契約と分けるべきですか?

受講契約とは別の契約にする形を勧めています。事務所が組んだ制度では、案件紹介制度を審査制とし、参加するときは受講契約とは別の業務委託契約を結び、成立するまで報酬請求権がない形にしました。受講料の対価として紹介を約束する形を避けるためです。

受講生の情報を案件の依頼主に渡す場合の注意点は?

誰に、何を、何のために渡すのかを示して、受講者の同意を得てから渡します。顔写真・氏名・商談の動画など本人を特定できる素材は、その都度同意を得ることが前提です。

他社の「収益化が図れるまでサポートを保証する」という条項は、まねしてもよいですか?

事実上の収益の保証と読まれるおそれがあり、断定的判断の提供との関係や、成果を保証しない旨の条との矛盾も問題になります。事務所の改訂例では、伴走の条件、収益を保証しないこと、期間の上限を定義する形に直しています。

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