投資・副業スクールの講座内容の変更・停止・終了

「運営者の都合で変更・終了できる」の一行は、受講者が支払いを続けている途中で約束した何かが提供されなくなったとき、はじめて試されます。

トップページ › 投資・副業スクールの講座内容の変更・停止・終了
変更の理由、通知、代替、精算を決めずに「異議を述べず請求しない」と書いても、解除権の放棄の形になり、消費者を相手にしては無効となり得ます。

このページの要点

  • 「都合により変更・終了できる」と「責任を負わない」の組合せは、消費者契約法8条1項1号・8条の2・10条の評価を受ける。変更の理由を限り、通知・代替・精算を一組にして書く。
  • 取り扱う手法を加えるのか入れ替えるのかで、受講者の同意と解約の機会が変わる。講座名・契約書・確認書・表記の名称もそろえる。
  • ツールは利用期間、認証停止の事由、提供元の事情による停止、運営者による配布終了を分けて決める。提供完了の時点も定義する。
  • 規約の改定は民法548条の4の要件で足りるかを見る。見せ方を変えると、契約の性質の評価と返金の定めの説得力が動く。

結論:変更・停止・終了は、「理由」「通知」「代替」「精算」を一組にして書く

結論

投資・副業スクールの受講契約で「運営者の都合で講座の内容を変更し、提供を終了できる」「これに異議を述べず、返金等を請求しない」と書いても、そのままでは働きません。債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は消費者契約法8条1項1号で、債務不履行によって生じた消費者の解除権を放棄させる条項は同法8条の2で、それぞれ無効とされます。変更・中断・終了を場面に分け、理由の限定、事前の通知、代替の提供、未提供部分の精算を一組にして書き、損害賠償は別の条で扱う形にするのが基本です。

投資・副業・マネーのスクールは、講座を始めたあとに中身が動きやすい事業です。取り扱う手法を増やす、教材の動画を差し替える、講師が交代する、分析ツールの提供元が仕様を変える、運営者が体調を崩す、事業を畳む。どれも、契約書を作った時点では想定していなかった出来事に見えますが、起きるたびに「契約でどう決めてあったのか」が問われます。そして、この種の条項は、最初に作った契約書にたいてい一行だけ入っています。「運営者は、都合により、本講座の内容を変更し、又は提供を終了することができる」という一行です。

この一行が問題になるのは、運営者が使ったときではなく、受講者が支払いを続けている途中で、約束した何かが提供されなくなったときです。受講者から見れば、代金は払った、期間は残っている、しかし中身が変わった、という状態です。契約に「都合により」としか書いていなければ、変えてよい理由の限界も、変えたときの受講者の選択肢も、残りの期間の対価の扱いも、何も決まっていません。決まっていないことは、争いになれば、裁判所や消費生活センターの物差しで決まります。事業者が自分で書いておくほうが、結果を予測しやすく、運営の自由度も残せます。

このページでは、受講契約書や規約を整える際に押さえたい次の五つの場面を順に説明します。

  1. 運営者の都合による変更・終了の条項が、消費者を相手にしたときに効かなくなる理由と、書き直しの型
  2. 取り扱う手法や商品を変える・加えるときの、講座名、契約書、確認書のそろえ方
  3. 分析ツールや自動売買ソフトの提供終了、認証停止の扱い
  4. 講師の交代、運営者が一人のときの提供不能、外部サービスの終了
  5. 規約の改定で契約の性質が動くときの、既存の受講者への手続

返金額の算式そのもの、返金保証と中途解約の書き分けは投資・副業スクールの返金と中途解約で扱います。ここでは、「変更・停止・終了」という出来事が起きたとき、どの条項がどう働くか、という入口の整理に絞ります。講座の返金や規約の一般論は、姉妹サイトのオンライン講座の解説でも取り上げています。

変更・停止・終了の条を作る順番

  1. 出来事を分ける軽微な改善、重要な不利益変更、一時的な中断、恒久的な終了を別々の項にする
  2. 理由を限る法令対応、外部サービスの仕様変更、教材の改善など、客観的な理由に絞る
  3. 通知と選択肢理由・内容・実施日・影響を知らせ、同意しない人が無負担で解約できるようにする
  4. 精算と賠償未提供部分の精算は一つの条、損害賠償は別の条に分けて書く

出来事ごとに「誰の事情で起きたか」を問い、運営者の責めに帰すべき事情かどうかで精算と賠償を分けます。

「都合により変更・終了できる、責任を負わない」条項が効かない理由

コンサルティング・コミュニティ講座の契約書には、教材の売買ではなく、一定期間の指導・支援・コミュニティの提供が中心であるのに、題名は売買契約書のままという書式が見られます。そうした書式には、講座の変更と終了について、典型的には次のような趣旨の定めが置かれます(説明用に整理した例です)。

  • 運営者は、運営者の都合により、講座の内容を変更し、又は提供を終了することができる。
  • 終了の事前通知はあるが、変更の理由、変更後の内容の同等性、通知の期間、受講者の解除権、未提供部分の返金は書かれていない。
  • 変更・終了によって受講者に損害が生じても、運営者は一切の責任を負わない。

受講者側から点検しても、事業者側から点検しても、最初に挙がる問題は同じです。運営者が講座を停止・変更・終了できる裁量が広く、受講者の救済の定め(返金、代替講座、月割の返還)が一つもない、という点です。受講者の側の救済規定が皆無であれば信義誠実の原則に反するとの主張を招きかねないため、一定期間以上の提供停止があったときの残存期間分の月割返金や、事前通知義務、代替サービスの提供義務を足すのが穏当です。立場を変えても結論が同じになるのは、この条項が、契約の中心である「継続して提供される役務」を運営者の判断だけで失わせる仕組みだからです。

法律面では、三つの条文が重なります。

  • 消費者契約法8条1項1号は、事業者の債務不履行によって消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は事業者に責任の有無を決定する権限を付与する条項を無効とします。「一切の責任を負わない」はこれに当たります。債務の履行に際してされた事業者の不法行為による責任の全部を免除する条項は、同項3号の対象です。
  • 同法8条の2は、事業者の債務不履行によって生じた消費者の解除権を放棄させる条項、又は事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する条項を無効とします。「変更等に異議を述べず、これに起因する契約解除、損害賠償、返金等を請求しない」という同意の条項は、解除権の放棄の形をとっています。
  • 同法10条は、任意規定(民法など)の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とします。「都合による変更」を理由なしに認める定めは、この評価を受けます。

これらは、受講者が消費者契約法上の「消費者」に当たるときの話です。個人が副業のために申し込む場合に消費者か事業者かが問題になることは、「事業者として申し込む」条項と「代理店登録」名目の受講契約で整理しています。ここでは、受講者が消費者に当たり得る前提で条項を作ります。実務では、受講者が消費者に当たらないことを前提に、条項を緩く書いておく設計は勧めません。実態が違った場合に、条項がまとめて崩れるからです。

もう一点、見落としやすいのが、「責任を負わない」と「対価を受け取れる」は別の問題だという点です。運営者に帰責事由がなく、損害賠償の義務が生じない場合でも、提供できなかった部分の対価を保持できるとは限りません。民法536条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができると定めます。準委任として構成される講座では、委任が履行の中途で終了したときに、受任者が請求できるのは「既にした履行の割合に応じた報酬」です(同法648条3項2号、656条)。この二つを混ぜないため、未提供部分の精算を定める条と、損害賠償の有無と範囲を定める条は別に置きます。

変更・終了の場面ごとに、契約に必要な措置(点検表)

場面契約に必要な措置書かないほうがよい書き方
軽微な改善、同等以上の代替合理的な理由、品質の同等性、事前の説明。無制限の裁量にはしない「都合により随時変更できる」だけの定め
主要な役務の削減、期間・支援量の減少個別の同意、同意がなければ無負担で解約できる機会、未提供部分の精算利用の継続だけで同意したものとみなす定め
一時的な中断原因と復旧の見込みの通知、期間の延長や代替の提供。連続して長く続くときは解約できる中断中も期間は進行し、一切の補償をしないという定め
恒久的な終了法令による禁止や継続不能などのやむを得ない事由に限る。事前の通知と精算。賠償は別に判断運営上の都合・採算の悪化だけで終了でき、責任を負わないという定め

「連続して長く続くとき」の日数や、通知の日数は、契約で設ける期間です。法律が一般的な最低日数を定めているわけではないので、運営の実情に合わせて決め、販売ページとそろえます。

書き方の例(一般的な例) |コンサルティング・コミュニティ講座の受講契約書(変更・終了の条)

変更できる場面

よくある書き方運営者の都合により、講座の内容を変更し、又は提供を終了できる。
整えた書き方法令への対応、外部サービスの仕様変更、教材の改善などの合理的な理由がある場合に限り変更できる。講師やシステムを替えても、約定した役務の内容と品質を実質的に維持する。

理由変更の理由を限り、役務の同等性を契約の内容にするためです。

重要な変更

よくある書き方通知すれば変更できる。
整えた書き方主要な役務、期間又は支援量を減らす、追加の負担を課すなど重要な不利益を与える変更は、受講者の個別の同意なく行わない。沈黙や利用の継続だけでは同意したものと扱わない。

理由不利益変更を、通知だけで強制しないためです。

同意が得られないとき

よくある書き方規定なし。
整えた書き方同等以上の代替措置を提案する。同意しない受講者は、変更の実施日、又は通知を受けてから所定の日数以内のいずれか遅い日までに、無負担で将来に向かって解約できる。法令上の解除権の行使期間は、この期間に限定しない。

理由選べる機会を保障し、契約が定める期間が法定の権利を縮めないようにするためです。

恒久的な終了

よくある書き方運営者の都合で終了でき、責任を負わない。
整えた書き方法令による禁止、事業継続が客観的に不可能となる事情など、やむを得ない事由がある場合に限る。原則として所定の日数前までに、理由、終了日、精算の方法を通知する。運営上の都合や採算の悪化だけでは終了しない。別の講座への振替やポイントの付与で、金銭の返還に代えることはしない。

理由終了の理由を絞り、返金の代わりに別のものを押しつけられないようにするためです。

終了時の責任

よくある書き方終了によって生じた損害について一切の責任を負わない。
整えた書き方未提供部分は精算条項で処理し、損害賠償の有無と範囲は、賠償の条と法令による。この条を理由として包括的に免責されない。

理由精算と賠償を分けて、包括免責を残さないためです。

表の日数は、契約で設ける期間の例です。法律が定めた日数ではないので、実情に合わせて決めます。もう一つ、定型約款の変更について民法548条の4その他の法令が適用される場合の要件・手続を緩めるものではない、という確認の一項も置いておきます。個別の条項で変更の手続を定めても、法律が求める要件を下回ることはできないからです。

条文例講座内容の変更、中断、終了の条(組み立ての一例)

  1. 運営者は、法令への対応、外部のサービスの仕様の変更、教材の改善その他の合理的な理由がある場合に限り、本講座の内容又は提供方法を変更することができる。ただし、受講者に重要な不利益を与える変更は、受講者の個別の同意を得て行う。
  2. 運営者は、前項の変更を行うときは、その理由、内容、実施日及び受講者への影響を、実施日の○日前までに書面又は電子メールで通知する。緊急の場合は、事後速やかに通知する。受講者の沈黙又は利用の継続のみをもって、重要な不利益を与える変更に同意したものとは扱わない。
  3. 受講者が前項の変更に同意せず、運営者が従前どおりの提供もできない場合、運営者は同等以上の代替措置を提案する。受講者が同意しないときは、受講者は無負担で将来に向かって契約を解約することができ、運営者は、未提供の部分に係る受講料を、別に定める精算の方法により返還する。
  4. 災害、外部サービスの障害その他やむを得ない事由による中断は、必要最小限にとどめ、理由と復旧の見込みを通知する。中断が連続して○日を超えるときは、受講者は無負担で将来に向かって解約することができる。
  5. 本条による解約、中断又は終了に伴う受講料の精算は、第○条による。損害賠償の有無及び範囲は、第○条及び法令による。

第○条は、精算の条と賠償の条を指します。日数は、運営の実情に合わせて定めます。条文例は組み立ての一例であり、講座ごとに提供する役務に応じて書き分けます。

取り扱う手法や商品を変える・加えるとき:講座名、契約書、確認書をそろえる

投資教育の講座は、始めたときの「教育の対象」が、時間とともに変わりやすい分野です。投資教育講座の受講契約書には、現に取り扱う教育対象(相場の一般的な理解と学習方法など)のほか、運営者が将来、別の取引に関する一般的な学習内容を教育対象に加えることができる、という趣旨の条項を置く方法があります。そして、いずれの対象についても本サービスは教育を目的とする一般的情報の提供の範囲にとどまり、行わない行為を列挙した条が等しく適用される、と結びます。

この条項が果たしている役割は、二つあります。一つは、教育対象を増やす可能性を入口で示し、増やしたときの契約上の根拠を作ることです。もう一つは、対象が増えても、投資助言・代理業との線引きの条が自動的にかかることを、あらかじめ書いておくことです。金融商品取引法は、金融商品取引業を登録なしに行うことを禁じています(29条)。報酬を受けて、有価証券や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断について助言を行う契約は、投資助言・代理業にかかわる定義です(2条8項11号、28条3項)。取り扱う対象を増やすたびに、「行わない行為」の列挙がその対象にも及ぶかを確かめる必要があります。線引きの書き方の全体は投資スクールの契約書と投資助言・代理業の線引きで扱います。

ここで、「加える」と「入れ替える」を分けて考えます。

手法・商品の変更は、受講者にとってどちらの変更か

  • 当たらない方向従来の対象はそのまま、新しい対象の教材を追加する受講者の義務を増やさず、受け取れる内容が増えるだけなら、受講者の一般の利益に適合する変更として扱いやすい。追加料金を課さないことが前提
  • 当たる方向追加された対象について、追加の料金や受講を課す受講者に新たな金銭の負担を課すため、個別の申込みと合意が必要。変更の通知だけでは足りない
  • 当たる方向従来の対象の教材やサポートを減らし、新しい対象に重心を移す契約をした目的に関わる変更。同意しない受講者の解約と、未提供部分の精算が必要
  • 当たり得る講座の名称を変え、案内の表現を改める名称は講座の内容を示す重要事項。実際の内容が変わらなくても、受講者が誤認しないか、販売ページ・契約書・表記の名称がそろっているかを確かめる

どの区分になるかは、実際の変更の内容で決まります。表は考え方の整理であり、個別の講座の結論を示すものではありません。

利用規約が定型約款(民法548条の2第1項)に当たる場合、運営者が受講者の個別の同意なしに規約を変更できるのは、変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または、変更が契約をした目的に反せず、変更の必要性、内容の相当性、変更をすることがある旨の定めの有無とその内容などに照らして合理的なときに限られます(同法548条の4第1項)。そして、効力発生時期を定め、変更する旨と内容、効力発生時期を適切な方法で周知しなければなりません(同条2項)。合理性を根拠にする変更は、効力発生時期までに周知しなければ効力を生じません(同条3項)。個別に交渉して結んだ高額の受講契約書は、そもそも定型約款に当たらない可能性があり、その場合は、変更に個別の合意が必要です。どちらの場合も、「将来追加することがある」という入口の一文が、後の手続を楽にします。

名称の問題も軽く見られません。講座の名称、案内の見出し、特定商取引法に基づく表記の商品名は、受講者が何を買うのかを示す情報です。消費者契約法4条1項1号は、重要事項について事実と異なることを告げる行為によって誤認した消費者に、契約の申込み又は承諾の意思表示の取消しを認めます。同条5項1号は、役務の質、用途その他の内容であって、消費者の判断に通常影響を及ぼすべきものを「重要事項」に含めます。講座の名称や、何を教える講座なのかという案内は、この「内容」に当たり得ます。

名称を改めたときは、その経緯と理由を記録に残しておくと、後で「なぜこの名前なのか」と問われても説明できます。たとえば、通信販売には契約内容を記載した書面の交付義務がなく、投資教育は特定継続的役務提供の政令指定役務にも含まれないため、受講者に内容を確認してもらう書面の名称を「重要事項確認書」とする選択があります。名称を選んだ理由と確認書の項目は投資スクールの確認書・重要事項確認書で説明しています。

ヒヤリングの問い|取り扱う対象や講座名を変える前に確かめる問い

  1. 追加する手法や商品は、従来の対象に加える形ですか。従来のものに替わる形ですか。

    加える変更か、入れ替える変更かで、受講者の同意と解約の機会が必要かが変わるからです。

  2. 契約書の教育の対象の条に、将来の追加の可能性が書かれていますか。

    入口に書いてあれば、変更の根拠になり、定型約款の変更で「変更をすることがある旨の定め」を考慮する材料にもなるからです。

  3. 行わない行為の列挙は、追加する対象にも及ぶ文言になっていますか。

    対象ごとに列挙し直さなくても、同じ線が自動的にかかるようにするためです。

  4. 講座名、販売ページ、契約書、確認書、特定商取引法に基づく表記の名称は、同じですか。

    名称の食い違いは、重要事項の誤認を主張される材料になるからです。

  5. 変更の経緯と理由を、書面に残していますか。

    後日、受講者や関係者に説明するときの根拠になるからです。

ツールの提供終了、認証停止:「保有する期間」と「提供完了」を定義する

投資講座は、教材だけでなく、分析ツールや自動売買ソフトなどの「ものを使わせる」部分を併せて提供することがあります。このツールの扱いは、講座全体の変更・終了とは別に、決めておく必要があります。ツールは、運営者自身が作ったものとは限らず、外部の事業者が作ったものを運営者が再提供している場合もあり、提供元の都合で突然動かなくなることがあるからです。

自動売買ソフトの使用許諾契約書の使用許諾の範囲の条に、受講者がソフトを保有する期間といった表現があると、その期間が曖昧になります。認証停止やサービス終了のときにどうなるかを整理し、利用期間が永続なのか期間制なのかを明確にし、複数端末での利用の扱いを決めておく必要があります。提供が完了する時点も、受講者が取得できる状態になった時点ではなく、運営者が送信を完了した時点とするほうが、ダウンロードの失敗などをめぐる争いを避けられます。ここまで書いておけば、後日「いつまで使えるのか」と問われても、契約書の言葉で答えられます。ソフトの返金不可の表示や、不具合と相場での損失の切り分けはEA・自動売買ソフトの利用規約と使用許諾契約で説明しています。

ツールの提供終了の場面で、契約に書いておくこと

場面決めておくことあわせて確かめること
利用期間の満了利用期間は永続か期間制か。期間制なら、満了後に使えなくなる範囲と、更新の条件販売ページの「ずっと使える」などの表示と合っているか
認証の停止どんな場合に認証を止めるか。不正な利用、規約違反、支払いの停止などの事由を列挙し、運営者の都合による停止は別に書く受講者の責めに帰すべき事由による停止か、運営者側の事情による停止かで、返金や期間の延長が変わる
提供元の仕様変更・終了提供元の事情で動かなくなったときの代替手段、期間の延長、未提供部分の精算提供元の障害は運営者の責任外としつつ、対価を受け取る期間の扱いは別に決める
運営者による配布の終了事前の通知の期間、既に取得したものの扱い、継続して使える範囲終了によって講座の主要な内容が失われるなら、前の節の恒久的な終了と同じ扱い

取引履歴を記録・共有するウェブサービスの利用規約にも、この種の定めが見られます。専用のソフトについて、機能改善や保守などを理由に、事前の通知なしに仕様の変更、アップデート、配布の停止、提供の終了ができる、と定める条項です。サービス全体の内容も、事業上の理由その他の合理的な理由があれば、全部又は一部を終了できる、という構成で、有料プランを解約したときの日割りや月割の返金は行わない、という定めも同じ規約に置かれていることがあります。

契約の相手方が消費者に当たる場合、この組合せは、次の三つの点で見直しが必要です。第一に、事前の通知なしに配布を止められる範囲を、緊急のセキュリティ対応など、事前の通知が現実に困難な場合に絞ること。第二に、事業上の理由による終了では、相当な期間の事前の通知と、未提供の期間の精算をセットで書くこと。第三に、解約したときの日割りの不返還が、運営者が終了する場合にまで及ばないようにすることです。事業者自身が提供を終えるのに、「前払いの分は返さない」とするのは、運営者の事情で役務を提供しないのに対価だけ保持する形になり、消費者契約法10条の評価を受けやすくなります。

条文例ツールの提供終了の条(組み立ての一例)

  1. 本ツールの利用期間は、提供開始日から○か月とする。利用期間の満了後は、運営者が別に認める場合を除き、本ツールを利用することができない。
  2. 運営者は、受講者が本規約に違反し、又は支払いを停止したときは、本ツールの認証を停止することができる。この事由に当たらない運営者の都合による認証の停止又は提供の終了は、前条の恒久的な終了の定めによる。
  3. 本ツールの提供元の事情により、本ツールの全部又は一部が利用できなくなったときは、運営者は、代替の手段の提供、利用期間の延長又は未提供の期間に係る受講料の精算のいずれかを行う。
  4. 運営者は、本ツールの提供を終了するときは、緊急やむを得ない場合を除き、終了日の相当期間前までに、受講者に通知する。

ツールの提供が講座の主要な内容に当たるかどうかで、第2項後段、第3項の扱いが変わります。講座の中心がツールであれば、ツールの終了は講座の終了と同じ扱いになります。

講師の交代、運営者が一人のとき、外部サービスの終了

講師と運営者が同じ一人、という講座は少なくありません。講師や運営者の体調、家庭の事情、他の仕事との兼ね合いは、契約書に書かれない出来事ですが、講座の提供の可否を左右します。

高額な講座の受講契約書には、講座の円滑な運営、講師の稼働状況、指導内容、専門性などを考慮して、運営者が担当講師その他の担当者を指定し、又は変更できる、という条項を入れる方法があります。講師を替える自由を運営者に残す一方で、先ほどの変更の条項と合わせて、約定した役務の内容と品質を実質的に維持することが前提になります。担当講師が替わっても、約束した個別コンサルティングの回数や、質問への回答の目安は変わらないからです。

講座の中断と終了の条には、システムの保守、外部サービスの障害、不可抗力、講師の急病その他やむを得ない事情、セキュリティ上の問題などを、一時的な中断の事由として列挙します。事業上の理由その他の合理的な事情により講座の全部又は一部を終了できる旨も書きます。ただし、契約期間中に講座の主要な部分を終了する場合は、相当な期間を設けて事前に通知し、未提供の部分に応じて、代替サービス、提供期間の延長又は受講料の一部返金などの措置を講じる、と書きます。中断や終了の自由と、受講者の救済は、同じ条の中に置きます。

ご質問と回答|提供者が一人の講座で迷いやすいこと

運営者本人が病気になって、一定期間、講座を続けられなくなったときは、どう書いておけばよいですか。

一時的な中断として、理由と復旧の見込みを受講者に知らせ、復旧に努めること、提供できなかった役務は振替や期間の延長などの補完措置、またはその分の精算で処理することを書いておきます。中断が連続して一定の日数を超えるとき、または中断のために契約の目的を達することが難しいときは、受講者が無負担で解約できるようにします。運営者本人でなければ担当できない役務かどうかも、契約の前に確かめておきます。

外部の動画配信サービスが終了して、教材を見られなくなったときは、どうなりますか。

運営者の責めに帰すべき事由がない外部サービスの障害や終了については、責任を負わないと書くことはできます。ただし、代替の手段を運営者が指定し、受講者が代替の手段を利用するために必要な対応をしないときに限って、減額や返金をしない、というように、受講者の側の事情による場合に絞ります。外部サービスの終了のためにそもそも講座を提供できなくなるのなら、恒久的な終了と同じ扱いにして、未提供部分を精算します。

分割払いの途中で講座が提供できなくなったら、残りの分割金の請求はどうなりますか。

提供できなくなった部分の対価を、受講者が払い続ける理由はありません。民法536条1項が、債権者は反対給付の履行を拒むことができるとするのは、その表れです。信販会社のショッピングクレジットを使っていれば、提供できなくなった事由を信販会社に対抗できる場合もあります。契約書には、残額の支払義務を、未提供部分の精算と食い違わない形で書きます。分割払いの仕組みは講座代金の分割払いと割賦販売法で説明しています。

契約期間が終わったあとの動画教材やコミュニティの提供についても、書いておく価値があります。契約期間満了後も、追加の費用なしに、動画教材の閲覧、コミュニティへの参加、コミュニティ上での質問の投稿と回答を利用できる、と書く方法があります。ただし、個別のコンサルティングなどのマンツーマンのサポートは含まれず、質問への回答は一般的なものに限り、回答の時期や回数は保証しません。この無償の部分は、利用期間を設けないものとしながら、運営者が講座の提供自体を終了する場合、動画配信サービスなど必要な外部サービスが終了して継続が難しくなった場合、その他やむを得ない事由がある場合には、終了できるとします。終了するときは、緊急やむを得ない場合を除き、相当な期間を設けて事前に通知します。「永久に提供することを保証するものではない」と書くのは、無償で続けている部分まで、恒久的な義務に格上げされないようにするためです。コミュニティの発言のルールは投資スクールの受講生間トラブルと違約金・講師契約で扱います。

規約を改定して契約の中身が変わるとき:既存の受講者への手続と、構成の落とし穴

講座の販売ページを新しくしたとき、規約も同時に直すことがあります。ここには二つの落とし穴があります。一つは、規約の変更が既存の受講者に及ぶのか、という手続の問題です。もう一つは、見せ方を変えただけのつもりが、契約の性質の評価を動かしてしまう、という問題です。

規約・契約の変更を、既存の受講者との関係で整理する

  1. 受講者の一般の利益に適合する変更誤字の訂正、受講者に有利な方向への変更。周知で足り、個別の同意は要らない(民法548条の4第1項1号)
  2. 合理的な変更契約をした目的に反せず、必要性・相当性・変更条項の有無などに照らして合理的なもの。効力発生時期を定め、その時期までに周知する(同項2号、2項、3項)
  3. 受講者に不利益を及ぼす変更金銭の負担を増やす、主要な内容を減らす、解約を制限する。個別の同意を得る。同意しない人には解約と精算の機会を保障する
  4. 契約の性質が変わる再構成提供する役務の中心が変わるほどの変更は、既存の契約の変更ではなく、新しい契約の申込みとして扱う

階層は、上ほど軽い変更です。下に行くほど、手続は重くなります。

「変更後の規約の効力発生日後に、本サービスを利用した場合、または運営者が定める期間内に異議を述べずに利用を継続した場合は、変更に同意したものとみなす」という条項も、規約の変更の条によく見られます。しかし、沈黙や利用の継続を同意とみなす条項は、消費者契約法10条が例示する「消費者の不作為をもって新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」と近い性質を持ちます。受講者に不利益を与える変更では、このみなしに頼らず、個別の同意を取るほうが、後の紛争に強い設計です。

見せ方の変更が契約の評価を動かすことがあります。会員制のマネー講座の会員規約が、動画教材などのデジタルコンテンツの提供を中心に据え、グループでのコンサルティングやコミュニティは、その利用を補助する付随的なサービスと位置づけ、運営者がコンテンツを閲覧できる状態に置いた時点で履行が始まったとする構成で、返金をしない定めの理由を支えている場合を考えます。

その後、販売の訴求に合わせて、グループコンサルテーション、質問し放題のチャット、受講生コミュニティ、受講期間などを前面に出した内容に改め、同時に、返金の請求だけでなく、解約の請求そのものをできないという表現にしたとします。この場合、次の三つが問題になり得ます。

  • サービスの印象が、動画教材中心の講座から、継続的な人的支援を含む伴走型のサービスへ寄り、「まだサポート期間が残っている」「未提供の部分がある」という主張がされやすくなる。
  • 返金をしない定めを支えていた「履行は開始している」という構成が弱まり、返金や中途解約をめぐる争点が増える。
  • 解約の請求自体をできないという表現は、消費者の解除権を過度に制限する条項として、消費者契約法上の評価が厳しくなる。解約は可能としたうえで、提供済みのコンテンツ、履行済みの役務、確保済みの受講枠などを返金の対象外にする構成のほうが安全性が高い。

ここで、正確にしておくべき点があります。特定継続的役務提供に当たるかどうかは、特定商取引法41条2項に基づいて政令で指定された役務の限定列挙によって決まります。契約書の構成や、サービスをどう描写するかで、該当するかどうかが動くわけではありません。家計管理や資産形成の講座が、構成の書き方次第で指定役務に当たったり外れたりする、という理解は取りません。契約の描写が動かすのは、該当の有無ではなく、受講者から「未提供の部分がある」と主張されやすいか、返金の定めが争いの場で持ちこたえるか、という評価です。この区別を押さえておくと、販売ページの見せ方と、契約書の構成を、一緒に検討する理由が分かります。

ヒヤリングの問い|規約や契約書の構成を改める前に確かめる問い

  1. 変更の対象は、既存の受講者にも及びますか。新規の申込者だけですか。

    既存の受講者に及ぶなら、変更の手続と、不利益変更の個別の同意が必要になるからです。

  2. 受講者に不利益を及ぼす部分は、どこですか。

    不利益変更だけを取り出して個別の同意を得る設計にできるからです。

  3. 販売ページの訴求を変えたとき、契約書の役務の構成は、それに合っていますか。

    訴求と契約書がずれると、未提供の部分がある、という主張がされやすくなるからです。

  4. 解約の請求を制限していませんか。制限しているのは、返金の範囲ですか。

    解約そのものの制限と、返金の範囲の限定は、評価が違うからです。

起きがちなこと

よくあるご質問

運営者の都合で講座を変更・終了できる、と書いておけば足りますか。

足りません。受講者が消費者に当たる場合、「都合により」だけの定めに加えて責任を一切負わないとする条項は、消費者契約法8条1項、8条の2、10条の評価を受けます。変更の理由を法令対応、外部サービスの仕様変更、教材の改善などに限り、重要な不利益を与える変更は個別の同意を取り、同意しない受講者の無負担の解約と未提供部分の精算を書く形が、書き方の型です。

取り扱う手法にFXなどを追加するとき、既存の受講者の同意は必要ですか。

従来の対象をそのままにして新しい対象の教材を追加し、追加の料金も課さないのであれば、受講者の一般の利益に適合する変更として扱いやすくなります。追加の料金を課す、従来の教材やサポートを減らす、という変更は、個別の同意と解約の機会が必要です。いずれの場合も、行わない行為の列挙が追加した対象にも及ぶか、講座名や表記の名称がそろっているかを確かめます。

提供元の事情でツールが動かなくなったら、返金が必要ですか。

一律には決まりません。ツールが講座の主要な内容なら、講座の恒久的な終了と同じ扱いになり、未提供部分の精算が必要です。補助的な内容なら、代替の手段の提供や利用期間の延長で足りる場合もあります。契約書には、提供元の事情で動かなくなったときの代替、延長、精算のどれを行うかを、あらかじめ書いておきます。

運営者が一人で、体調を崩して続けられなくなったときの備えは?

一時的な中断の事由として列挙し、理由と復旧の見込みの通知、振替や期間の延長などの補完措置を書いておきます。中断が連続して一定の日数を超えるとき、または契約の目的を達することが難しくなったときは、受講者が無負担で解約できるようにします。事業そのものを続けられなくなる場合は、恒久的な終了として、事前の通知と精算の対象になります。

契約書の構成を変えれば、特定継続的役務提供に当たらなくなりますか。

なりません。特定継続的役務提供は、特定商取引法41条2項に基づき政令で指定された役務に限られ、契約書の構成や描写では動きません。構成を変えると動くのは、「未提供の部分がある」と主張されやすいか、返金をしない定めが争いの場で持ちこたえるか、という評価です。販売ページの訴求と契約書の構成は、一緒に検討します。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の講座やサービスが投資助言・代理業、業務提供誘引販売取引などに当たるかは、勧誘の方法や講座の実態によって結論が変わります。本サイトは個別の投資判断や投資の助言を行うものではありません。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 金融庁

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