マネー講座の個人情報:家計・保険証券・取引データ・録画・AI

マネー講座は、受講者が最も知られたくない種類の情報を、契約の前の無料相談から集め始めています。

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受講者には守秘を求めているのに、最も多くの情報を受け取る事業者自身の義務が、契約のどこにも書かれていない。

このページの要点

  • 無料相談で収入・資産・負債・保険を聞き取るなら、契約に至らない相談者も個人情報保護法の対象。PPの対象を相談者まで広げる。
  • 家計・資産の情報は要配慮個人情報に当たらないが、保険証券の健康の情報は当たり得る。要配慮・外国提供・AI入力は独立した同意で。
  • グループで話す講座では、事業者の目的外利用の禁止・第三者非開示・事例利用の個別同意を契約に書く。
  • 財産的被害のおそれがある漏えいは件数にかかわらず報告・通知の対象。受け取る窓口と保存先を決める。

結論:マネー講座は、無料相談の時点から「財産の情報」を集めている

結論

家計・資産形成・投資の講座は、収入・資産・負債・保険・取引の履歴といった、受講者が最も知られたくない種類の情報を扱います。しかも多くは、契約の前の無料相談の段階から集め始めています。プライバシーポリシーは「契約者向け」では足りず、相談者を含めて書き、要配慮個人情報・外国への提供・AIへの入力は独立した同意をとり、グループで話される情報について事業者自身の義務を契約に書きます。

無料相談の段階で、何を集めているか

家計・ライフプラン・投資の第一歩をサポートする講座の事前説明で、事務所が最初に指摘したのは、個人情報を取得する時点の問題です。この講座では、契約の前の無料のZoom相談で、相談者の収入・資産・負債・保険の内容を聞き取っていました。相談の内容が具体的であるほど、講座の提案もしやすくなるからです。しかし、その時点で個人情報の取得は始まっており、相談だけで契約に至らなかった人の情報も、個人情報保護法の対象として扱わなければなりません。

依頼者の手元にあったプライバシーポリシーは、「契約者の個人情報」だけを想定した書き方でした。無料相談の相談者について、何に使い、いつまで持ち、契約しなかったときにどうするかが、ポリシーのどこからも読み取れません。事務所は、ポリシーの適用範囲に相談者を加え、利用の目的に「相談への回答と講座の案内」を含め、契約に至らなかった相談者の情報の扱いも書くよう勧めました。

条文例プライバシーポリシー(相談者を含めた対象と利用目的の例)

  1. 本ポリシーは、当社の講座の受講者のほか、無料相談その他の相談を申し込まれた方(以下「相談者」といいます。)の個人情報の取扱いに適用します。
  2. 当社は、相談者から取得した収入、資産、負債、保険の内容その他の情報を、相談への回答及び当社の講座のご案内のために利用します。
  3. 相談者が講座の契約に至らなかった場合、当社は、前項の情報を、当社が定める期間の経過後に消去します。

保存の期間は、事業の実態に合わせて具体的に定めます。保険証券など要配慮個人情報を含み得る書類の取得、外国にある第三者への提供、AIのサービスへの入力については、別に独立した同意を得ます。

無料相談で何を聞くかは、業法の線とも関わります。保険の内容を詳しく聞き取れば、保険の見直しの具体的な提案に近づき、保険証券を受け取れば健康に関する情報まで手元に来ます(家計相談と隣接する業法)。聞き取る項目を決めることは、個人情報の取得の範囲を決めることであると同時に、講座が踏み込む範囲を決めることでもあります。相談の段階では、講座の内容を判断するのに必要な範囲に聞き取りをとどめ、資産の内訳の細部まで聞かない、という運用が両方の意味で安全です。

家計・資産の情報と保険証券:要配慮かどうかで同意を絞る

個人情報保護法は、人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴のように、取扱いを誤ると本人が不当な差別や偏見を受けかねない情報を「要配慮個人情報」と呼び(個人情報保護法2条3項)、その取得には原則として本人のあらかじめの同意を求めています(同法20条2項)。マネー講座で扱う情報のうち、何がこれに当たるかを区別しておく必要があります。

マネー講座で扱う情報と、要配慮個人情報

情報要配慮個人情報か扱いの要点
収入・資産・負債・家計の収支当たらない要配慮ではないが、知られたくない情報として、目的外利用の禁止と第三者への非開示を約束する
保険証券の内容(病歴・告知内容など健康に関する部分)当たり得る取得の前に、要配慮個人情報としての本人の同意を独立して得る
取引の履歴・取引データ当たらない利用の目的(統計・研究・運営者自身の利用など)を具体的に書き、承諾を得る
面談・グループコンサルの録画内容による録画と利用について別途の同意を得る。話された内容に健康の情報などが含まれることもある

家計管理サポートの案件で事務所が確認したのは、家計や資産の情報が要配慮個人情報には入らないという区別です。家計の情報は受講者にとって極めて私的なものですが、法律上の要配慮個人情報の範囲は限定されており、そこに含まれるわけではありません。要配慮ではないからといって扱いが軽くてよいわけではなく、法律上の分類と、受講者が感じる秘密の重さは別のものとして、それぞれに応じた手当てをします。

この区別が実務で効いてくるのは、同意の取り方です。要配慮個人情報に当たらない家計の情報なら、利用の目的を示して取得すれば足り、取得そのものに独立した同意は要りません。一方で、要配慮個人情報に当たる健康の情報は、取得の前に本人の同意が必要です。すべての情報について一律に重い同意の手続をとると、受講者にとって申込みの手続が煩雑になり、どの同意が何のためのものかが分かりにくくなります。何が要配慮に当たるかを先に区別しておけば、同意を求める場面を必要なところに絞り込めます。

家計・ライフプランの講座の事前説明で、事務所は三つの扱い、つまり要配慮個人情報の取得、海外の第三者への提供、AIのサービスへの入力について、プライバシーポリシーへの包括的な同意とは別に、それぞれ独立したチェックボックスで個別に同意を得るよう勧めました。どれも、受講者がプライバシーポリシーを読み流したときに想定しにくい扱いであり、個別に同意を得ておかなければ、受講者が理解したうえで同意したと言いにくいからです。

包括的な同意とは別に、独立して同意を得る三つの扱い

  1. 要配慮個人情報の取得保険証券の健康に関する情報など。取得するより前に本人の同意を得る(個人情報保護法20条2項)
  2. 海外の事業者への提供海外のクラウドや外部のサービスに渡す場合など。同意を得る際に、移転先の国の制度などの情報を提供する(同法28条)
  3. AIのサービスへの入力学習に使われる規約のサービスなら、入力が第三者提供と評価され、同意を要することがある(同法27条)

申込みのフォームには、ポリシー全体への同意欄と別に、この三つの同意欄をそれぞれ設けます。

個人情報保護法32条は、事業者の名称と住所、法人なら代表者の氏名、保有個人データを何に使うか、開示などを求める手続といった事項を、本人が知ることのできる状態に置くよう求めています。求めがあったときに遅滞なく答える方法も認められていますが、相談者や受講者がまず確かめたい情報なので、プライバシーポリシーに載せておくのが実務では一般的です。家計や資産の情報を預ける側の受講者にとって、誰がどこで情報を管理し、どうすれば開示などを求められるのかが分かることは、講座を選ぶ判断の材料にもなります。

ご質問と回答|プライバシーポリシーについて

受講者向けのプライバシーポリシーはすでにあります。無料相談の相談者についても、それで足りますか。

家計・ライフプランの講座の事前説明で、事務所は「契約者向けのポリシーでは足りない」と回答しました。相談の段階で収入・資産・負債・保険の内容を取得している以上、相談者もポリシーの対象に含め、相談者の情報の利用目的と、契約に至らなかった場合の扱いを書く必要があるためです。

グループで話される情報と、事業者自身の義務

女性向けのマネー・資産形成講座は、グループコンサルで受講者が自分の収入や資産、家族関係を話すことを前提にした講座でした。ところが原契約書の秘密保持の条(第24条)は、受講者が他の受講者の情報を漏らさないという受講者の側の一方的な義務だけを定め、事業者がその情報をどう扱うかは何も書いていませんでした。受講者に守秘を求めながら、最も多くの情報を集める事業者自身の義務がない、という形です。

事務所の改訂例|マネー・資産形成講座の秘密保持と個人情報

事業者側の義務

改訂前受講者は、他の受講者の情報を第三者に漏らしてはならない。(依頼者の原案、受講者の一方的な義務のみ)
改訂後第24条3項に、事業者が受講者の情報を講座の目的以外に利用せず、第三者に開示しないこと、受講者の事例を講座の教材や発信に使うときは個別に同意を得ることを加えました。

理由受講者が講座で自分の財産や家族の情報を話す前提なら、その情報を受け取る事業者の義務を契約で示す必要があるためです。

第23条(個人情報)

改訂前個人情報は適切に管理する、という趣旨の定めのみ(第23条)。(同)
改訂後安全管理、開示などの請求への対応、海外の事業者への提供(個人情報保護法28条)といった検討が抜けていたため、プライバシーポリシーの側で整えました。

理由契約書の一条では、個人情報保護法が求める事項を書ききれないためです。

条文例受講契約書 第24条3項(事業者の義務)

  1. 当社は、本講座において受講者から提供を受けた受講者の収入、資産、家族関係その他の情報を、本講座の提供の目的以外に利用せず、法令に基づく場合を除き、第三者に開示しません。当社は、受講者の事例を本講座の教材又は当社の発信に利用するときは、事前に受講者の個別の同意を得ます。

受講者に守秘を求める項と同じ条の中に置き、情報を受け取る側の事業者の約束を並べて示しています。

あわせて、申込みの直前に送る確認メッセージの中で、グループコンサルは録画してアーカイブ配信すること、知られたくない事柄はグループの場で話さないことを伝える形にしました。グループの場で話された情報は、他の受講者にも、録画を見る受講者にも伝わります。事業者が自分の義務を約束しても、受講者自身が話した内容が他の受講者に聞かれることまでは防げません。話す内容を受講者自身が選べるよう、申込みの前に伝えておくことが、事業者の義務の約束と並ぶもう一つの手当てです(確認書・申込み前確認メッセージ)。

家計の事例と商談の録画を、発信や教材に使うとき

家計管理サポートの改訂契約書では、個別面談の録画について、受講者の別途の同意がない限り、録画も利用もしない構成をとりました。面談では、家計の具体的な数字や家族の事情が話されます。録画を講師の振り返りや記録のために残す場合でも、その目的と保存の期間を示して同意を得るのが前提です。グループの講義を録画してアーカイブ配信する講座とは、録画の目的も見る人の範囲も違うため、同意の取り方も分けて書きます。

受講者の事例を、講座の教材やSNSでの発信に使いたいという希望もよくあります。家計管理サポートの案件では、個人を特定できない形に加工した事例であれば使えるが、特定できる形で使うなら別途の同意が必要、という区別で整理しました。マネー講座の事例は、年収や家族構成、住んでいる地域の組合せだけで本人が特定されやすいため、「名前を出さなければよい」とは限りません。数字を丸め、属性をぼかし、本人が読んでも自分のことと分かりにくい程度まで加工して初めて、特定できない事例と言えます。

セールス代行のスクールでは、受講者の商談の録画を教材や実績の紹介に使う場面がありました。商談の録画には、受講者本人だけでなく、商談の相手方である第三者の顔や声、会社名が映り込みます。受講者の同意を得ても、相手方の同意がなければ使えない情報が含まれるため、商談の録画を使う場合は、第三者の情報を除く加工をするか、使う範囲を内部の教材に限ることを検討します。受講実績の掲載の同意の取り方は案件紹介制度・初案件保証でも触れています。

取引データの利用目的と、AI・海外のクラウドへの入力

取引の記録を共有するWebサービスの事例では、規約にもポリシーにも、利用者の取引データを、市場の分析、サービスの研究開発、統計データの作成、そして運営者自身のFX取引その他の投資判断の参考情報として利用することを、利用の目的として明記していました。取引データは要配慮個人情報ではありませんが、利用者の資産の動きそのものです。とくに運営者自身の投資に使うことは、利用者が想定しにくい目的なので、規約とポリシーに同じ文言で載せたうえで承諾を得ています(EA・投資ツールの使用許諾と規約)。

このサービスでは、データベースとホスティングを海外の事業者のクラウドに置いていました。個人データを外国の第三者に渡すには、個人情報保護法28条により原則として本人の同意が要り、同意を求める前に、移転先の国名、その国の個人情報保護の制度、移転先がとっている保護措置などを本人に知らせる必要があります。もっとも、クラウドに置くこと自体が「提供」になるかは、クラウド事業者が保存データを取り扱える契約かどうかで結論が分かれます。利用中のサービスの規約を読んでから、ポリシーの書き方を決めます。

AIのサービスへの入力も、同じ観点で整理します。家計・ライフプランの講座の事前説明で、事務所は、受講者の相談内容や家計の情報をAIのサービスに入力して資料を作る運用について、AIのサービスが入力データを学習に回す規約なら、個人データの取扱いの委託とは評価できず、第三者提供(個人情報保護法27条)として本人の同意を要する場合があること、提供元が海外の事業者なら28条に基づく情報提供も加わることを指摘しました。AIに入力しない運用にするか、学習に使われない設定や契約のサービスを選ぶか、同意を独立して得るかの、どれかを選ぶことになります。

どれを選ぶかは、講座の運営の中でAIをどう使うかによって変わります。講師が講義の資料の下書きにAIを使うだけで、受講者の情報を入力しないのであれば、入力しない運用を内部のルールとして決めれば足ります。受講者ごとの家計の改善案をAIで作る運用なら、受講者の情報を入力することが前提になるため、学習に使われない契約のサービスを選ぶか、受講者の独立した同意を得る必要があります。どの運用をとるにしても、プライバシーポリシーの記載と実際の運用が一致していることが前提であり、運用を変えたときはポリシーも見直します。

万一の漏えいへの備えも、マネー講座では重くなります。個人情報保護法26条は、本人の権利利益を大きく害するおそれがある漏えいなど、委員会規則が定める事態が起きたら、個人情報保護委員会に報告し、本人にも知らせるよう求めています。この事前説明では、悪用されれば財産上の被害につながり得る個人データの漏えいなどは、1件だけでも報告・通知が必要な事態に入ることを伝えました。口座の情報や資産の情報を扱う講座は、1件の漏えいでも報告の対象になり得るという前提で、安全管理の措置を考える必要があります。

マネー講座の運営では、受講者の家計の記録や取引の画面のスクリーンショットが、チャットやメールで日常的にやり取りされます。講師やスタッフが個人のスマートフォンでそれを受け取り、そのまま保存していることもあります。安全管理の措置というと大がかりに聞こえますが、まずは、受講者の情報をどの窓口で受け取り、どこに保存し、誰が見られるのかを決めることから始まります。受け取る窓口が増えるほど、漏えいの入口も増えます。

講師や外部のスタッフ、プロモーションを担う会社と受講者の情報を共有する講座では、共有の範囲も決めておきます。FXスクールの講師との業務委託契約には、売上や受講者への対応の履歴をプロモーションの会社と共有することへの同意が定められていました。講師との間で同意があっても、受講者の情報を外部の会社に渡すことが、受講者に示した利用目的や第三者提供の定めの範囲に入っているかは、別に確かめる必要があります(講師との契約)。

ヒヤリングの問い|マネー講座の個人情報を整える前に

  1. 無料相談の段階で、何を聞き取っていますか。契約に至らなかった人の情報はどうしていますか。

    プライバシーポリシーの対象を相談者まで広げ、保存と削除の扱いを決めるためです。

  2. 保険証券や健康に関わる書類を受け取ることはありますか。

    要配慮個人情報の取得として、独立した同意が必要になります。

  3. 面談やグループコンサルの録画はありますか。録画は誰が視聴できますか。

    録画の目的と範囲ごとに、同意の取り方を分けます。

  4. 受講者の情報を、AIのサービスや海外のクラウドサービスに入れていますか。

    第三者提供や海外への提供に当たるか、同意や事前の情報提供が要るかを確かめます。

  5. 受講者の事例や商談の録画を、教材や発信に使いますか。

    特定できない形への加工か、本人と第三者の同意かを決めます。

起きがちなこと

よくあるご質問

家計相談の録画は残してもよいですか?

残すなら、録画の目的・保存の期間・見られる人の範囲を示して、受講者の別途の同意を得ることが前提です。事務所の改訂契約書では、個別面談は受講者の別途の同意がない限り録画も利用もしない構成をとっています。グループの講義のアーカイブ配信とは、同意の取り方を分けて書きます。

家計や資産の情報は、要配慮個人情報ですか?

収入・資産・負債・家計の収支は、個人情報保護法2条3項の要配慮個人情報には含まれません。一方、保険証券に含まれる病歴など健康に関する情報は当たり得るため、取得の前に独立した同意を得ます。要配慮でない情報も、目的外利用の禁止や第三者への非開示を約束して扱います。

受講者の事例をSNSなどで紹介するには、どんな同意が要りますか?

個人を特定できない形に加工した事例なら使える一方、特定できる形で使うなら別途の同意が必要です。マネー講座の事例は、年収・家族構成・地域の組合せで特定されやすいため、名前を伏せるだけでは足りないことがあります。

受講者の情報をAIに入力して資料を作ってもよいですか?

入力したデータをAIの提供元が学習に使う規約なら、取扱いの委託とは言えず、第三者提供として本人の同意を要する場合があります。提供元が海外の事業者なら、個人情報保護法28条に沿って、移転先の国の制度などを本人に知らせる手続も加わります。入力しない、学習に使われないサービスを選ぶ、独立した同意を得る、のいずれかを選びます。

無料相談だけで契約しなかった人の情報も、個人情報保護法の対象ですか?

対象です。相談の段階で収入・資産・負債・保険の内容などを聞き取っていれば、契約しなかった人の分も個人情報保護法のルールに従って扱う必要があります。ポリシーが適用される人として、契約者に加えて相談者も挙げ、利用の目的と、契約に至らなかった場合の扱いを書いておきます。

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