受講生紹介制度と連鎖販売取引:紹介料・アフィリエイト報酬はどこから問題になるか

受講生が受講生を紹介して報酬を得る制度は、紹介者が連鎖的に増える形で、負担が伴い、紹介料で誘うと、連鎖販売取引に当たることがあります。当たらない設計と、規約の書き方を説明します。

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このページの要点

  • 分かれ目は、紹介者が連鎖的に増える形か、紹介者の地位に1円でも負担が結びつくか、紹介料の話が勧誘の材料になっているか(特商法33条)。
  • 二段階目の報酬、紹介者になるための登録料や上位プランの購入、紹介人数によるランクは、当たる方向の設計。
  • 当たると、勧誘前の氏名等の明示、概要書面・契約書面、20日のクーリング・オフ、退会の定めが必要になる。
  • 当たらない設計でも、紹介者の言葉(消費者契約法4条・5条)、広告の表示、友人の個人情報の扱いは規約で規律する。

結論:受講生が受講生を紹介して報酬を得る制度は、「紹介者が組織に加わる形か」「負担があるか」「報酬で誘うか」で連鎖販売取引になる

結論

受講生が別の受講生を紹介して報酬を得る制度は、紹介された人もまた紹介者として組織に加わる形で、加わるために受講料や登録料などの負担が伴い、「紹介すれば収入になる」と示して受講生を誘うと、特定商取引法の連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)に当たることがあります。分かれ目は、紹介者が連鎖的に増える形か、1円でも負担が要るか、紹介料の話が勧誘の材料になっているか、の三つです。制度を作る前に、当たらない形に設計するか、当たる前提で書面とクーリング・オフを整えるかを決めます。

投資・副業のスクールでは、受講生が自分のSNSで講座を紹介し、申込みがあると紹介料や受講料の割引を受け取る制度が珍しくありません。受講生の口コミで広がる点は運営者にとって魅力です。ところが、紹介された人がまた別の人を紹介し、その人たちの分にも報酬が出る、あるいは紹介者になるために受講料や登録料を払う、という仕組みが加わると、特定商取引法(以下「特商法」)の連鎖販売取引の規制を受けます。規約の点検では、受講規約に「ネットワークビジネスの勧誘は禁止」と書きながら、別のページで受講生向けの紹介制度を運営している例が見られます。禁止と推奨が同じスクールの中に並んでいるわけです。

このページは、受講生が紹介者になる制度を作る運営者を読者に想定し、連鎖販売取引の要件の当てはめ、当たったときに必要になること、当たらない設計、規約でよく見られる誤った書き方と直し方、紹介者の言葉や友人の個人情報の扱い、ヒヤリングで確認すること、条文例の順に説明します。外部のアフィリエイターに紹介を任せる契約の一般的な作り方は、別の業種のサイトで扱っているため、ここでは受講生が紹介者になる場合に絞ります。用語は次のとおりです。

  • 紹介者:講座を他の人に案内し、報酬や割引を受ける人。このページでは主に受講生を指します。
  • 紹介先:案内を受けて講座に申し込む人。
  • 連鎖販売取引:個人を販売員として勧誘し、その人にさらに次の勧誘をさせて、販売組織を連鎖的に広げる取引です(特商法33条)。
  • 特定利益:勧誘のときに示される利益です。消費者庁の特商法ガイドは、勧誘した人の入会で受け取れる紹介料を例に挙げています。
  • 特定負担:取引をするために負う金銭的な負担です。同ガイドは、入会金、保証金、サンプル代金など名目を問わず、1円以上の負担が当たると説明しています。

受講生紹介制度の流れと、確かめる場所

  1. 紹介者の登録登録に費用や受講の条件が付くか。特定負担を見ます
  2. 案内紹介者が何を言い、何を投稿するか。不実の説明と広告の表示を見ます
  3. 紹介先の申込み紹介先が紹介者にもなる形か。連鎖の有無を見ます
  4. 報酬の確定解約・返金・クーリング・オフとの関係を見ます
  5. 支払・精算二段階目の報酬や昇格がないかを見ます

五つの場所のうち、どこで負担と連鎖が生じるかを、制度の図にして確かめてから条文にします。

連鎖販売取引の要件を、受講生紹介制度に当てはめるとどう読めますか

消費者庁の特商法ガイドは、連鎖販売取引の要件を三つに整理しています。物品、権利又は役務の販売事業で、再販売、受託販売又は販売のあっせんを行う者が関わること。特定利益を示して勧誘すること。取引条件として特定負担を伴うこと。この三つがそろうと規制の対象になります(特商法33条)。講座は役務ですから、受講生が講座の申込みを取り次ぐ「あっせん」をする者として組織に加わる形になっていると、一つ目の要素に近づきます。

三つの要素を、受講生紹介制度で読むと

要素受講生紹介制度での読み方規約・運営で見る場所
販売のあっせんをする者が組織に加わる受講生に紹介リンクやコードが自動で付き、紹介先も同じ紹介者になれる形。紹介先が紹介者にならず、受講するだけの形なら、この要素は弱くなります紹介制度規約の参加資格、紹介先への案内文、受講契約書の特典の条
特定利益を示して勧誘する紹介料、受講料のキャッシュバック、ポイント、昇格に伴う報酬の増額。「紹介すれば受講料が回収できる」という説明は、利益で誘う典型的な言い方です販売ページ、個別相談の台本、紹介者向け資料、SNS投稿のひな形
特定負担を伴う取引受講料、教材費、紹介者の登録料、月額の会員費、保証金、ツール利用料。紹介者になるために必要な上位プランの購入も入ります料金表、申込フォーム、紹介者の登録画面

名称は問いません。「登録料」を「教材費」に、「紹介料」を「感謝金」や「ポイント」に変えても、実質で見られる前提で設計します。

受講料そのものが「特定負担」になるのは、どんなときですか

受講生は、学ぶことの対価として受講料を払います。それだけなら、受講料は講座の対価であって、紹介者になるための負担とは言いにくいでしょう。見方が変わるのは、受講することと紹介者になることが一体になっているときです。たとえば、販売ページに「受講すると紹介制度に参加でき、紹介料で受講料を回収できる」と書かれ、紹介者の資格が受講生に限られ、受講生なら自動で紹介リンクが付く形です。この形では、受講料が、紹介者として収入を得る地位に加わるための負担と読まれる余地が出ます。

反対に、紹介者の登録が無料で、受講していない人でも登録でき、販売ページで紹介料の話をしない形なら、受講料は講座の対価であって紹介者の地位の対価ではない、と整理しやすくなります。ただし、整理しやすいというだけで、勧誘の言葉と販売の導線の全体で判断される点は変わりません。

業務提供誘引販売取引との違い

紹介活動そのものを「受講生向けの仕事」として運営者が用意し、その収入で受講生を誘う形は、連鎖販売取引ではなく、業務提供誘引販売取引(特商法51条)として検討する問題になります。三つの要件や20日のクーリング・オフを含む整理は、副業スクールと業務提供誘引販売取引で説明しています。紹介制度では、二つの類型のどちらに近いかを先に確かめます。紹介者が連鎖的に増える点が中心なら本ページ、運営者が用意した仕事が中心ならそちらの問題です。

計算例:二段階の紹介料で「元が取れる」と説明するとどうなるか

受講料が30万円(税込)、紹介料が紹介先の受講料の10%(3万円)で、紹介先が紹介した人の分にも3%(9,000円)が上乗せされる制度を例にします。数字は説明用です。

受講生Aの紹介料の計算(説明用)

段階人数1人あたりの紹介料合計
Aが直接紹介した人3人30万円×10%=3万円3万円×3人=9万円
その3人がそれぞれ3人を紹介9人30万円×3%=9,000円9,000円×9人=8万1,000円
Aが受け取る紹介料12人分―9万円+8万1,000円=17万1,000円

受講料30万円に対して、紹介料は17万1,000円です。この数字を示して「紹介だけで受講料の半分を超える額を回収できる」と説明すれば、特定利益で受講生を誘う勧誘になります。

二段階目の報酬は、紹介先が増えるほど、自分が動かなくても入る収入に見えます。この見え方が、特定利益で誘うという要件に結びつきます。二段階目の報酬を置かず、ランクで報酬率が上がる仕組みも置かないことが、設計の第一歩です。

連鎖販売取引に当たると、規約と運営に何が必要になりますか

当たる場合は、制度を統括する運営者、勧誘する紹介者、組織に加わった個人のそれぞれに規制がかかります。消費者庁の特商法ガイドの整理をもとに、紹介制度に引き直すと次のようになります。

連鎖販売取引に当たる場合の主な規制

条文内容紹介制度での意味
33条の2勧誘に先立ち、統括者等の氏名(名称)、特定負担を伴う契約の締結を目的とすること、商品・役務の種類を告げる紹介者が友人に声をかけるとき、最初に講座への申込みの勧誘であることを告げる必要が出ます。雑談から入って後で講座の話を出す運用はできません
34条事実の不告知・不実告知、威迫して困惑させること、目的を隠して誘い出した人を公衆の出入りしない場所で勧誘することの禁止紹介者の言動も対象です。紹介者向けの禁止事項の明文化と周知が要ります
35条・36条広告に特定負担や、特定利益を広告する場合はその計算方法などを表示する義務。誇大広告の禁止紹介料の計算方法を載せる広告は、表示事項と誇大表示の両面で点検します
36条の3承諾のない電子メール広告の原則禁止紹介者が知人へ一斉にメールを送る運用は、承諾の記録の問題になります
37条契約前の概要書面と契約後の契約書面の交付。注意文言とクーリング・オフの記載は赤枠の中に赤字で、8ポイント以上通常の受講契約書とは別に、法定の事項を備えた書面が要ります
40条書面を受け取った日から20日以内のクーリング・オフ。書面または電磁的記録で通知できる書面が渡されていなければ期間は始まりません。紹介料の確定時期にも影響します
40条の220日経過後も、将来に向けた連鎖販売契約(組織からの退会)の解除ができる。商品の販売契約の解除には条件がある退会の手続と受講料の返金方針を、この規定を下回らない形にします
40条の3事実と異なる告知などで誤認して申し込んだときの取消し紹介者の説明が原因で、期間経過後に取消しの主張を受けるおそれがあります

行政処分として、業務改善の指示(38条)、取引等停止命令(39条)、役員等の業務禁止命令(39条の2)の定めもあります。

クーリング・オフが行われたとき、運営者は損害賠償や違約金を請求できず、受け取った代金や取引料を返します(消費者庁の特商法ガイド)。紹介制度では、紹介先が20日以内に解除したとき、紹介者に払った紹介料をどうするかが、運営上の問題になります。紹介料を紹介先の申込み直後に払う設計だと、解除のたびに紹介者から取り戻す作業が生じ、取り戻せなければ運営者の損失になります。報酬の確定を、解除できる期間の満了後に置く理由は、ここにあります。

当たるかどうかを決めないまま運営を始めると、法定の書面が渡されていないため20日の期間が始まらず、受講の数か月後にクーリング・オフを求められる、という事態もあり得ます。また、適格消費者団体は、不実告知や誇大広告、消費者に不利な特約を含む契約の締結などについて、不特定多数に対して行うおそれがある場合に差止めを請求できます(58条の21)。紹介者の言葉が規約の外で広まる制度ほど、運営者が自分の制度の姿を点検しておく必要があります。

なお、無限連鎖講の防止に関する法律は、後から加入した人の出す金銭を先の加入者に配当する仕組みを念頭に置いた別の法律です。講座の提供という実体があっても、紹介料の出どころが後から加わった人の受講料の連鎖だけに見える設計は、別の問題を呼びます。紹介料は、配当を主とする仕組みにしません。

当たらない形にするには、紹介制度をどう設計しますか

設計の判断は、連鎖があるか、紹介者の地位に負担が結びつくか、報酬が勧誘の材料になっているか、の三点に戻ります。次の表は、よくある設計を並べて、要件への近さを整理したものです。個別の制度についての結論ではなく、当てはめの目安です。

紹介制度の設計と、連鎖販売取引への近さ

  • 当たらない方向紹介者の登録は無料で、受講の有無を問わない。紹介先が受講したときに、受講料の一定割合を1回だけ払う。紹介先は紹介者にならない紹介先は受講するだけで、あっせんをする者として組織に加わる形ではなく、紹介者の登録に負担もありません
  • 当たり得る受講生なら全員に紹介リンクが付き、紹介先も同じ制度に参加できる。報酬は自分が直接紹介した分だけ紹介者が連鎖的に増える形になります。受講料と紹介者の地位が結びついて見えないか、販売ページの言い方で左右されます
  • 当たる方向紹介先が紹介した人の分にも、紹介者へ報酬が上乗せされる連鎖の上の人が下の人の勧誘から利益を得る、典型的な構造です
  • 当たる方向紹介者になるために、登録料、月額の会員費、上位プランの購入、教材の購入が必要紹介者としての地位に1円以上の負担が結びつきます
  • 当たり得る紹介人数に応じてランクが上がり、報酬率が上がる。ノルマや昇格の条件がある人数を増やすことへの誘因が強まり、特定利益で誘う色が濃くなります
  • 当たらない方向紹介先と紹介者の双方に、1回限りの受講料の割引を付ける。紹介者の地位や継続的な報酬はない継続的な組織を作らない単発の特典ですが、割引で受講を急がせる言い方があれば別の問題が生じます

「当たらない方向」でも、販売ページ、個別相談、紹介者の投稿を含む勧誘の全体で見られます。表の判定は、書面の文言だけで決まるものではありません。

表の上から二番目の設計が、実務では最も判断に迷います。紹介先が紹介者になれるだけで直ちに連鎖販売取引になるわけではありません。ただ、紹介者が増えるほど紹介料の機会が増える形は、運営者が「紹介者を増やす」ことを目的に制度を運営していると読まれる余地を残します。運営者が紹介者の人数を競わせる施策、紹介者の募集を受講の特典として宣伝する施策を、制度の中に持ち込まないことが、判断を安定させます。

設計時に守る六つの線

  1. 紹介者の登録を、受講契約と切り離す。登録に費用を求めず、受講していない人も登録できるようにする。
  2. 報酬は1段に限る。紹介先が行った紹介を基礎とする報酬、ランクによる報酬率の上昇、人数ノルマは置かない。
  3. 紹介先に、紹介者になることを勧めない。紹介先が自分から紹介者の登録をするのは自由だが、運営者と紹介者は紹介者の募集を行わない。
  4. 紹介料の額や「紹介料で受講料を回収できる」という趣旨を、受講の勧誘の文句に使わない。販売ページには、紹介制度を載せるとしても、受講の判断材料にしない位置と書き方にする。
  5. 報酬は、紹介先の解除・返金の申出ができる期間が満了した後に確定させる。
  6. 紹介活動を「仕事」や「事業」として運営者が用意したように見せない。報酬の額や案件の量を保証するように読める表現を使わない。

規約でよく見られる誤った書き方と、直し方

受講契約書や紹介制度の規約には、制度の設計の問題がそのまま条文に表れます。点検で多い書き方を、整えた書き方と並べます。条文例は、この説明のために書き起こした一般的な例です。

書き方の例(一般的な例) |受講生紹介制度の規約

報酬の段数

よくある書き方紹介者は、自らが紹介した者及び当該紹介した者が紹介した者の受講契約に係る受講料の一定割合を、紹介報酬として受け取る。
整えた書き方紹介報酬は、紹介者が直接案内した者の受講契約に限って支払う。紹介先が行った紹介を基礎とする報酬は支払わない。

理由二段階以上の報酬は連鎖の構造そのものです。直接分に限れば、特定利益で連鎖的に誘う色が薄れます

紹介者の資格

よくある書き方紹介者は、本講座の受講契約を締結した者に限る。登録時に紹介者登録料を支払う。
整えた書き方紹介者の登録に費用は要しない。受講契約の有無を登録の条件にしない。

理由受講と紹介者の地位が結びつき、登録料があると、特定負担の要素がそろいます

返還の範囲

よくある書き方紹介先が解除し、又は返金を受けたときは、紹介者は受領済みの報酬の全額を直ちに返還する。
整えた書き方報酬は、紹介先の解除・返金の申出ができる期間の満了後に確定する。確定後の返還は、紹介者の虚偽の説明など紹介者に責任がある場合に限る。

理由運営者の返金リスクを紹介者に全て負わせると、紹介者が解除を妨げる方向に動く誘因になり、紹介者が消費者であれば消費者契約法10条の評価も受けます

他の規約との矛盾

よくある書き方受講生は、他の受講生に対する営業、勧誘(ネットワークビジネスを含む)を行ってはならない。(紹介制度の規約は別にある)
整えた書き方本規約が定める紹介制度による案内を除き、他の受講生に対する営業、勧誘を行ってはならない。受講生コミュニティの場での紹介の勧誘は、紹介制度でも認めない。

理由禁止と推奨が並ぶと、運営者がどちらを求めているのか分からなくなります。例外と、認めない場を明記します

成果の認定

よくある書き方成果は、紹介リンクを経由した申込みに限る。対面や口頭の申込みは成果と認めない。(別の条では対面の営業を紹介者に勧める)
整えた書き方成果は、紹介コードを入力した申込みに限る。紹介の方法は、運営者が定めた範囲に限る。

理由成果の認定と紹介の方法の条が食い違うと、報酬の請求で争いが起きます

紹介者の表現

よくある書き方紹介者は、自由な方法で本講座を紹介することができる。
整えた書き方紹介者は、収入や成果を保証する表現を用いず、報酬を受けていることを明示し、運営者が定めた表現のルールに従う。違反したときは、報酬を支払わず、登録を取り消すことがある。

理由紹介者の言葉は運営者の責任に結びつきます。自由と書くと、守らせる根拠がなくなります

報酬条件の変更

よくある書き方運営者は、紹介報酬の条件をいつでも変更できる。
整えた書き方運営者は、変更の効力発生日の一定期間前までに通知して変更できる。効力発生日前に確定した報酬には、変更の効力は及ばない。

理由発生済みの報酬を後から減らせる書き方は、紹介者との信頼を損ない、争いの種になります

紹介者の言葉と投稿、友人の個人情報を、規約でどう規律しますか

紹介制度が連鎖販売取引に当たらない設計であっても、紹介者の言葉と投稿から生じる問題は残ります。紹介者は自分が受講した体験を話すつもりでも、聞く側から見れば、運営者の講座を勧める人です。

紹介者の言葉と消費者契約法

消費者契約法4条1項は、事業者が勧誘に際し、重要事項について事実と異なることを告げたこと(1号)や、将来において消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供したこと(2号)により、消費者が誤認して契約したときは、これを取り消せると定めています。「この講座を受ければ月に〇万円稼げる」「紹介すれば受講料は回収できる」という説明は、この規定が想定する場面です。さらに同法5条1項は、事業者が第三者に消費者契約の締結の媒介を委託し、その第三者(二以上の段階にわたる委託を受けた者を含みます)が同じ行為をした場合にも、取消しの規定を準用しています。紹介者が申込みの取次ぎや説明まで行っていると、規約に「紹介者は代理・媒介の権限を持たない」と書いてあっても、運用の実態から、運営者が媒介を委託したものとして評価される余地があります。規約の一文より、運営の実態が見られます。

紹介者の投稿と広告の表示

令和5年10月1日から、景品表示法により、広告であるのに一般消費者が広告と判別しにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)が規制されています。消費者庁は、規制の対象は商品・サービスを供給する広告主で、依頼を受けた第三者は対象外だと説明しています。紹介料を受け取る受講生が体験談を投稿するとき、運営者は広告主の側に立つと考えて運営します。報酬を受けて紹介していることを、投稿を見た人が分かる形で示す義務を、紹介者に課します。

紹介者向け発言ガイドの区分(例)

緑:話してよい事実を述べる

  • 自分が受講した講座の内容と、受講して感じたこと
  • 紹介制度で報酬を受けていること
  • 申込みの案内ページへのリンク

黄:条件つき条件を付けて述べる

  • 自分の成果の数字(個人の結果で、再現性は保証されないことと、算出の前提を併記する)
  • 受講料や返金の条件(要約せず、公式のページを案内する)

赤:話さない述べない

  • 「紹介すれば受講料が回収できる」「誰でも月〇万円」「必ず」「元が取れる」
  • 個別の銘柄や売買の時期を示す投資の助言
  • 目的を隠した誘い出し、受講を急かす言動、紹介者になるよう勧めること

緑・黄・赤の具体例は、紹介者向けの資料に載せて周知し、規約の禁止事項と報酬の不支給の条と結びつけます。投資に関する発言の線引きは、投資・マネー講座の発言ガイドラインと投資スクールの契約書と投資助言・代理業の線引きで説明しています。

「稼げる」「利益が出た」といった表示の扱いは、「稼げる」「利益が出た」の表示と消費者契約法で説明しています。

友人の個人情報の扱い

紹介フォームで、紹介者に友人の氏名や連絡先を入力させる方式は、友人の知らないところで個人情報を集める形になります。個人情報保護法は、偽りその他不正の手段による取得を禁じ(20条1項)、個人情報を取得した事業者に、利用目的を速やかに本人に通知し又は公表することを求めています(21条1項)。また、他の受講生に紹介者の氏名を教えるなど、個人データを第三者に提供するときは、原則として本人の同意が要ります(27条1項)。もっとも簡明なのは、紹介者が友人の情報を入力するのではなく、紹介コードやリンクを渡し、友人が自分で申し込む方式にして、友人の情報の取得を本人の申込みに一本化することです。受講生の個人情報全般の整え方は、マネー講座の個人情報とプライバシーポリシーで説明しています。

ヒヤリングで確認すること:紹介制度を作る前に、運営者に尋ねる

ヒヤリングの問い|受講生紹介制度の規約を作る前に

  1. 紹介者になれるのは誰ですか。受講生だけですか。受講していない人も登録できますか。

    受講と紹介者の地位が結びついているかどうかで、受講料が特定負担と読まれるかが変わるからです。

  2. 紹介者になるときに、登録料、月額の費用、教材やツールの購入、上位プランの契約は必要ですか。

    名目を問わず、1円以上の負担が特定負担に当たり得るからです。

  3. 紹介先も、紹介者として登録できますか。紹介先の紹介分は、元の紹介者の報酬に含まれますか。

    連鎖の構造と、二段階目の報酬の有無を確かめるためです。

  4. 報酬は、いつ、いくら、何を基準に払いますか。ランクや人数による増減はありますか。

    報酬の確定時期とクーリング・オフ・返金との関係、昇格による誘因を確かめるためです。

  5. 販売ページや個別相談で、紹介制度や紹介料の話をしていますか。受講の判断材料として話していますか。

    勧誘の全体で、特定利益で誘っていないかを見るためです。

  6. 紹介者は、申込みの取次ぎや、料金・返金の説明までしますか。

    消費者契約法5条1項の媒介の評価と、紹介者の説明による取消しのおそれを確かめるためです。

  7. 紹介者は、SNSやメールでどんな方法で紹介しますか。広告であることの表示の仕組みはありますか。

    広告の表示と、メール広告の承諾の問題を確かめるためです。

  8. 紹介フォームで、紹介先の氏名や連絡先を紹介者が入力しますか。

    友人の個人情報の取得方法と、利用目的の通知・公表の要否を決めるためです。

受講規約に「他の受講生への勧誘の禁止」があれば、紹介制度との関係も確かめます。

条文例:紹介制度規約の中核部分

次の条文例は、連鎖販売取引に当たらない設計(紹介者の登録は無料、1段の報酬、解除できる期間の満了後に確定)を前提に、この説明のために書き起こしたものです。制度の実態が前提と異なる場合は、そのまま使えません。

条文例受講生紹介制度規約(抜粋)

  1. 当社は、本講座を知人等に案内する者(以下「紹介者」といいます。)が、本講座に申し込んだ者(以下「紹介先」といいます。)を、当社が定める紹介コードにより案内したときに、紹介者に紹介報酬を支払う制度(以下「本制度」といいます。)を設けます。
  2. 紹介者の登録に、登録料その他の費用は要しません。本講座の受講契約の有無は、紹介者の登録の条件としません。紹介者となることは、本講座の受講料の対価に含まれません。
  3. 紹介報酬は、紹介先が紹介コードを入力して申し込んだ受講契約に係る受講料(税込)の〇%とします。紹介先が行った案内を基礎とする報酬、紹介の人数に応じた報酬率の変更は、行いません。
  4. 紹介報酬は、紹介先の受講契約について、法令及び受講契約に定める解除又は返金の申出ができる期間が満了し、かつ、受講料の全額が当社に入金された日に確定します。確定前に当該受講契約が終了したときは、紹介報酬は発生しません。
  5. 紹介者は、紹介先に対し、受講契約の内容、受講料及び返金の条件を、当社の公式ページに記載のとおり案内するにとどめ、これと異なる説明をしません。紹介者は、当社を代理し、又は当社のために受講契約の締結を媒介する権限を有しません。
  6. 紹介者は、次の行為をしてはなりません。(1)収入、利益その他の成果を保証し、又は断定する表現を用いること。(2)紹介報酬を受けることを理由として、受講を急がせること。(3)紹介先に紹介者となることを勧め、又は紹介者となることで収入を得られると告げること。(4)紹介報酬を受けていることを明示せずに、投稿その他の広告を行うこと。(5)紹介先の同意なく、その氏名、連絡先その他の個人情報を当社に伝えること。(6)自己又はその関係者による申込みを紹介として行うこと。
  7. 紹介者が前条の規定に違反したときは、当社は、当該違反に関わる紹介報酬を支払わず、又は登録を取り消すことができます。確定済みの紹介報酬のうち、違反に関わる紹介先に係るものについては、当社は返還を請求できます。
  8. 当社は、紹介報酬の条件を変更するときは、変更の効力発生日の〇日前までに、紹介者に通知します。効力発生日前に確定した紹介報酬には、変更の効力は及びません。

5番目の条の「公式ページに記載のとおり案内する」は、紹介者が独自の説明をして不実告知になることを防ぐ趣旨です。返金が可能な期間は、受講契約書の返金条項と同じ日数にそろえます。返金や中途解約の設計は投資・副業スクールの返金と中途解約で説明しています。

紹介制度の規約を整えても、受講契約書の側に、他の受講生への営業・勧誘を一律に禁じる条項が残っていると、前に見た矛盾が起きます。受講契約書の禁止事項には、紹介制度による案内を除く旨を書き、受講生コミュニティの場での紹介を認めない旨も、紹介制度の規約と同じ言葉で書きます。申込み前の確認画面や確認書の作り方は、投資スクールの確認書・重要事項確認書で説明しています。

よくあるご質問

受講生が友人を紹介して紹介料を受け取る制度は、連鎖販売取引になりますか。

紹介料を払うだけで直ちに当たるわけではありません。連鎖販売取引は、販売のあっせんをする者が組織に加わる形で、特定利益を示して勧誘し、特定負担を伴う取引をさせるものです(特商法33条)。紹介者の登録が無料で、紹介先が紹介者にならず、報酬が1段で、紹介料の話を受講の勧誘に使わない形なら、当たらない方向で整理しやすくなります。紹介先も紹介者になって連鎖が生じる形や、紹介者になるために負担が要る形は、当たり得ます。

紹介料を「アフィリエイト報酬」や「ポイント」と呼べば、連鎖販売取引から外れますか。

外れません。特定負担は名目を問わず1円以上の負担が当たると説明されており、特定利益も、紹介料の名称ではなく、勧誘した人の入会で受け取れる利益かどうかで見られる前提で設計します。「登録料」を「教材費」にする、「紹介料」を「感謝金」にするといった呼び替えは、判断を変える手段になりません。

連鎖販売取引に当たると、受講生は途中でやめられますか。

契約書面を受け取った日から20日以内は、書面または電磁的記録でクーリング・オフができ、運営者は損害賠償や違約金を請求できません(特商法40条)。20日を過ぎても、将来に向けた連鎖販売契約(組織からの退会)の解除ができます(同法40条の2)。法定の書面が渡されていなければ、20日の期間は始まりません。

紹介先が返金を受けたとき、紹介者に払った報酬は取り戻せますか。

取り戻す定めがあっても、運用が難しくなります。報酬を、紹介先の解除・返金の申出ができる期間が満了した後に確定させ、確定前は払わない設計にすれば、返還の問題はほとんど生じません。確定後の返還は、紹介者の虚偽の説明など、紹介者に責任がある場合に限って定めるのが、紹介者との関係でも無理がありません。

受講生がSNSで紹介リンクを貼って体験談を書くとき、運営者は何を決めておくべきですか。

三つを決めます。収入や成果を保証・断定する表現の禁止と、違反したときの報酬の不支給。報酬を受けていることを、投稿を見た人が分かる形で示す義務。申込みの案内は公式ページに任せ、料金や返金の条件を紹介者が独自に説明しないこと。令和5年10月1日から、広告であるのに広告と判別しにくい表示は景品表示法で規制されており、規制の対象は広告主です。

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