投資・マネー講座に必要な書類一式:売り方で変わる書類の地図

契約書、免責事項、プライバシーポリシー、特商法表記の4点があれば足りる、とは限りません。見るべきは書類の出来ではなく、書類の種類です。

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書類を1点ずつ点検しても、足りない書類は生まれません。投資・マネー講座で不足しやすいのは、書類の質ではなく、書類の種類です。

このページの要点

  • 書類の数は、講座の中身(金融商品などにどこまで踏み込むか)、売り方(個別面談があるか)、集める情報(相談の段階から家計の情報を聞くか)の三つで決まる。
  • 義務は合意・表示と交付・業規制・個人情報の層に分かれる。同意で処理できるのは契約書の層だけで、ほかの層は同意でも免責の文言でも消えない。
  • 作る順番は、扱わないテーマの確定、売り方の類型と書面・表示の確定、契約書・個人情報の書類・内部の規程。契約書は最後に作る。
  • 住所・電話番号は、広告では請求開示の形で省略できる場合があるが、電話勧誘販売の契約書面には載る。書類どうしの数字と、版・同意の記録も一致させる。

結論:書類の数は「講座の中身・売り方・集める情報」で決まり、契約書は最後に作る

結論

投資・マネー講座に必要な書類は、「契約書、免責事項、プライバシーポリシー、特商法に基づく表記」の4点で数えるものではなく、三つの軸で決まります。講座の中身(金融商品や保険、税の話にどこまで踏み込むか)、売り方(広告から決済まで完結するのか、個別面談を経るのか)、集める情報(相談の段階から収入や資産を聞くのか)です。契約書は、この三つが決まったあとに、最後に作ります。

契約書、免責事項、プライバシーポリシー、特商法に基づく表記の4点があれば足りる、という考え方は、書類の出来ではなく書類の種類の面で見直す必要があります。書類を1点ずつ点検しても、足りない書類は見つかりません。投資・マネー講座で不足しやすいのは、書類の出来ではなく、書類の種類です。義務の層の考え方と、書類を作る順番の理由は家計相談と隣接する業法で説明しているので、このページでは書類そのものの地図に絞ります。

このページは、投資・副業・マネーの講座で要る書類を、地図の形に並べます。個々の書類の中身は、それぞれのページで扱いますから、ここでは「どの書類が、誰に、いつ、何のために要るのか」と「どんな売り方で何が増えるのか」、そして「どの順番で作るのか」に絞ります。動画講座一般の必要書類は、姉妹サイトの「オンライン講座」で扱っています。このページは、そこに加わる投資・マネー講座に固有の層(業規制と、財産の情報を扱うことに伴う書類)が中心です。

書類を割り当てる四つの層

  1. 合意の層役務の内容、代金、解約、責任の範囲、教材の権利。契約書と規約で決め、受講者の同意で処理できる
  2. 表示・交付の層広告の表示、申込み画面の表示、法定の書面。売り方の類型に応じて法律が求めるもの。同意があっても省けない
  3. 業規制の層金融商品取引法などが、登録のない者に禁じていること。同意も免責の文言も働かない。契約書ではなく、業務の設計で守る
  4. 個人情報の層取得した情報の利用目的の公表、要配慮個人情報の同意、外国への提供、安全管理。契約の有無に関係なく、情報を取った時点から生じる

上の三つは、家計相談と隣接する業法で説明している義務の三層です。このページでは、マネー講座が相談の段階から財産の情報を聞くことを踏まえ、個人情報の層を四つ目として並べます。

書類の地図:契約の前、契約のとき、提供中と終了後

必要になる書類は、契約より前、契約のとき、提供中と終了後の三つの段階に並べると見通せます。次の三つの表は、投資・マネー講座に当てはめて、その並べ方を示したものです。「層」の列は、その書類がどの種類の義務に応えるものかを示します。

契約より前の段階(広告・無料相談・申込み前)

書類・運用見せる相手と時点層主な根拠詳しく
業務範囲規程社内。講座を始める前に業規制金商法2条8項11号、28条3項、29条家計相談と隣接する業法、投資助言との線引き
面談スクリプトと禁止表現の一覧社内。個別相談の前に表示・交付(勧誘時の告知)、業規制特商法16条、消契法4条1項2号発言ガイドライン
面談記録の様式社内。面談のたびに立証のための記録(条文はなく、立証の手段)添削・個別面談の範囲
特商法に基づく表記(広告用)広告や販売ページを見る全員。申込みの前に表示・交付特商法11条、施行規則23条・24条決済代行の審査と講座の書類
公表用のプライバシーポリシー相談者を含め、情報を渡す全員。情報を取る前に個人情報個人情報保護法21条、32条マネー講座の個人情報
無料相談の同意事項無料相談を申し込む人。相談の前に個人情報個人情報保護法20条2項(要配慮個人情報の取得)マネー講座の個人情報
広告表示と体験談の運用ルール社内。広告を出す前に表示・交付特商法12条、景品表示法5条・7条2項「稼げる」の表示

契約のとき(申込み・決済・契約成立)

書類・運用見せる相手と時点層主な根拠詳しく
申込み前の確認書・確認メッセージ申込みをする人。申込みの前、入金案内の前に合意、立証特商法12条の6の事項にそろえる、消契法4条確認書・申込み前確認メッセージ
最終確認画面の表示ウェブで申込む人。申込みの操作を行う画面に表示・交付特商法12条の6、15条の4決済代行の審査と講座の書類
申込書面と契約書面(法定書面)電話勧誘販売に当たる売り方で申込み・契約した人。申込みの後、契約のときに表示・交付特商法18条、19条、24条、施行規則45条〜47条確認書・申込み前確認メッセージ
承諾等の通知代金を先に受け取る通信販売で、申込みを受け入金した人。遅滞なく表示・交付特商法13条このページの「売り方で増える書類」
受講契約書契約する一人ひとり。契約のときに合意民法(準委任)、消契法8条・9条・10条投資助言との線引き、返金・中途解約の精算
利用規約受講者全員。申込みの前に同意合意民法548条の2、548条の4教材・受講生どうし・講師の書類
独立した確認書(投資助言・保険募集・税務相談でないことの確認)申込む人。申込みの前に署名合意、業規制の線引きの証跡金商法2条8項11号など確認書・申込み前確認メッセージ
個人情報の個別同意(要配慮、外国への提供、AI入力、録画)契約する人。取得・提供の前に個人情報個人情報保護法20条2項、27条、28条マネー講座の個人情報
契約者向けのプライバシーポリシー契約者。契約のときに個人情報個人情報保護法23条、25条、32条以下マネー講座の個人情報

提供中と終了後

書類・運用使う相手と時点層主な根拠詳しく
発言ガイドライン講師・スタッフ。毎回の講座の前に業規制を守る運用金商法2条8項11号など発言ガイドライン
コミュニティの規約受講生、修了者合意民法548条の2、548条の4教材・受講生どうし・講師の書類
講師との業務委託契約外部の講師合意契約教材・受講生どうし・講師の書類
保証制度・案件紹介制度の規程制度の参加者合意契約案件紹介・保証の条文
返金・解約の運用規程と算定根拠の資料社内。解約の申出のたびに合意、立証消契法9条1項1号、9条2項返金・中途解約の精算
苦情・返金判断の記録の様式社内立証のための記録(条文はなく、立証の手段)(個別のページはありません)
個人情報の内部規程と漏えい時の対応手順社内個人情報個人情報保護法23条、25条、26条マネー講座の個人情報

公表用のポリシーだけを作り、その実体になる内部の規程がない状態は、守っていない内容を自ら公表していることになります。

書類を一つにまとめられないのは、書類が見られる相手と時点が違うからです。その理由は、次の三つに整理できます。一つ目は、利用規約に個人情報の扱いを書いても、プライバシーポリシーの代わりにならないことです。規約を読むのは申込みをする人ですが、個人情報を渡すのは相談だけの人も含みます。法律は、情報を取得した人すべてに利用目的の通知や公表を求めています(個人情報保護法21条1項)。二つ目は、利用規約の途中に料金や解約条件を埋め込んでも、特商法に基づく表記の代わりにならないことです。申込みの撤回・解除に関する事項は、見やすい箇所に明瞭に判読できるよう表示する必要があり(施行規則24条3号)、長い規約の奥に書いては、その要件を満たしにくくなります。三つ目は、申込みフォームの「利用規約に同意する」のチェックが、法定書面の交付の代わりにならないことです。電話勧誘販売に当たる売り方では、申込みの内容や契約の内容を記載した書面を交付する義務があります(特商法18条、19条)。規約へのチェックは、規約を契約の内容にする合意の証拠にはなりますが(民法548条の2第1項)、この書面の交付にはなりません。

ご質問と回答|書類の関係で迷いやすいこと

利用規約に「クーリング・オフはできません」「返金しません」と書いて同意をもらえば、法定書面はなくてもよいですか。

法定書面の交付義務がかかる売り方では、規約に書いても書面の代わりにはなりません。規約に書いた内容も、特商法の規定に反して申込者に不利な特約は無効です(同法24条8項)。通信販売なら法定書面の交付義務はありませんが、返金の条件は表記と契約書で数字までそろえて示す必要があります。

利用規約の奥に返金の条件を書いておけば、受講契約書には書かなくてもよいですか。

お勧めしません。規約の条項のうち、相手方の権利を制限し義務を加重するもので、取引の実情と社会通念に照らして相手方の利益を一方的に害するものは、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。最も争いになる返金の条件は、契約書でその受講者が個別に同意した記録を残すほうが、有力な材料になります。

地図に載せない書類が一つあります。「免責事項」という独立の文書です。日本の法律に、免責事項という独立した文書の類型はなく、効力を持つのは、契約の内容になっている責任の制限の条項です。責任の制限は、受講契約書の本体の条項に統合し、賠償の範囲、上限、故意・重過失の除外を数字と文言で書きます。賠償責任の一部を免除する条項は、「事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と、その条項の中に明記しないと、無効になります(消費者契約法8条3項)。独立の文書が、扱う商品や海外の商品を自ら示す材料になりかねない点は、家計相談と隣接する業法で説明しています。

売り方で増える書類:導線ごとの組合せ

書類の数を大きく動かすのは、受講者がどこで勧誘を受け、どう申し込むかです。講座の中身が同じでも、ウェブで完結する売り方と、個別面談を経る売り方では、必要な書類が変わります。次の表は、売り方や講座の要素ごとに、増える書類と確認点を並べたものです。

売り方・講座の要素ごとに増える書類

売り方・講座の要素追加される書類・運用確認すること詳しく
販売ページから決済まで完結する(通信販売)広告用の特商法に基づく表記、最終確認画面の表示、利用規約、受講契約書または申込みの同意表示事項(特商法11条)と最終確認の事項(同法12条の6)。法定書面の交付義務はない。契約が成立する時点を決めて表示する決済代行の審査と講座の書類
個別相談(音声通話を伴うオンライン面談、電話)を経て申し込む勧誘に先立つ告知のスクリプト、申込書面と契約書面、確認書特商法2条3項の「電話をかけ」は、インターネット回線を使った通話(映像を伴う場合を含む)も含むとされる(消費者庁の電話勧誘販売Q&A)。クーリング・オフは書面の受領日から8日(同法24条1項)。その場で契約するなら申込書面は要らず、持ち帰って後日申し込む流れがあるなら要る(同法18条1項ただし書)確認書・申込み前確認メッセージ
申込みをメッセージで受ける申込み前の確認メッセージと運用手順、やり取りの保存最終確認で示す事項にそろえた内容を送り、同意の返信を得てから入金を案内する。記録は日付と表示名の入った形で残す確認書・申込み前確認メッセージ
代金を先に受け取る(前払い)承諾等の通知申込みと入金を受けたら遅滞なく、承諾するかどうかなどを書面(承諾を得た電磁的方法を含む)で通知する。ただし入金後遅滞なく役務を提供したときは要らない(特商法13条)このページ
分割払い、信販、カードの分割を使う分割の条件の表示と書面(自社の割賦販売の場合)、付属契約書、信販との関係を定める条誰が与信するか(割賦販売法2条1項1号、3条、4条)。信販を使う場合の精算の優先関係分割払い・信販と割賦販売法
個別添削、個別面談、質問の窓口を置くサポートの範囲の条、面談記録、発言ガイドライン取引の可否や銘柄を尋ねる質問を、範囲外として断れる根拠添削・個別面談の範囲
録画、アーカイブ配信、グループコンサルを行う録画・AI利用の同意、事例利用の同意、申込み前の注意録画されること、知られたくない事柄を話さないことの事前の告知マネー講座の個人情報
家計、保険、税の話題を含める業務範囲規程、独立した確認書業法ごとの範囲外の列挙。紹介の対価は受け取らない家計相談と隣接する業法
EA・分析ツール・データサービスを提供する利用許諾契約または利用規約、サポート範囲の限定売買ではなく利用許諾として組む。シグナルを持たない機能の定義EA・投資ツールの使用許諾と規約
案件紹介、初案件の保証、卒業生のマッチングを行う保証条項、紹介制度の規程、約束の有無の欄保証するのは支援の継続。業務提供誘引販売取引に当たるかの確認案件紹介・保証の条文、業務提供誘引販売
外部の講師・メンターを置く、修了者向けのコミュニティを開く講師との業務委託契約、コミュニティの規約契約書の線引きを講師に守らせる仕組み。終了後の提供物が役務か特典か教材・受講生どうし・講師の書類

個別相談の行を読むときは、勧誘の導線を最初に確かめます。通信販売の整備で足りるのか、電話勧誘販売の書面まで要るのかは、広告や販売ページの作りではなく、実際にどこで誰が勧誘したかで決まるからです。ヒヤリングでは、勧誘がどの導線で行われるか、勧誘の後に受講者が持ち帰って検討し後日申し込む流れがあるか、申込みをどの画面や方法で受けるかを、書類づくりの最初の問いにします。

作る順番:決めた事項が、どの書類のどの欄に入るか

書類は、①業務の範囲、②売り方の類型と書面・表示、③契約書・個人情報の書類・内部の規程、の順に確定させます。契約書は最後に作ります。

この順番には理由があります。業法の線は、契約書ではなく、講座の中の発言で越えるからです。契約書に「投資助言ではありません」と書いても、面談で個別の銘柄や配分比率に触れていれば、書類は線を引きません。先に業務の範囲を決めておけば、その内容が、契約書の「行わない行為」、申込書面の性質の欄、確認書の項目、面談のスクリプト、販売ページの表現に、同じ言葉で流れていきます。次の表は、先に決める事項と、それが反映される書類、決めないと起きることをまとめたものです。

先に決める事項と、反映される書類

先に決める事項反映される書類決めないと起きること
扱わないテーマ(個別の売買判断、保険の勧奨、個別の税の計算、海外の商品など)業務範囲規程、契約書の「行わない行為」、申込書面の性質の欄、確認書、面談スクリプト、販売ページの表現書類ごとに線が違い、講座の中の発言で線を越える
勧誘の導線(広告だけか、個別相談があるか、メッセージで申し込むか)表記、最終確認の表示、申込書面と契約書面、確認メッセージ必要な書面が足りないまま運用し、起算点となる書面が交付されていないため、クーリング・オフの8日の期間が進まない状態になる(特商法24条1項)
支払方法(一括、自社の分割、カード、信販)返金・精算の条、分割の条、表記の支払の欄、決済画面与信する者が決まらず、割賦販売法の手続や抗弁の接続に合わない条項になる
取得する情報(相談の段階の家計情報、保険証券、録画、AIへの入力)公表用のプライバシーポリシー、無料相談の同意事項、個別同意、委託先と外国提供の記載契約に至らなかった相談者の情報が、書類のどこにも載らない
講師・スタッフの体制(運営者のみか、外部講師か)発言ガイドライン、講師契約、内部の規程契約書の線引きを守らせる仕組みがない
価格・期間・返金の数字表記、契約書、規約、申込書面、確認書、販売ページ、決済画面書類どうしで数字が食い違う

販売を始める前に処理しておきたい事項を優先の順に並べると、投資・マネー講座では次のようになります。

  1. 海外の保険・金融商品を扱う条項を、扱わないと決める(扱うなら、業法上の位置づけを先に確認する)
  2. 電話勧誘販売に当たる売り方なら、申込書面と契約書面を整える
  3. 業務範囲規程と面談スクリプトを、契約書より先に作る
  4. 住所・電話番号の開示の方針を決める(次の節)
  5. プライバシーポリシーに、相談者の情報を第三者に提供する条項があれば、その方針を確定する(保険の取次ぎと見られる材料になり得る)
  6. 返金の条項を、「返金しない」から、数字で書いた精算の基準に組み替える
  7. 分割払いの残額の支払義務を定める条項があれば、カードの分割では実効性がないため見直す
  8. 決済画面を、最終確認で示す事項と一つずつ突き合わせる
  9. 使うAIサービスを具体的に決め、入力した情報の取扱いを確認する

住所・電話番号を公開したくないとき:三つの書類で答えが違う

個人で講座を運営する場合、自宅の住所と個人の携帯電話の番号を公開したくない、という事情はよくあります。この事情への答えは、書類によって違います。通信販売の広告、電話勧誘販売の法定書面、プライバシーポリシーの三つを分けて考えます。

住所・電話番号を省略できるか

書類・場面省略できるか根拠注意点
通信販売の広告(特商法に基づく表記)できる場合がある特商法11条ただし書、施行規則25条2項広告に、請求があれば書面又は電磁的記録を遅滞なく提供する旨を表示し、請求に実際に応じる措置を講じる。金銭に関する事項(価格や追加の費用)はすべて表示している必要がある。支払時期など、省略できない事項もある
電話勧誘販売の申込書面・契約書面できない特商法18条1項6号、19条、施行規則45条1号事業者の氏名(名称)・住所・電話番号(法人は代表者の氏名)が記載事項として定められており、請求があれば開示するといった省略の規定は置かれていない
プライバシーポリシー(保有個人データに関する事項)常時公開までは必須でない個人情報保護法32条1項氏名又は名称及び住所などを、本人の知り得る状態に置く。本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合も含まれる

広告での省略には、消費者庁の通信販売広告Q&Aが示す条件があります。「遅滞なく」とは、販売方法などの取引の実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいいます。つまり、請求してきた見込客には、申込みの前に開示することになります。個別相談を経て、電話勧誘販売に当たる形で契約する受講者には、書面に住所と電話番号が載ります。結論として、住所と電話番号を広く一般に公開することは避けられても、請求した人や、個別相談を経て契約する受講者に対して、完全に伏せることはできません。

自宅の住所や個人の電話番号を出したくない場合の現実的な選択肢は、事業用の拠点や電話番号を用意することです。バーチャルオフィスなどの住所・電話番号を表示する場合について、消費者庁の通信販売広告Q&A(Q18)は、事業者の現住所と本人名義の電話番号を、バーチャルオフィスの運営事業者が把握していること、その住所・電話番号が事業者との連絡先として機能することについて合意があること、確実に連絡が取れる状態であることを条件に挙げています。私書箱は、営業上の活動の拠点とはいえないため、「住所」の表示になりません(同Q19)。住所だけを借りて、消費者からの連絡や書面が届かない状態では、表示の義務を果たしたことにならない場合があります。

条文例特商法に基づく表記(所在地・電話番号の欄の例)

  1. 所在地・電話番号:ご請求をいただければ、遅滞なく(原則として、請求を受けた日の翌営業日までに)、電子メール又は書面により無償で開示します。
  2. ご請求は、下記のメールアドレス宛て、又は当社のメッセージ窓口へお願いします。お申込みの前でも後でも、理由を問わずご請求いただけます。
  3. ただし、受講契約書には、当社の氏名、住所及び電話番号を記載します。

実際に請求に応じる担当者、期限、開示の記録の方法も、運用手順として決めておきます。

ヒヤリングの問い|住所・電話番号の方針を決める前に

  1. 自宅の住所と個人の携帯電話を出したくないのは、販売ページ上だけですか。契約した受講者に渡る書面にも載せたくないのですか。

    広告では省略できても、電話勧誘販売の書面には載るため、希望の範囲によって選択肢が変わります。

  2. 勧誘は、広告だけで完結しますか。オンライン面談や電話の個別相談を経て契約する受講者はいますか。

    個別相談を経るなら、電話勧誘販売の書面に住所と電話番号が載ります。

  3. 請求に応じて開示するとき、誰が、どの窓口で、どれくらいの時間で対応できますか。

    遅滞なく提供できる措置を実際に講じていることが、広告で省略するための前提です。

  4. 事業用の拠点や電話番号を用意する予定はありますか。借りる場合、運営事業者は事業者本人の現住所と本人名義の電話番号を把握していますか。

    バーチャルオフィスなどの住所・電話番号を表示するための条件に当たります。

書類どうしの食い違いを防ぐ:数字の突き合わせ、優先順位、版と同意の記録

書類をそろえたあとの最大の危険は、書類どうしの食い違いです。受講料、返金の条件、サポートの範囲が、表記と契約書と販売ページで違っていれば、どれが受講者との約束なのかで争いになります。受講料、返金の条件、個人情報の取扱い、サポートの範囲と時間が、各書類で一致していることを、一覧にして確かめます。次の表は、突き合わせる項目と、各書類に書く内容の例です。

突き合わせる項目

項目表記契約書・規約申込書面・確認書販売ページ・決済画面
受講料と支払の方法・回数コース名ごとの実際に請求する金額(消費者向けの価格は消費税を含む総額。消費税法63条。免税事業者を除く)、支払の方法と時期対価の表、分割の条件。表記と同じ額契約書面の対価の欄と同じ額表記と同じ額。比較用の価格は載せない
提供期間・回数・サポートの範囲と応答の目安提供時期は期間又は期限で書く定義と、範囲外とするもの役務の欄と同じ言い方販売ページの「無制限」「し放題」の意味を契約書と合わせる
返金・中途解約の精算申込みの撤回・解除に関する事項を、契約書と同じ基準で精算の算式。支払方法による違い返金の扱いの説明を受けた旨の確認最終確認の表示にも同じ文言
クーリング・オフの日数と宛先通信販売には制度がない旨と、独自の解約の条件電話勧誘販売の場合は8日と通知先赤枠の記載、説明を受けた旨の確認個別相談を経る導線と、経ない導線で書き分ける
事業者の名称・連絡先氏名(本名)と屋号の併記、住所・電話は請求開示か記載か当事者の表示は表記と同じ契約書面には住所・電話を記載表記へのリンクを常設
行わないこと(助言との線引き)広告表現と整合させる行わない行為の列挙、サポートの対象外性質の欄、独立の確認書利益を約束する表現をしない

利用規約と受講契約書が食い違ったときは、個別の約束である受講契約書を優先すると定め、返金、免責、禁止事項、知的財産権などの重要事項は、利用規約から受講契約書の該当条文を参照する形にして、二つの書類で条件がずれないようにします。ただし、契約書が優先するという定めがあっても、広告の表示が実際と違えば、特商法12条の誇大広告の禁止や景品表示法の問題は別に残ります(「稼げる」の表示)。

数字の一致と並んで大切なのが、版と同意の記録です。受講者がどの書類のどの版に、いつ同意したのかを後から示せなければ、規約を変更したときにも、紛争になったときにも、どの条件が契約の内容だったのかを示せません。運営チェックリストには、同意と契約の記録(同意日時、対象書類の版など)を保存することを、導入時に確認する事項として挙げておきます。規約を変更する場面は、民法548条の4が手続を定めています。変更が相手方の一般の利益に適合する場合か、契約をした目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的な場合に限って、個別に合意をしなくても契約の内容を変更できます。変更するときは、効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容、効力発生時期をインターネットの利用などの適切な方法で周知します。合理性を理由にする変更は、効力発生時期が来るまでに周知をしなければ、効力を生じません(同条2項・3項)。

  • 書類の名称、版、施行日
  • 受講者ごとの、同意した日時と、同意した書類の版
  • 書類の変更の内容、変更の理由、変更前後の名称(名称を変えたときは、変えた経緯も)
  • 変更の周知の方法と日付、効力発生時期
  • 表記・契約書・規約・販売ページを突き合わせた日と、確認した担当者

書類の名称を変えるときも、経緯を残しておきます。たとえば、通信販売には契約内容を記載した書面の交付義務がなく、投資教育は特定継続的役務提供の政令指定役務にも含まれないことから、受講者に内容を確認してもらう書面の名称を「重要事項確認書」とする選択があります。名称を変えた事実、理由、変更前の名称で同意した受講者の有無は、書類の履歴として残します(名称を選んだ理由は確認書・申込み前確認メッセージで扱っています)。

運用の書類と、書類を見直すきっかけ

書類は、作った日の事業に合わせたものです。事業が変われば、書類も変わります。次の表は、投資・マネー講座で、書類を見直すきっかけになりやすい変化と、見直す書類、見直す点をまとめたものです。

書類を見直すきっかけ

事業の変化見直す書類見直す点
扱う商品・手法を増やす、講座の名称を変える(たとえば、ある取引の講座に別の取引を加える)契約書の「行わない行為」、確認書、申込書面の性質の欄、販売ページ、講座の名称号の書き方が特定の商品の名前に依存していないか。名称を変えた経緯の記録
価格を改定する、キャンペーン価格を設ける表記、契約書の対価の表、決済画面、販売ページ実売価格にそろえる。既に契約した受講者の価格は契約時のまま
分割払い、信販、カード決済を始める、やめる分割の条、返金の条、表記、申込書面与信する者が変わると、適用される法律が変わる
クラウド、AI、決済、動画配信などの外部のサービスを追加・変更するプライバシーポリシー、個別同意、委託先の記載外国にある第三者への提供には、本人の同意と情報提供が要る(個人情報保護法28条)
講師やスタッフを増やす発言ガイドライン、講師契約、内部の規程契約書の線引きを守らせる仕組み
修了者向けのコミュニティやサロンを始める規約、役務か特典かの位置づけ終了後の提供物の性質。禁止事項が及ぶ期間
保証制度や案件紹介の制度を始める保証の条、販売資料の表示、概要書面の要否の確認保証するのは支援の継続であること。表示と契約の一致
勧誘の導線を変える(個別相談を始める、メッセージでの申込みに変える)法定書面、確認メッセージ、スクリプト売り方の類型が変わり、必要な書面が変わる
法令や政令の改正表記、契約書、規約現行の条文と施行日を確認する。未施行の改正を現行として書かない

ヒヤリングの問い|書類一式を整える前に

  1. 講座の中で、個別の商品の名前、売買の時期、資産の配分に触れる場面はありますか。保険や税の話題に広がりますか。

    業務範囲規程に書くテーマと、扱わないテーマが決まります。

  2. 受講者は、どこで勧誘を受け、どの画面や方法で申し込みますか。個別相談から後日申し込む流れはありますか。

    通信販売の整備で足りるか、電話勧誘販売の書面まで要るかが決まります。

  3. 受講料の支払は、一括、自社の分割、カードの分割、信販のどれを使いますか。

    返金・分割の条と、表記の支払の欄が決まります。

  4. 無料相談の段階で、収入、資産、負債、保険の内容を聞きますか。録画やAIの利用はありますか。

    公表用のプライバシーポリシーと、個別同意の範囲が決まります。

  5. 講師は運営者だけですか。外部の講師やメンターはいますか。

    発言ガイドラインを守らせる仕組みと、講師契約の要否が決まります。

  6. 価格、期間、返金の条件は、すべての書類・画面で同じ数字になっていますか。

    突き合わせの対象と、版の管理の範囲が決まります。

よくあるご質問

契約書・免責事項・プライバシーポリシー・特商法表記の4点があれば足りますか?

足りないことが多いと考えます。不足しやすいのは書類の出来ではなく種類です。投資・マネー講座では、これに加えて、扱う範囲を定める業務範囲規程、面談のスクリプトと記録、売り方に応じた最終確認の表示や法定書面、個人情報の個別同意などが要ることがあります。講座の中身、売り方、集める情報の三つで、必要な書類が決まります。

利用規約に同意のチェックをもらえば、受講契約書は要りませんか?

通信販売だけで売るなら、契約の内容を記載した書面の交付義務はありません。ただし、電話勧誘販売に当たる売り方では、申込みの内容や契約の内容を記載した書面の交付義務があり、規約へのチェックは代わりになりません(特商法18条、19条)。規約に書いた「クーリング・オフはできません」も、申込者に不利な特約として無効です(同法24条8項)。

「免責事項」という独立した文書は、役に立ちますか?

責任を制限する効力は、契約の内容になっている条項にだけ生じます。独立の文書は、責任の上限も免責される場面も定めていなければ、効力を持たず、扱う商品名や海外商品の取扱いを自ら述べる材料にもなり得ます。責任の制限は契約書本体の条項に統合し、一部免除の条項には、その一文の中に「事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と明記します(消費者契約法8条3項)。

住所と電話番号を公開したくない場合、どうなりますか?

通信販売の広告では、請求があれば遅滞なく開示すると表示し、実際に応じる措置を講じれば、広告での表示を省略できる場合があります(特商法11条ただし書、施行規則25条2項)。一方、電話勧誘販売の申込書面・契約書面には住所と電話番号が記載事項として定められており、省略できません。一般公開は避けられても、完全に伏せることはできません。

書類は、何から作ればよいですか?

最初に、扱わないテーマを決めて業務範囲規程にまとめます。次に、勧誘の導線から売り方の類型を決め、表記、最終確認の表示、法定書面、同意の取り方を整えます。契約書、個人情報の書類、内部の規程は、その後です。業法の線は契約書ではなく講座の中の発言で越えるため、契約書は最後に作ります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の講座やサービスが投資助言・代理業、業務提供誘引販売取引などに当たるかは、勧誘の方法や講座の実態によって結論が変わります。本サイトは個別の投資判断や投資の助言を行うものではありません。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 金融庁

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