このページの要点
- 事業者自身が2か月以上かけ3回以上に分けて受け取る分割は、「技芸又は知識の教授」(施行令別表第一の三第11号)の割賦販売になり得る。
- 割賦販売なら、解除・一括請求の前に20日以上の書面催告(5条)、遅延損害金は法定利率が上限(6条2項)。
- 信販のショッピングクレジットでは、受講者は受講契約の事由を信販会社に対抗できる(35条の3の19)。
- カード・PayPal経由の分割は包括信用購入あっせん。受講者はカード会社に抗弁でき(30条の4)、残額支払義務の条項は実効性がない。
結論:分割払いは「誰が分割を受けるか」で、適用される法律が変わる
講座の代金の分割払いは、事業者が自ら分割で受け取るのか、カード会社や信販会社が立て替えるのかで、割賦販売法の適用の仕方が変わります。事業者が自ら2か月以上・3回以上に分けて受け取る場合、投資・副業・マネーの講座も、指定役務「技芸又は知識の教授」として割賦販売に当たり得ます。そのときは、遅延損害金の上限や、解除・一括請求の前の20日以上の書面による催告など、契約書の書き方そのものが法律で縛られます。
投資スクールや副業スクールは受講料が高額になりやすく、分割払いの選択肢を用意する事業者が多くあります。分割の方法は、事業者が自社で回数を分けて受け取る方法、受講者のクレジットカードの分割払い・リボ払い、信販会社のショッピングクレジット(個別クレジット)、PayPalなどの決済サービスを通じたカード払いなどさまざまです。受講者から見ればどれも「分割で払える」ですが、法律の上では、誰が受講者に与信しているか(支払を待っているか)によって、扱いがまったく違います。
投資スクールで使われる支払方法と、与信する者
事務所が扱ってきた講座の契約書では、一括払い・自社の分割払い・カードの分割払いを区別して書き、信販を使うスクールでは信販会社との関係を別に定めています。インスタ・アフィリエイトの起業支援講座の修正契約書は、一括・直接の分割・カードの分割をはっきり分けて書いた例です。
支払方法と、法律上の位置づけ
| 支払方法 | 法律上の位置づけ | 契約書で押さえること |
|---|---|---|
| 一括払い | 割賦販売法の対象外 | 支払期日と、中途解約の精算 |
| 自社の分割(2か月以上・3回以上) | 指定役務の割賦販売(割賦販売法2条1項1号)に当たり得る | 条件の表示・書面の交付、20日以上の書面による催告、遅延損害金の上限 |
| 自社の分割(2回払いなど、3回未満) | 割賦販売の定義に当たらない | 催告の方法、遅延損害金(消費者契約法9条1項2号の年14.6%の上限) |
| カードの分割・リボ(2か月を超える後払い) | 包括信用購入あっせん(カード会社と受講者の関係) | 受講者がカード会社に対抗できる事由(30条の4)を前提に、精算を決める |
| 信販のショッピングクレジット | 個別信用購入あっせん(信販会社と受講者の関係) | 信販会社との関係、個人情報の提供、抗弁の接続(35条の3の19) |
カードの1回払い(翌月一括など2か月を超えない後払い)は、包括信用購入あっせんの定義から除かれています(割賦販売法2条3項1号かっこ書)。
信販のショッピングクレジットを使うスクール
FX・株式・デイトレードの投資学習スクールは、高額の受講料について、信販会社のショッピングクレジット(個別信用購入あっせん)を使えるようにしていました。この場合、受講者は信販会社と立替払いの契約を結び、信販会社がスクールに受講料を支払い、受講者は信販会社に分割で返済します。スクールと受講者の受講契約と、受講者と信販会社の立替払いの契約が、二つ並ぶことになります。
入会契約書では、この関係を次のように書きました。第2条で「信販会社」を定義し、第8条4項で「本契約と信販契約は別個の契約である。ただし、割賦販売法その他の法令により相互に影響を受ける場合は、それに従う」と定め、第17条3項で、信販の手続のために受講者の個人情報を信販会社に提供することを定めています。申込書面にも、信販を利用する場合は、クーリング・オフ、中途解約、精算について割賦販売法と信販会社の規約が優先することを記載しました。
「別個の契約」と書きつつ「法令により相互に影響を受ける場合はそれに従う」と書くのは、割賦販売法が、受講契約の側で生じた事由を信販会社への支払の拒絶に結びつけているからです。個別信用購入あっせんでは、受講者は、スクールに対して生じている事由(役務が提供されない、契約が解除された、など)をもって、信販会社からの支払の請求に対抗できます(割賦販売法35条の3の19第1項)。この抗弁を受講者から奪うような特約は効力を持ちません(同条2項)。受講契約の側で精算の定めを置いても、信販会社との関係では法律の規律が働くため、契約書の上でもそのことを示しておく必要があります。
分割の途中で受講者が講座をやめた場合の精算は、受講料の精算と、分割の支払の扱いの二つを合わせて考えます。自社の分割なら、受講契約の精算の算式で受講者が負担すべき額を決め、すでに支払われた分割金との差額を返金又は請求します。その分割が割賦販売に当たる場合、契約の解除に伴って請求できる額も、割賦販売法6条1項で頭打ちになります。カードや信販の分割なら、受講者が負担すべき額は受講契約の精算で決まり、カード会社や信販会社への支払は、受講者が持つ抗弁を通じて調整されます。どちらの場合も、精算の算式が受講契約に書かれていなければ、分割の支払をどこで止めればよいかが決まりません(返金・中途解約の精算)。
このスクールでは、後から加えた新しい商品で、信販の利用そのものをやめています。信販を使えば高額の受講料でも申し込みやすくなる一方で、信販会社との加盟店の契約、受講者の個人情報の提供、抗弁の接続を前提にした精算の設計と、事業者の側で管理すべき事項が増えます。新しい商品では、返金の扱いを一本にそろえることを優先し、信販を外す判断をしました。支払方法を増やすか減らすかは、受講者の申込みやすさと、事業者が守るべき手続の量の兼ね合いで決まります。
信販を使うことで、受講者の個人情報を信販会社に提供する場面も生まれます。第17条3項で提供を定めたのは、この提供を受講者の同意の範囲に含めるためです。勧誘の場で信販の利用を勧めるときは、借入れの誘導と受け取られないよう、確認書の項目との関係にも注意します(確認書・申込み前確認メッセージ)。
PayPal経由のカード分割と、残額支払義務・価格差の条項
受講者が自分のクレジットカードで分割払いやリボ払いを選ぶ場合、カード会社と受講者の間の関係は包括信用購入あっせんです。マネー・資産形成講座では、PayPalを通じたクレジットカード払いを受け付けていました。事務所のレビューは、カード会社による2か月を超える後払いになる場合、受講者は講座の事業者に対して生じている事由をもって、カード会社からの支払の請求に対抗できる(割賦販売法30条の4第1項)ことを前提に、講座の契約を考える必要があると指摘しています。ただし、支払総額が4万円(リボルビング払いは3万8千円)に満たないものは対象外とされています(同条4項、割賦販売法30条の5、割賦販売法施行令21条)。起業・副業の講座のように、PayPalでの分割(最大10回)を受け付ける講座でも、同じ整理が当てはまります。
家計・ライフプランの講座の事前説明では、依頼者の原案にあった「分割払いを選んだ場合、途中で解約しても分割の残額の支払義務は残る」という条項を削除するよう勧めました。カードの分割払いでは、受講者は30条の4によってカード会社への支払を拒める場面があり、講座の契約書でいくら残額の支払義務を定めても実効性がないからです。この講座の受講料は、支払総額4万円未満の適用除外にも当たらない額でした。
支払方法によって価格に差を付けることにも注意が要ります。マネー・資産形成講座のレビューでは、カード払いの受講者にだけ手数料を上乗せすると、カード会社との加盟店の規約などが定める追加の手数料の制限に抵触するおそれがあると指摘し、契約書の改訂版では支払方法による価格の差を設けないことを明記しました。家計・ライフプランの講座の事前説明でも、振込とカードで価格を変えること自体は法令上可能でも、決済の規約を確認する必要があること、そして「通常価格○円、振込なら○円」という表示は、通常価格での販売の実績がなければ有利誤認の表示になり得ることを伝えています(「稼げる」の表示と価格の表示)。
マネー講座も指定役務から外れない:自社分割の条項の直し方
割賦販売法2条1項1号のいう「割賦販売」には、指定役務の対価を、2か月以上の期間をかけ、かつ3回以上に分けて受け取る条件で役務を提供することが含まれます。どの役務が指定役務かは政令の列挙によります。割賦販売法施行令別表第一の三を見ると、その第11号が「技芸又は知識の教授」です。語学の教授、学習塾、パソコン教室などは別の号で個別に挙げられ、第11号はそれら以外の技芸や知識の教授を広く含む書き方です。投資の手法、家計の管理、SNSの運用、セールスの技術を教える講座も、知識の教授として、この号に当たり得ると考えて設計します。
その分割は、割賦販売法の割賦販売に当たるか
- 当たる方向受講料を事業者が自ら6回に分け、毎月受け取る2か月以上の期間にわたり3回以上に分けて受け取るため、指定役務の割賦販売に当たり得ます。
- 当たらない方向受講料を事業者が自ら2回に分けて受け取る3回以上の要件を満たさないため、割賦販売には当たりません。
- 当たらない方向受講料を事業者が自ら3回に分けるが、申込みから1か月以内にすべて受け取る2か月以上の期間にわたる要件を満たさないため、割賦販売には当たりません。
- 当たり得る受講者が自分のクレジットカードで6回払いを選ぶ事業者の割賦販売ではなく、受講者とカード会社の包括信用購入あっせんです。事業者は代金を一括で受け取りますが、受講者はカード会社への抗弁(30条の4)を持ちます。
- 当たり得る信販会社のショッピングクレジットを使う事業者の割賦販売ではなく、個別信用購入あっせんです。信販会社との関係と、抗弁の接続(35条の3の19)を前提に設計します。
「当たる方向」は、事業者自身が割賦販売法の割賦販売業者としての規律を受けることを意味します。「当たり得る」とした二つは、事業者の割賦販売ではないものの、別の形で割賦販売法の規律が及ぶ場面です。
割賦販売に当たると、次のような規律がかかります。分割の条件(現金の価格、分割の価格、支払の期間と回数など)を相手方に示すこと(割賦販売法3条)、契約を締結したときに契約の内容を明らかにする書面を交付すること(同法4条)。そして、契約書の条項の書き方に直接影響するのが、5条と6条です。
割賦販売に当たるときに示す事項・書面に書く事項(主なもの)
| 場面 | 主な事項 |
|---|---|
| 契約の前に示す(3条) | 契約と同時に全額を払う場合の価格(現金提供価格)、分割で払う場合の価格(割賦提供価格)、何か月で何回払うか、分割の手数料の料率 |
| 契約の後に交付する書面(4条) | 割賦提供価格、1回ごとの賦払金の額とその支払時期・方法、役務をいつ提供するか、解除についての定め |
「一括なら○円、分割なら○円」と価格を分けるなら、どちらの価格も条件として示す必要があります。分割の手数料を取らない場合でも、現金提供価格と割賦提供価格が同じであることが分かるようにしておきます。
自社の分割が割賦販売に当たるときの、契約書への影響
- 解除・一括請求の制限(5条)賦払金が遅れたときに解除や残額の一括請求をするには、まず20日以上の相当な期間を区切って書面で支払を求め、その期間が過ぎても支払がないことが必要。この手順を省く特約は無効
- 遅延損害金の上限(6条2項)賦払金の支払が遅れた場合(解除されていない場合)、残りの分割の価格に法定利率による遅延損害金を加えた額を超えて請求できない
- 解除されたときの上限(6条1項)解除の場面にも上限がある。講座が始まる前の解除では契約の締結・履行に通常かかる費用、始まった後の解除では既に受けた役務の対価相当額と分割による価格の上乗せ分の合計が基準で、請求できるのはこれに法定利率の遅延損害金を加えた額まで
割賦販売に当たれば、消費者契約一般の年14.6%(消費者契約法9条1項2号)より低い法定利率が上限になります。
この規律を前提にすると、講座の契約書でよく見かける二つの定めは、自社の分割が割賦販売に当たる場合には、そのままでは働きません。一つは、「分割金を一度でも滞納すれば、催告なしに期限の利益を失い、残額をまとめて支払う」という定めです。5条があるため、20日以上の期間を区切った書面での催告を経ない限り残額の一括請求はできず、催告を省く特約は効力を持ちません。もう一つは、遅延損害金の率を年14.6%とする定めです。14.6%は消費者契約一般での上限にすぎず、割賦販売の賦払金が遅れた場合は、6条2項によって法定利率による遅延損害金までしか求められません。
インスタ・アフィリエイトの起業支援講座の修正契約書では、直接の分割を6回以内とし、分割手数料を取らないこととしたうえで、支払が遅れた場合には、20日以上の期間を示した書面で催告する手続を、受講者のために契約上用意しました。インスタ運用講座の依頼者に送った追加の質問への回答では、自社の分割を2回から6回の範囲とし、書面による催告は3回以上の分割の場合に限って行い、2回払いの場合はメールなどの連絡で足りる、という書き分けを示しています。2回払いでは「3回以上」に届かず、割賦販売にならないためです。この回答では、一括払いの価格の表示は一つにそろえるよう求めました。販売ページ、申込みのフォーム、契約書で一括の価格がそれぞれ違って見えると、割賦販売の条件として示す「現金提供価格」がどれなのかが分からなくなり、分割の価格との比較もできなくなるからです。
3回以上と2回を分ける考え方は、事務の負担にも関わります。割賦販売に当たる分割では、条件の表示、契約の後の書面の交付、20日以上の書面による催告という手続が、受講者一人ひとりについて必要になります。受講者の多くが2回払いで足りる価格帯の講座なら、分割の回数の選択肢を2回までにとどめるのも一つの判断です。逆に、3回以上の分割を用意するなら、その手続を運用の中に組み込める体制を先に整えておきます。分割の選択肢を増やすことは、受講者の申込みを後押しする一方で、事業者の側に法律上の手続を増やすことでもあります。
条文例受講契約書(自社の分割払いと支払の遅延)
- 受講者は、当社が認める場合、受講料を6回以内の分割により支払うことができます。分割による支払に手数料はかかりません。
- 受講者が分割金の支払を遅滞したときは、当社は、20日を下回らない相当の期間を示し、書面でその支払を催告します。受講者がその期間内に支払わないときに限り、当社は、本契約を解除し、又は支払期日の到来していない分割金の全部の支払を請求することができます。
- 分割金の支払の遅滞による遅延損害金は、法定利率によります。
第2項・第3項は、自社の分割が割賦販売法の割賦販売に当たる場合の規律(5条・6条2項)に合わせた書き方です。
ご質問と回答|分割払いについてのご質問
PayPalやカードの分割は、自社の分割と同じに扱えばよいですか。
扱いが違います。PayPalなどを通じたカードの分割・リボは、受講者とカード会社の間の包括信用購入あっせんで、事業者が自ら分割で受け取る割賦販売ではありません。事業者が受け取るのは一括の代金であり、受講者はカード会社に分割で支払います。そのかわり、受講者は事業者に対して生じている事由をカード会社に対抗できます(割賦販売法30条の4)。
信販を使う受講者が途中でやめた場合、返金はどうなりますか。
受講契約の精算の定めに加えて、信販会社の規約と割賦販売法の規律が働きます。投資学習スクールの契約書では、信販を利用する場合はクーリング・オフ・中途解約・精算について割賦販売法と信販会社の規約が優先することを、申込書面と契約書の両方に書いています(返金・中途解約の精算)。
ヒヤリングの問い|分割払いの条を作る前に
分割は、自社で受け取りますか、カード会社・信販会社・決済サービスを通しますか。
誰が与信するかで、割賦販売・包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせんのどれになるかが決まります。
自社で分割する場合、期間と回数はどうなりますか(2か月以上・3回以上か)。
割賦販売に当たるかどうかが決まり、書面の交付や催告の手続が必要になるかが分かります。
遅延損害金を何%にし、どんなときに残額の一括払いを求める定めにしていますか。
割賦販売に当たる場合、法定利率の上限と20日以上の書面による催告に合わせる必要があります。
支払方法によって価格に差を付けていますか。
カード会社の規約と有利誤認の表示の両方に照らして点検します。
起きがちなこと
よくあるご質問
投資やマネーの講座も、割賦販売法の対象になりますか?
事業者が自分で受講料を分けて受け取り、その期間が2か月以上、回数が3回以上なら、「技芸又は知識の教授」(割賦販売法施行令別表第一の三第11号)の割賦販売として扱われる可能性があります。条件の表示、書面の交付、20日以上の書面による催告、遅延損害金の上限などの規律がかかります。
PayPalやカードの分割は、自社の分割に当たりますか?
当たりません。カードの分割・リボは、受講者とカード会社の間の包括信用購入あっせんです。事業者は代金を一括で受け取りますが、受講者は事業者に対して生じている事由をカード会社に対抗できます(割賦販売法30条の4)。支払総額が4万円(リボルビング払いは3万8千円)に満たないものは対象外です。
信販を使うと、返金はどうなりますか?
受講契約と信販会社との立替払いの契約は別の契約ですが、受講者は受講契約の側で生じた事由(役務が提供されない、契約が解除されたなど)をもって信販会社からの請求に対抗できます(割賦販売法35条の3の19)。精算は受講契約の定めに加え、信販会社の規約と割賦販売法の規律に従います。
自社の分割払いの遅延損害金を、年14.6%と定めてよいですか?
その分割が割賦販売に当たるなら、賦払金の遅れについての請求は、残額に法定利率の遅延損害金を加えた額が限度です(割賦販売法6条2項)。3回未満の分割のように割賦販売の外にある場合でも、年14.6%を上回る部分は消費者契約法9条1項2号で無効になります。
2回払いでも、書面による催告が必要ですか?
2回払いは「3回以上」の要件を満たさないため、割賦販売法の割賦販売には当たらず、5条の書面による催告の規律もかかりません。事務所の回答例では、書面による催告は3回以上の分割の場合に限り、2回払いはメールなどの連絡で足りるという書き分けを示しています。
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