このページの要点
- 講座で仕組みや使い方を教えるだけなら、暗号資産交換業の登録は要らない。売買の取次ぎ・代理、金銭や暗号資産の管理に進むと登録の問題になる。
- 取引を勧めるときは、断定的な判断の提供が消費者契約法で取消しの原因になる。2026年の改正で、暗号資産の助言・運用も金商法の対象に入る。
- 運用代行は委任・準委任であり、免責を書いても報告や引渡しなどの義務は消えない。預かるものの範囲を、契約書で段階的に決める。
- NFTは購入しても著作権は移らない。許諾の範囲と二次流通での引継ぎ、DeFiの取り返せなさへの責任の制限を、条文で決めておく。
結論:教えることと、取引を代わりに行うこと・預かること・運用することは別の行為です
暗号資産・NFT・DeFiの仕組みや使い方、リスクを講座で教えること自体に、登録は要りません。法律の線が引かれるのは、受講者の売買を取り次ぐ・代理する、受講者の金銭や暗号資産を預かる、受講者に代わって運用する、という行為に踏み出したときです。さらに2026年の法改正で、暗号資産の規制は資金決済法から金融商品取引法へ移ることになり、助言と運用の線も引き直されます。契約書と規約は、教える・勧める・預かって動かすのどこまでを事業に含めるかを先に決めてから書きます。
暗号資産、NFT、DeFiの講座が難しいのは、扱う対象がどの法律の箱に入るかが名前では決まらないこと、講座の周りに取引所の紹介や運用代行といった事業が自然にくっついてくること、法律そのものが動いている最中であることの三つのためです。この記事は、どの行為がどの法律の話になるのかを整理し、相場の見通しには触れず、書類の作り方に絞ります。
最初に、言葉を二つだけ説明します。「暗号資産交換業」とは、暗号資産の売買や他の暗号資産との交換、その媒介・取次ぎ・代理、そのために利用者の金銭を管理すること、他人のために暗号資産を管理することのいずれかを、業として行うことをいいます(資金決済に関する法律2条15項)。以下「資金決済法」と書きます。この業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行えません(同法63条の2)。もう一つの「金商法」は金融商品取引法の略で、株式や投資信託などの金融商品の取引や、投資の助言・運用を規制する法律です。
講座の周りで起きる行為を、四つの層に分ける
- ① 教える仕組み、取引所やウォレットの使い方、リスク、用語を説明する。講座の中心で、それだけなら登録の対象となる行為ではない
- ② 勧める特定の銘柄・取引所・プロトコルを挙げる、買い時を示す。現行法では民事上の責任(取消し、損害賠償)が中心。改正で助言業の対象に入る
- ③ 代わりに動く・預かる受講者の注文を代わりに出す、ログイン情報や秘密鍵を預かる、資金を受け取る。暗号資産交換業の定義に近づく
- ④ 運用する受講者に代わって継続的に運用する。委任契約としての責任が重く、改正で投資運用業の対象に入る
上の層に行くほど、契約書で免責を書いても守れなくなります。どの層まで事業に含めるかを決めることが、書類づくりの出発点です。
投資助言との一般的な線引きは投資スクールの契約書と投資助言・代理業の線引きで、講座中の発言の決めごとは投資・マネー講座の発言ガイドラインで扱っているので、この記事は暗号資産に固有の部分に集中します。
暗号資産・NFT・DeFiは、法律の上では何に当たりますか
結論から言うと、名前では決まらず、仕組みの要素で決まります。資金決済法の「暗号資産」は、次の二つのいずれかをいいます(同法2条14項)。一つは、物品を買ったりサービスを受けたりするときの代価の弁済のために、不特定の者に対して使うことができ、かつ、不特定の者を相手に購入と売却ができる財産的価値で、電子的に移転できるものです。もう一つは、不特定の者を相手に、前者と相互に交換できる財産的価値で、電子的に移転できるものです。日本円や外貨、通貨建ての資産、電子決済手段(いわゆるステーブルコインの一部)は除かれます。
この定義には、除外がもう一つあります。金融商品取引法側で規制される権利を表示するものは、暗号資産から除かれます(同項ただし書)。たとえば、収益の分配を受ける権利を表すトークンのように、金商法の問題として扱われるものは、暗号資産の規制ではなく金商法の問題になります。講座で「トークンを買えば収益を分配する」といった仕組みを紹介するときは、暗号資産の箱に入るのか、金商法の箱に入るのかを、まず切り分ける必要があります。
暗号資産の定義に当たるかを見る視点
- 当たる方向代価の弁済に不特定の者へ使え、不特定の者を相手に売買できるトークン定義の1号の要素を満たす方向です。取引所に上場して広く売買されるものがこの典型です。
- 当たり得る一点ごとに識別される作品のデータで、特定のマーケットでのみ売買されるNFTという名前だけでは決まりません。代価の弁済に広く使えるか、他の暗号資産と交換できる形かで、実態が判断されます。
- 当たらない方向ゲーム内や会員制サービス内だけで使えるポイント不特定の者に対する代価の弁済手段でも売買の対象でもなければ、暗号資産の定義から外れる方向です。
判断の材料は、そのトークンの発行方法、流通の実態、交換の可否です。講座の販売ページでは、法的な分類を言い切らないことが無難です。
NFTは、一般に、ブロックチェーン(取引の記録を多数で共有し、書き換えにくくした仕組み)の上で、一点ごとに識別されるデータとして発行されるトークンをいいます。DeFiは、銀行や取引所のような仲介者を置かず、スマートコントラクト(あらかじめ書かれた条件に従ってブロックチェーン上で自動実行されるプログラム)によって、貸し借りや交換を行う仕組みの総称です。どちらも法律上の定義がある用語ではなく、講座の中で教える内容を指す呼び名です。ですから契約書には、何をどこまで教え、何を行わないのかを、操作の説明、画面の見方、リスクの説明といった動作の単位で書きます。
条文の番号にも注意があります。暗号資産交換業の定義を2条7項としている解説が見られますが、改正で項が繰り下がり、現在の条文では2条15項です。引用する番号は、現行の条文で確かめます。
暗号資産交換業の登録は、講座の運営者に必要ですか
講座の運営者が登録を要する場面は、限られています。登録なしで暗号資産交換業を行うことは、刑事罰の対象です。この罰則は2026年の改正で引き上げられ、引上げの部分は同年8月12日から施行されているため、現在の上限は金融庁の公表資料で確認します。判断は、業として行うか、他人のために行うか、という二点が中心です。
講座の周りで起きる場面と、登録が問題になる方向
- 当たらない方向取引所の口座の作り方や画面の見方を、一般的に説明する売買や管理に関与しない、教える層にとどまる行為です。
- 当たらない方向受講料を暗号資産で受け取る(自社の講座の代価として受領するだけ)自己の役務の代価として受け取るだけで、暗号資産の売買を業としているとは言いにくい方向です。ただし、換算と返金の定めが別途必要です。
- 当たり得る取引所の紹介リンクを示し、口座開設に応じて報酬を受ける紹介の仕方や取引成立への関与によって、媒介に近づくことがあります。交換業者の委託を受けて売買の媒介をする場合は、仲介業の登録の問題になり得ます(2条18項、63条の22の2)。
- 当たり得る日本で登録のない海外の取引所を、受講者に使うよう勧める登録のない外国の交換業者は、国内の者に勧誘してはならないとされています(63条の22)。講座がその勧誘に加わる形にならないか、見る必要があります。
- 当たる方向受講者の注文を、受講者に代わって取引所で出す他人のためにする売買の取次ぎ・代理に近づきます。業として継続して行えば、定義の2号に当たり得ます。
- 当たる方向受講者から資金や暗号資産を預かり、取引所で購入して引き渡す売買の取次ぎに加え、利用者の金銭の管理・他人のための暗号資産の管理にも当たり得ます(2条15項2号〜4号)。
- 当たる方向受講者の秘密鍵やシードフレーズを預かって管理する秘密鍵(暗号資産を動かすための鍵情報)を預かって、暗号資産を動かせる状態で管理することは、他人のための暗号資産の管理に近づきます。
- 当たる方向自社で発行したトークンを、受講者に販売する暗号資産の売買を業として行うことになり得ます。トークンの性質によっては、金商法の問題にもなります。
業として行うかの判断は、反復継続性や対価の有無などの実態によります。契約書の宣言だけでは線は引けません。
契約書で最も効果があるのは、行わない行為を列挙しておくことです。「当社は、受講者に代わって暗号資産の売買の注文を出さず、受講者の金銭、暗号資産、秘密鍵、シードフレーズ及びこれらに類する情報を預からず、特定の取引所への口座開設を取り次がない」といった形です。ただし、書いただけでは足りず、実際の運営(サポート窓口のやり取り、コミュニティでの個別対応)が同じ線に沿っていなければ、条文は空文になります。サポートの範囲を操作方法の説明に限る考え方は、トレード添削・個別面談の契約書と共通です。
暗号資産払いの受講料:換算と返金を円で固定する
受講料を暗号資産で受け取る場合、価格が日々動くため、受け取った時点と返金する時点で価値が違います。次の例で考えます(数字は説明のための仮のものです)。
暗号資産払いの受講料を返金するときの比較(仮の数値)
| 場面 | 受講料は円建てで固定 | 受講料は暗号資産の数量で固定 |
|---|---|---|
| 申込み時 | 受講料220,000円。支払時のレート(1単位=550,000円)で0.4単位を受領 | 受講料0.4単位。申込み時の円換算は220,000円 |
| 返金時にレートが下がった(1単位=440,000円) | 円で220,000円を返す、又は0.5単位を返す。受講者が支払った額に見合う | 0.4単位を返すと176,000円相当。受講者は44,000円分の目減りを被る |
| 返金時にレートが上がった(1単位=660,000円) | 円で220,000円を返す、又は約0.333単位を返す | 0.4単位を返すと264,000円相当。事業者が44,000円分を余計に返す |
円建てで固定すれば、返金でも中途解約の精算でも、受講者に説明できる基準になります。
条文例受講契約書(暗号資産での支払いを認める場合)
- 受講料は、日本円で定めた額とします。受講者が暗号資産で支払う場合は、当社が指定する取引所又は事業者における、支払の確認時点の換算額を、支払われた日本円相当額とします。
- 暗号資産での支払いに伴うネットワーク手数料(送金時にブロックチェーンの運営に支払う手数料)その他の費用は、受講者の負担とします。
- 本契約に基づく返金は、前条で定めた日本円で定める受講料を基準として算定し、日本円で行います。受講者が暗号資産での返還を希望し、当社が承諾した場合は、返還時点の換算額が返金額に相当する数量を返還します。
- 当社は、暗号資産の価格の変動により、受講者に生じた利益又は損失について、受講料の増減、返金額の調整その他の請求を受けないものとします。
返金の算定を円建てにしておくことは、返金・中途解約の記事の考え方と同じです。基準の詳細は投資・副業スクールの返金と中途解約で扱います。
受講者に取引を勧めるとき、どこから責任が生じますか
暗号資産の売買を勧める場面では、現行法と改正後で、問題になる法律が変わります。結論を先に書くと、いまの条文では、暗号資産を対象とする助言や運用は、金商法の投資助言・代理業や投資運用業の登録の対象には入っていません。しかし、登録が要らないことと、責任が生じないことは別です。勧め方によっては、消費者契約法による契約の取消しや、損害賠償の問題が生じます。
消費者契約法4条1項2号は、物品、権利、役務その他の契約の目的となるものに関し、将来における価額その他の将来における変動が不確実な事項について、断定的判断を提供することで、消費者がその内容のとおりになると誤認して契約したときに、契約を取り消せると定めています。「この暗号資産は来年には何倍にもなります」と言い切って講座を売る、といった場面です。同項1号は、重要事項について事実と異なることを告げた場合の取消しです。また、講座を通信販売として広告する場合は、特定商取引法12条が、役務の内容などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利だと人に誤認させる表示を禁じています。
改正後は、状況が変わります。2026年7月23日に公布された金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律は、暗号資産取引に関する規制を資金決済法から金商法へ移し、暗号資産を投資対象とする投資運用行為や投資助言行為を、投資運用業・投資助言業の規制の対象にする内容です。国会提出時の金融庁の資料では、この部分は原則として公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日から施行するとされています。また、対価を受けて暗号資産の取引判断に関する意見を表示する場合には、対価を受ける旨を併せて表示させることも盛り込まれています。紹介報酬のあるアフィリエイト記事、取引所からの案件のSNS投稿などが、この表示義務を意識する対象になります。施行の時期と細目は、金融庁の公表資料で確認します。
暗号資産の講座での発言の区分(例)
緑:話してよい仕組みと一般論
- ブロックチェーンの仕組み、ウォレットの種類と違い
- 取引所の口座開設の流れ、本人確認、二段階認証の設定の意味
- 詐欺的な案件の典型的な手口と、見分けるときの確認点
黄:条件つき条件つきで話せる内容
- 過去の相場の動きの紹介(見通しではなく過去の事実として)
- 講師自身の保有や取引の経験(自己開示)。毎回の添え書きで『個別の勧誘ではない』旨を示す
- 複数のサービスの比較。特定の一つを選ぶ話にならないこと
赤:話さない話さない内容
- 特定の銘柄の購入や売却の時期、数量の指示
- 『何倍にもなる』『元本が減らない』など、結果が保証されたと受け取れる言い方
- 取引所の紹介リンクを示しながらの、口座開設や入金の個別の働きかけ
改正後は、助言や運用に当たる行為かどうかの線も変わります。緑と黄の範囲は、施行の時期にあわせて見直します。
販売ページの表現の確認は、「稼げる」の表示と消費者契約法の考え方をそのまま当てはめられます。入口で受講者に確認してもらう事項は投資スクールの確認書・重要事項確認書に整理しています。暗号資産に特有の事項として、価格が大きく動くこと、秘密鍵を失うと取り戻せないこと、送金先を誤ると戻せないことを、確認書に入れます。
暗号資産の運用代行やアカウントの運用代行は、どう組み立てますか
運用代行は、講座の上位サービスとして追加されやすい形態です。卒業生向けに、受講者の口座の運用を代わりに行う、あるいは、ポイントを貯めて暗号資産に交換できるアプリのアカウントを、事業者が稼働させる、といった形があります。実務で多い論点は、預かるものの範囲が明確でないことと、免責・解除・料金変更の条項が事業者に偏っていることです。
契約の性質は、法律行為でない事務の委託であれば準委任(民法656条)、法律行為の委託であれば委任(同法643条)です。受任者は、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法644条)、委任者の請求があるときはいつでも事務の処理状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告し(同法645条)、事務の処理にあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡します(同法646条1項)。つまり、運用代行は、契約書で「一切責任を負わない」と書いても、事務の処理に関するこれらの義務が消えるわけではありません。
預かるものの段階と、書類で決めること
| 段階 | 事業者がすること | 契約上の性質と書くこと | 法令上の注意 |
|---|---|---|---|
| A 操作の説明 | 受講者自身が操作する。事業者は画面共有で説明する | 講座の一部。事業者は操作しないと明記 | 登録の対象となる行為には近づかない |
| B ログイン情報を預かる | 受講者のアカウントにログインして、操作を代行する | 準委任。事務の範囲、報告の頻度、情報の保管と削除、第三者サービスの規約との関係を書く | 取引所やアプリの規約が、アカウントの共有や代行を禁じていることがある。凍結の責任の分担も書く |
| C 秘密鍵・シードフレーズを預かる | 暗号資産を動かせる状態で管理する | 原則として預からないと書く。預かる設計にするなら、事業の登録を先に検討する | 他人のための暗号資産の管理に近づく(資金決済法2条15項4号) |
| D 資金や暗号資産を受け取って運用する | 受講者の資産を受け取り、事業者の判断で売買する | 委任。受け取った物の引渡し(民法646条)と分別管理を書く | 管理に当たり得るほか、改正後は投資運用業の対象に入る |
| E 成果に応じた報酬 | 運用益の一定割合を報酬とする | 算定の基準日、損失時の扱い、元本を保証しないことを書く | 消費者契約法4条1項2号(断定的判断)の問題が出やすい |
講座の延長でCやDに進んでしまうのが、実務で最も危うい形です。
アカウントの運用代行の規約で、実務でよく見られる書き方を点検します。報酬の対象が暗号資産で払われるポイントの獲得であっても、その金額、種類、時期、換金できるかどうかを「保証しない」と書くだけでは、契約の中身を説明したことになりません。さらに、事業者の免責を「故意又は重大な過失がある場合を除き一切責任を負わない」と書き、別の条で「重大な過失がある場合に限り、過去6か月間の料金を上限とする」と書く例があります。消費者を相手にする場合、軽い過失による債務不履行を含めて責任の全部を免除する条項は、消費者契約法8条1項1号で無効です。賠償の上限を定めるのであれば、事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除くことを、上限を定める一文の中に書かなければ、同条3項により無効になります。
アカウントの運用代行を始める前後の流れ
- 規約の確認取引所・アプリの利用規約が、代行を許すかを確認する。許されない場合は設計を見直す
- 預かる情報の決定預かるのは何か(ID、パスワード、認証コード)。秘密鍵は預からない
- 同意の取得預かる情報の範囲と目的、保管と削除の方法を書面で確認する
- 運用と報告報告の頻度と方法を決め、請求があれば随時報告する
- 終了と削除終了時にログイン情報を削除し、削除の完了を通知する
預かる情報の扱いは、個人情報としてマネー講座の個人情報とプライバシーポリシーの考え方で整理します。
この種のサービスは、第三者のアプリの仕様に依存し、仕様や報酬の配布条件の変更、アカウントの凍結がいつでも起こり得ます。規約には、その場合の日割りの精算と通知の方法を書きます。「通知後の継続利用は同意とみなす」と書くだけでは、料金の引上げのような変更まで有効に決められないことがあります。
NFTとDeFiを教える講座:権利の帰属と、取り返しのつかなさをどう書くか
NFTを教える講座で、まず確かめるのは、NFTを買った人が何を得るのかです。NFTを買っても、作品の著作権が買った人に移るわけではありません。著作権者は、複製する権利(著作権法21条)、公衆送信する権利(同法23条)、作品を譲渡して公衆に提供する権利(同法26条の2)などを専有しています。買った人が作品を使える範囲は、著作権者の許諾が定める範囲です。許諾を得た者は、許諾に係る利用方法・条件の範囲内で利用でき(同法63条2項)、その利用権は、著作権者の承諾を得なければ譲渡できません(同条3項)。したがって、NFTが二次流通で別の人に渡るときに、作品の利用許諾がどう引き継がれるのかは、契約で決めておかないと、決まりません。
条文例NFT作品の販売規約(購入者への許諾の範囲)
- 本作品の著作権は、当社(又は制作者)に帰属します。NFTの購入によって、購入者に著作権は移転しません。
- 当社は、購入者に対し、本作品を、個人の私的な範囲で閲覧・表示し、購入者のSNSのプロフィール画像として使用する範囲で、非独占的に利用することを許諾します。商品の製造・販売、広告への使用その他の営利目的の利用は、許諾に含まれません。
- NFTが購入者から第三者に譲渡された場合、前項の許諾は、その第三者に引き継がれます。ただし、引き継がれた第三者も本規約に従うものとし、譲渡した購入者の許諾は終了します。
- 二次流通における売上の一部を当社又は制作者が受け取る定めがあっても、それは販売の場であるマーケットの仕様によるものであり、当社の責めに帰すべき事由がない限り、当社は、マーケットの仕様の変更や停止による影響について責任を負いません。
『引き継がれる』という定めは、著作権法63条3項の利用権の譲渡制限との関係で、契約で明示的に決めておく必要があります。
実務で見られる誤りは、契約書にNFTの権利の定めを置きながら、中身を「別途書面により協議のうえ定める」としている例です。権利の帰属、二次利用、収益の分配、二次流通のロイヤルティ(転売のたびに制作者へ一定割合が入る仕組み)のすべてを協議に委ねると、何も決めていないのと同じです。受講者が自分の作品をNFTにして売る場合は、第三者の権利を侵害していないこと、AI生成画像の権利の扱い、収益の分配の基準を事前に書きます。権利の整理のうち、講師や受講生との関係の部分は、投資スクールの受講生間トラブルと違約金・講師契約と重なります。
DeFiを教える講座には、NFTとは別の難しさがあります。仲介者がいないため、送金を誤ったり、悪意のあるスマートコントラクトに接続したりしたときに、取り返す相手がいません。エアドロップ(無償で配られるトークン)やステーキング(保有する暗号資産を預け入れて報酬を得る仕組み)を紹介する場面では、特定のプロトコルやトークンを挙げること自体が、勧める行為と受け取られやすくなります。講座は、操作の方法とリスクの説明にとどめ、特定のプロトコルへの参加を促さない設計にします。
条文例受講契約書(暗号資産・NFT・DeFiの取扱いに関する免責と責任の制限)
- 本講座は、暗号資産、NFT及び分散型金融の仕組みと操作方法に関する教育を目的とし、特定の暗号資産、トークン、プロトコル又は取引所への投資や参加を勧誘し、又は助言するものではありません。
- 受講者は、暗号資産の価格が大きく変動すること、秘密鍵やシードフレーズを失った場合に暗号資産を取り戻せないこと、誤った宛先への送信を取り消せないこと、スマートコントラクトに不具合があり得ることを理解し、取引及び操作を自己の責任と判断で行います。
- 当社が本契約に基づき受講者に対して負う損害賠償責任は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受講者が当社に支払った受講料の総額を上限とします。
- 前項の定めにかかわらず、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失により受講者に生じた損害については、当社は賠償の責任を負います。
第3項は、上限を定めるその一文の中で、故意又は重大な過失による場合を除いています(消費者契約法8条3項)。免責の全部を定める書き方は、同法8条1項で無効になり得ます。
講師や提携者との契約では、報酬を「粗利益の一定割合」と定める場合に、粗利益から引く費用へ暗号資産払いの換算差やネットワーク手数料を含めるのか、報酬を暗号資産と円のどちらで払い、換算の基準日をいつにするのかを書きます。コミュニティでの情報共有を伴う場合は、投資・副業の会員制オンラインサロンの会員規約の論点も確認します。
実務でよく見られる誤った書き方と、直し方
暗号資産・NFT・DeFiの講座や関連サービスの規約で、実務で多い誤りと直し方を並べます。いずれも、特定の事業者の書類を示すものではなく、一般に見られる書き方を整理した例です。
書き方の例(一般的な例) |よくある失敗と直し方
免責の二重構造
理由二つの条が矛盾し、消費者契約法8条3項の要件も満たさないためです。
運用の解除
理由解除事由が広い一方的な定めは、消費者契約法10条で争われ得るためです。
NFTの権利
理由協議に委ねると何も決めていないのと同じで、購入者が商品化した場面で範囲が争いになるためです。
ヒヤリングで確認すること
暗号資産の講座の書類を作るときは、次の事項を確認してから条文を書きます。確認の理由が書類の形を決めるので、理由とセットで押さえます。
ヒヤリングの問い|暗号資産・NFT・DeFiの講座
講座で扱う対象は、暗号資産、NFT、DeFi、ブロックチェーンゲームのどれですか。特定のトークンの購入を勧めることはありますか。
対象によって、暗号資産の定義や金商法の問題に当たるかが変わり、勧誘の有無が民事上の責任を決めるためです。
受講者に代わって、注文を出す、ログインする、資金を受け取る場面は、ありますか。
預かるもの・動かすものの段階(教える/代わりに動く/預かる/運用する)により、登録の要否と書類の設計が変わるためです。
秘密鍵、シードフレーズ、取引所のログイン情報を、受講者から聞くことはありますか。
預かる情報の範囲で、管理に近づくかと、個人情報としての扱いが決まるためです。原則は預からない設計にします。
取引所や口座開設の紹介リンクを、教材やSNSに載せ、紹介報酬を受けますか。
報酬の有無で、媒介や仲介業の問題と、改正後の対価を受ける旨の表示義務が関わるためです。
紹介する取引所は、日本の登録を受けた業者に限りますか。海外の取引所は使いますか。
登録のない外国の交換業者が国内の者に勧誘することは禁じられており、講座がその勧誘に加わらないようにするためです。
受講料は、暗号資産で受け取りますか。受け取る場合の換算の基準はありますか。
換算と返金を円建てで決めるために必要です。
自社でトークンやNFTを発行・販売しますか。販売するなら、収益の分配や買戻しを約束しますか。
自社発行のトークンの販売は、暗号資産の売買や金商法の問題に当たり得るため、先に設計を確認します。
自動売買ツールやシグナルの配信を扱いますか。
投資助言との線引きの問題が絡むためです。ツールの扱いはEA・自動売買ソフトの利用規約と使用許諾契約が参考になります。
講師、紹介者、制作者との報酬の計算方法と支払手段は、どう決めていますか。
粗利益の定義、換算の基準日、再委託、返金費用の分担を、契約書に書く必要があるためです。
よくあるご質問
暗号資産・NFT・DeFiの講座を開くのに、登録は必要ですか。
仕組みや操作方法を教えるだけであれば、暗号資産交換業の登録の対象となる行為ではありません。ただし、受講者の売買の取次ぎ・代理、受講者の金銭や暗号資産の管理、自社トークンの販売などを業として行う場合は、登録の問題になります(資金決済法2条15項、63条の2)。2026年の改正後は、助言や運用の面でも金商法上の規制が及びます。
取引所の紹介リンクを載せて、紹介料を受けてもよいですか。
紹介料を受けること自体が直ちに禁じられているわけではありません。ただし、取引成立への関与の仕方によっては媒介に近づき、交換業者の委託を受ける場合は仲介業の登録の問題になり得ます。対価を受けていることを受講者に伝え、紹介する取引所の登録の有無を確認する手順を設けます。改正後は、対価を受けて意見を表示する場合に、その旨の表示も求められる予定です。
『投資助言ではありません』と書けば、銘柄や買い時を話してもよいですか。
書いても線は引けません。現行法では、暗号資産のみを対象とする助言は金商法の投資助言・代理業の対象に入っていませんが、断定的な判断の提供は消費者契約法4条1項2号で契約の取消しの原因になります。改正後は、暗号資産を投資対象とする助言も投資助言業の対象になります。
受講料を暗号資産で受け取るとき、契約書で注意することは何ですか。
受講料を日本円で定め、暗号資産で支払うときの換算の基準時点、ネットワーク手数料の負担、返金の基準と方法(円で返すのか)を、条文で決めます。価格が動くため、返金のときに受領時と金額が食い違う問題が起きやすいためです。
NFTを買った人は、作品の著作権を持ちますか。
NFTの購入だけでは、著作権は移りません。購入者が作品を使える範囲は、著作権者の許諾の範囲で決まります。許諾の利用権は、著作権者の承諾がなければ譲渡できない(著作権法63条3項)ため、二次流通で別の人に渡るときの扱いは、規約で決めておく必要があります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の講座やサービスが投資助言・代理業、業務提供誘引販売取引などに当たるかは、勧誘の方法や講座の実態によって結論が変わります。本サイトは個別の投資判断や投資の助言を行うものではありません。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 金融庁