このページの要点
- 実績の数字は、実運用・検証運用・バックテスト・デモ・受講生の五種類に分け、種類と期間・資金・コストの条件を数字と同じ場所に表示する。
- 勝率だけ、短期間の年換算、よい期間の切り出し、資金を書かない金額表示は、数字が正しくても実際より優れた内容に見える。
- 収支画像は隠す以外の加工をせず、受講生の画像は掲載の都度同意を得る。第三者検証は確認の主体と範囲を特定して書く。
- 契約書の非保証条項では表示の誤認は消えない。販売ページ・最終確認画面・契約書の三層をそろえ、根拠の原本を保存し、講師やパートナーにも表示のルールを契約で課す。
投資スクールやEA(自動売買ソフト)の販売ページに運用実績・バックテスト・勝率・収支画像を載せるときは、数字が正しいかどうかだけでなく、「何の数字か」「いつ、いくらの資金での結果か」「コストを引いた後か」「全体の一部ではないか」を、数字と同じ場所で言い切れるかどうかで適否が分かれます。契約書に「成果は保証しない」と書いても、この表示の問題は消えません。
実績の表示は集客力の強い素材であり、同時に最も誤認を生みやすい素材です。実際に起きるのは数字の捏造よりも、本当の数字を読み手が違う意味に受け取る形で並べてしまうことです。個々の数字は事実でも、読み手には実際より優れた内容に見えます。
この記事では、数字の種類、誤認を生む場面と計算例、収支画像と第三者検証、関係する法令、契約書の非保証条項の限界、講師・パートナーへの落とし込み方を整理します。「稼げる」「利益が出た」という言葉そのものや先行価格の表示は「稼げる」「利益が出た」の表示と消費者契約法で、講義の中での発言の管理は投資・マネー講座の発言ガイドラインで扱っているため、ここでは「数字と画像の見せ方」に絞ります。
運用実績の数字には何種類あるのか:種類を分けて、種類を表示する
結論から言うと、実績の数字は少なくとも五種類に分け、どの種類の数字なのかを数字のすぐ近くに表示します。種類が混ざったまま並ぶと、読み手は最も印象のよい数字を「実際に得られた成績」として受け取るからです。実務で見られる販売ページでは、これらが同じ見出しの下に区別なく並べられていることがあります。
実績の数字の五つの種類と、表示で添えること(一般的な整理)
| 種類 | 何を示す数字か | 誤認されやすい点 | 数字と同じ場所に添えること |
|---|---|---|---|
| 実運用の成績 | 実際の口座で、実際の資金を使って売買した結果 | 成績のよい口座だけの抜粋、入出金の影響、資金規模の違いが分からないこと | 期間(開始日と終了日)、資金の規模、口座の種類、全口座の結果か特定の口座だけか |
| 検証運用(フォワードテスト) | 決めたルールを、これから先の相場で一定期間動かして確かめた結果 | 実運用と並ぶと、実際の資金での成績に読めること | デモ口座か少額の実資金か、期間、ルールを途中で変えたか |
| バックテスト(過去検証) | 過去の相場データに売買のルールを当てはめて計算した結果 | 実際の取引ではなく計算上のものであること、約定やコストの仮定、過去データに合わせてルールを調整したこと(最適化)が伝わらないこと | 計算上の結果である旨、データの期間と出所、スプレッドや手数料などの仮定、ルールを調整したか |
| デモ口座の成績 | 仮想の資金で売買した結果 | 実際の資金での成績に読まれること | デモ口座であること(「実績」の見出しの下に置かない) |
| 受講生の成績 | 受講生が申告した、または提供した結果 | 全員を代表する結果に読まれること、運営者が確認していないのに確認済みに見えること | 本人の同意、自己申告か確認済みか、受講生全体に占める割合、期間と条件 |
複数の種類を載せるときは、種類ごとに見出しを分けます。
読み手に最も誤解されやすいのがバックテストです。過去の価格データに売買のルールを当てはめて計算したもので、実際には注文が思った価格で成立しないこと、スプレッドや手数料がかかることなどから、計算上の結果と実際の結果は一致しません。過去のデータに合わせてルールの数値を何度も調整すると、過去にはよく当てはまってもこれからの相場では当てはまらないルールができやすく、この調整の有無は読み手には見えません。ですから、「実際の取引の結果ではない」ことに加えて、何を仮定して計算したのか、ルールを調整したのかを数字の近くに書く必要があります。
EAの販売では、バックテストの結果が商品の性能を示す表示そのものになります。契約の組み立てはEA・自動売買ソフトの利用規約と使用許諾契約で扱っています。
勝率が高ければ、優良誤認にならないのか:数字が正しくても誤認になる三つの場面
勝率が高いこと、利益額が大きいことは、それだけでは安全の根拠になりません。結論として、勝率・年換算・損益額は、それぞれ「何と一緒に示すか」を決めないと、実際より優れた内容に見える数字になります。
場面一:勝率だけを示す
勝率は、売買した回数のうち利益が出た回数の割合です。勝った回の利益の大きさと、負けた回の損失の大きさが含まれません。小さな利益を重ね、まれに大きく負けるやり方なら、勝率が高くても全体の損益はマイナスになり得ます。説明のための仮の数字で確かめます。
勝率と損益の関係(仮の数字による計算例・100回売買した場合)
| 勝ち回数×平均利益 | 負け回数×平均損失 | 合計 | 平均利益÷平均損失 | |
|---|---|---|---|---|
| 勝率70%のやり方 | 70回×1,000円=70,000円 | 30回×3,500円=105,000円 | マイナス35,000円 | 約0.29 |
| 勝率40%のやり方 | 40回×3,000円=120,000円 | 60回×1,000円=60,000円 | プラス60,000円 | 3.0 |
勝率が高い方が損失になり、低い方が利益になる場合があります。勝率を示すなら、数え方(回数か金額か)、平均利益と平均損失の比、最大の下落の大きさを同じ場所に示します。
場面二:短い期間の結果を年に換算する
3か月の結果を4倍して年の数字として示す表示は、同じペースが1年間続くことを前提にしています。たとえば、100万円の資金が3か月で115万円になった(プラス15%)場合、単純に4倍すれば「年利60%」、複利なら約74.9%(1.15の4乗が約1.749)となりますが、残りの9か月も同じ結果が出る根拠はありません。1年に満たない結果は年に換算せず、「3か月でプラス15%(資金100万円)」と実際の期間と資金のまま示すのが安全です。
場面三:よい期間だけを切り出す、資金を書かずに金額だけを示す
実運用の成績から、成績のよい期間だけを切り出すと、通年の結果とは別物になります。仮の月次の損益(資金100万円)で確かめます。
同じ12か月から、切り出し方で変わる見え方(仮の数字・単位は万円)
| 切り出す期間 | 損益の合計 | 読み手に与える印象 |
|---|---|---|
| 6月から7月の2か月 | プラス38万円 | 2か月で資金の約38%が増えたように見える |
| 1月から6月の6か月 | プラス14万円 | 前半は小幅な増加 |
| 7月から12月の6か月 | プラス6万円 | 後半は伸び悩み。8月から10月は3か月連続で合計マイナス12万円 |
| 1月から12月の通年 | プラス20万円 | 年間では資金の約20%。うち6月と7月を除くと18万円のマイナス |
同じ運用が「2か月で38%」にも「通年で20%」にも見えます。通年の結果と最大の下落幅(この例では8月から10月の12万円)を並べて示します。
金額だけを示す表示にも注意が必要です。「プラス300万円」と書かれても、投入した資金が3,000万円なら10%、300万円なら100%です。資金の規模を併記するか損益率を示し、期間中の資金の追加や引き出しがあれば、それも添えます。
収支画像と第三者検証は、そのまま載せてよいのか
収支画像(取引履歴や損益の画面を撮影した画像)は、それだけで「本物の成績」を示すように見えますが、画像は何も保証しません。結論として、画像を載せるときは、画像が示す範囲と示さない範囲を表示し、元になった記録を事業者の側で保存します。
画像が示さないこと
一枚の画像は、特定の口座の、特定の期間の、特定の表示の切り取りです。デモ口座か実際の口座か、ほかの口座や期間の結果はどうか、資金の追加や引き出しがあったか、画面が加工されていないか、といったことは画像からは分かりません。そこで、画像の隣に口座の種類、期間、資金の規模、全体の一部かどうかを書き、口座番号や氏名を隠す以外の加工はしない方針を決めておきます。
受講生の収支画像を載せるとき
受講生の収支画像には、氏名、口座番号、取引業者、取引の内容といった個人情報が含まれます。個人情報は利用の目的をできる限り特定して取り扱う必要があり(個人情報保護法17条1項)、特定した目的の範囲を超えて使うには、あらかじめ本人の同意が必要です(同法18条1項)。書面で本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません(同法21条2項)。申込み時の包括的な同意の欄だけで、販売ページや広告への掲載まで許されると考えるのは危険です。掲載の都度、素材・掲載の場所・期間・加工の範囲・撤回の方法を示して同意を得ます。個人情報の考え方はマネー講座の個人情報とプライバシーポリシーでも触れています。
条文例受講生の成績の掲載に関する同意書(新しく書き起こした例)
- 私(以下「掲載者」といいます。)は、当社が、掲載者の取引成績に関する画像又は数値(以下「本素材」といいます。)を、次の場所及び期間に限り、当社の広告又は販売ページに掲載することに同意します。掲載の場所:( ) 掲載の期間:( )
- 本素材は、掲載者の実際の口座の取引履歴に基づくものであり、デモ口座のものではないこと、及び期間と資金の規模を当社に申告したとおりであることを、掲載者は確認します。当社は、本素材を、掲載者の自己申告に基づくものか、当社が取引業者の画面等で確認したものかを区別して表示します。
- 当社は、本素材について、口座番号、氏名その他掲載者を識別できる部分を隠す以外の加工を行いません。数値の変更、一部の取引の削除及び期間の切り出しは行いません。
- 掲載者は、いつでも掲載の中止を申し出ることができます。当社は、申出を受けた日から( )日以内に、当社の管理する場所からの掲載を終了します。すでに配布した印刷物及び第三者が複製したものについては、この限りでありません。
- 当社が掲載者に対して特典その他の利益を提供して本素材の提供又は感想の投稿を依頼する場合、当社は、広告であることが読み手に分かる形で表示します。
第2項で自己申告か確認済みかを区別し、第3項で加工の範囲を限り、第5項で広告であることの表示を約束しています。
第三者検証は、何を保証し、何を保証しないのか
取引業者の履歴や外部の成績確認サービスで、数字が実際の取引に基づくことを第三者に確かめてもらう方法は、表示の信頼性を高めます。ただし、第三者検証が示すのは「確認された範囲の数字が実際の取引に基づくこと」までで、将来の成績や、確認されなかった口座・期間の成績、受講生全体の代表であることまでは示しません。
表示では、誰が、いつ、どの口座の、どの期間を、どの方法で確認したのかを特定します。「検証済み」「公式認証」といった言葉だけを大きく掲げると、運用全体が確認されたかのように読まれます。事業者が自ら検証した場合は「第三者による検証」とは書けず、自己検証と第三者検証は見出しの段階で書き分けます。
景品表示法・特商法・消費者契約法・金融商品取引法は、どこで効いてくるのか
結論として、実績の表示は、広告として見る法令(景品表示法、特定商取引法)と、勧誘の場面として見る法令(消費者契約法)の両方から点検します。投資助言との線引きの面からも見ておく必要があります。
景品表示法:優良誤認と、根拠資料の提出
景品表示法5条1号は、品質などの内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示を、優良誤認表示として禁じています。成績の数字はサービスの内容や効果の表示であり、種類を区別しないバックテスト、切り出した期間、資金を示さない金額は、実際より著しく優れていると示す表示として評価される余地があります。
効果や性能の表示では、消費者庁が合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出されないか根拠と認められないときは、措置命令との関係では不当表示とみなされ(同法7条2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(同法8条3項)。根拠になるのは、取引業者の取引履歴の原本、バックテストのデータとルールと計算の手順、受講生の成績の確認記録です。撮影した画像一枚や個人の感想は根拠として弱いと考えるべきで、求められた期間内に用意できるかは、表示を出す時点で原本を保存しているかで決まります。
特定商取引法:通信販売の広告
ウェブサイトで講座やソフトの申込みを受け付ける販売は通信販売の広告に当たり、特定商取引法12条は、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させる表示を禁じています。成績の表示は、景品表示法と並行して点検します。
消費者契約法:勧誘の場面で見せる画像と言葉
個別相談やセミナーで成績の画像を見せながら説明する場面は、契約の勧誘に当たります。重要事項(役務の質・内容など。消費者契約法4条5項1号)について事実と異なることを告げ、消費者がそれを事実だと誤認して契約したときは取り消すことができ(同条1項1号)、将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供し、それが確実だと誤認させたときも同様です(同項2号)。バックテストの数字を実際の成績のように説明すれば前者に、成績の画像を見せて「この方法でやれば同じ結果になります」と言えば後者に近づきます。取消権は、追認できる時から1年、契約の締結から5年で消滅します(同法7条1項)。契約書に成果を保証しない旨があっても、勧誘の場での言葉による誤認は消えません。この点は「稼げる」「利益が出た」の表示でも扱っています。
金融商品取引法:投資助言との線引き
金融商品取引法は、登録を受けた業者の広告について、著しく事実に相違する表示や人を著しく誤認させる表示を禁じています。名宛人は登録業者ですが、実績の見せ方が厳しく見られる分野であることは、スクールやEAの販売でも変わりません。投資助言・代理業は、報酬を得て投資に関する助言をする事業で、登録が必要です。「この通貨ペアで勝率○%」「講師の推奨どおりに売買した実績」といった表示は、講座の中身が個別の売買判断の提供であることを事業者自らが示す表示になり得ます。契約書で「助言は行わない」と書いても、販売ページが逆のことを示していれば、実態は表示の側で判断されかねません。線引きは投資スクールの契約書と投資助言・代理業の線引きで扱っています。
ステマ規制は、広告であるのに広告であることが一般消費者に分からない表示を、景品表示法5条3号に基づく告示で不当表示と定めるもので、令和5年(2023年)10月1日から運用されています。事業者が受講生に依頼や特典の提供をして書いてもらった投稿も、事業者の広告に含まれ得ます。規制の対象は広告主である事業者です。
契約書の「成果を保証しない」条項は、実績表示の誤認をどこまで打ち消せるのか
結論として、打ち消せません。非保証条項は事業者の責任の範囲を決める条項であり、読み手に持たせた期待は表示や説明の側の問題として、契約書の外で判断されるからです。実務で見られる条項の型は、おおむね四つに分かれます。
- 成果と投資成果を別の項で個別に否認する型。「具体的かつ客観的な成果を保証しない」と「受講後の投資成果も保証しない」を分けて定める書き方で、投資講座の受講契約では最も多く見られます。
- 成果の種類を並べて「その他いかなる成果も保証しない」と締める型。末尾が抽象的で、販売ページの訴求と矛盾したときに、どこまでが否認の範囲かが争いになります。
- 収益の保証を一切しないと定めつつ、事前説明で成果例や過去実績を示す型。注記なしに示せば、非保証の文言があっても景品表示法の問題が残り得る組み合わせです。
- 責任を直接かつ通常の損害に限り、上限額を設け、故意・重過失を除外する型。EAや講座の免責では、「一切の責任を負わない」と書くより、条項として有効に残る可能性が高い書き方です。
四つに共通するのは、いずれも「責任をどこまで負うか」を定めるもので、「どんな期待を持たせたか」は定めていない点です。紛争になると、契約書の文言より、個別相談での説明や広告の表示が契約の内容として主張されます。景品表示法の面でも、広告の表示と契約書の文言の全体として読み手を誤認させていないかが問われます。
法人や個人事業主に売る場合は、実績表示は問題にならないのか
「事業者として申し込む」旨の表明を取っても、問題は消えません。消費者契約法の消費者とは、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人です(同法2条1項)。会社員が副業を学ぶために受講する場合など、事業のためといえるかは、表明の文言だけでは決まらないと考えるべきです。この条項の限界は「事業者として申し込む」条項と「代理店登録」名目の受講契約で扱っています。また、相手が法人でも、「月商100万円超の人が複数いる」といった実績が虚偽や誇張であれば、民法の錯誤(95条1項2号。法律行為の基礎とした事情が表示されていたことが必要です。同条2項)、詐欺(96条1項)、不法行為(709条)の主張は残ります。販売ページの実績は、基礎事情が「表示」されていたことの証拠になりやすい点に注意します。
表示のルールを、販売ページ・最終確認画面・契約書・社内ルールにどう落とし込むのか
結論として、実績の表示は、販売ページ、最終確認画面、契約書の三層と、社内の表示ルールで管理します。返金不可の表示で必要とされる構造と同じで、契約書に書くだけでは足りません。販売ページに数字の種類と条件を示し、最終確認画面で「実績は将来の成果を保証しない」旨への同意を取り、契約書でその内容を約束する、という連動が必要です。社内ルールは、広告担当者、講師、販売パートナーが同じ手順で数字を扱うための層です。
条文例受講契約書・利用許諾契約書の条文例(実績等の表示。新しく書き起こした例)
- 甲が本講座又は本ソフトウェアの広告、販売ページ、説明資料及び講義において示す運用成績、検証結果その他の数値(以下「実績表示」といいます。)は、その種類(実運用の成績、検証運用の結果、過去のデータによる計算結果、デモ口座の成績、受講者の自己申告のいずれであるか)、期間及び算出の条件を併せて示して表示します。
- 過去のデータによる計算結果は、取引の成立する価格、取引にかかる費用その他について一定の仮定を置いて計算した結果であり、実際の取引の結果ではありません。
- 実績表示は、特定の期間、資金及び条件の下での結果であり、乙が同一の結果を得ることを示すものではありません。
- 甲は、実績表示の根拠となる取引履歴その他の記録、検証に用いたデータ及び算出の手順を、当該実績表示を終了した日から( )年間保存します。
- 甲は、乙の成績を実績表示として用いるときは、乙の同意を得ます。この場合、乙の申告に基づく成績と、甲が確認した成績とを区別して表示します。
第1項で種類・期間・条件の表示を約束し、第2項でバックテストの性質を明らかにしています。第4項の保存の約束は、根拠資料の提出を求められたときに備える趣旨です。この条文は、勧誘の場での言葉の管理に代わるものではありません。
講師や販売パートナーに任せる部分は、業務委託契約の側で手当てします。実務で見られる講師契約では、受講者対応や指示への従属は細かく定められる一方、実績をどう語るかは書かれていないことがあります。報酬が粗利に連動する契約では成約を増やす方向に説明が強くなりやすいため、次のような条項を入れます。
条文例講師・販売パートナーとの契約の条文例(実績の語り方。新しく書き起こした例)
- 乙は、本件業務に関して数値、画像又は体験談を示すときは、甲が定める実績表示基準に従い、甲が確認した数値及び画像以外を用いません。
- 乙は、自己の取引成績を述べるときも、その種類、期間及び算出の条件を併せて示します。
- 乙は、甲から報酬、特典その他の利益を受けて行う投稿その他の発信には、広告であることが読み手に分かる表示を付します。
- 甲は、乙の表示が前三項に反すると認めるときは、乙に対し修正又は削除を求めることができ、乙は、求めを受けた日から( )日以内にこれに応じます。
- 乙が前項の求めに応じないときは、甲は、催告のうえ本契約を解除することができます。
第1項で使える数字を事業者が確認したものに限り、第4項で是正の手順を定めています。禁止する表示の例を別紙に並べておくと運用しやすくなります。
よくある失敗と直し方:誤った書き方を、そのまま使える形に
実務で見られる誤りは、条項そのものよりも、条項と表示の組み合わせで起きます。よく見られる書き方と、整えた書き方を対にして示します。
書き方の例(一般的な例) |実績の表示と周辺の書面の直し方(一般的な例)
免責と上限の書き方
理由消費者向けでは責任の全部を免除する条項は無効で(消費者契約法8条1項1号・3号)、上限のような一部免除の条項も、故意・重過失を除くことが明らかでないと無効になるため(同条3項)。
非保証の範囲
理由販売ページの訴求と矛盾したとき、どこまでが否認かが争いになり、広告表示の問題としても評価されるため。
個人差の注記
理由一般的な注記だけでは数字の意味は伝わらず、強調された数字の印象を打ち消せないため。
成果例・収益モデル
理由平均と個別の差を説明しないと、読み手は最もよい例を平均だと受け取るため。
バックテストの年利表示
理由実際の取引の結果と区別されないと、実際より優れた内容に見えるため。
数字の管理
理由根拠資料の提出を求められたときに期限内に用意できなければ、表示の合理性を示せないため。
提携・代理店契約の広告条項
理由遵守とだけ書いても、何を禁じたのかが担当者に伝わらず、是正を求める根拠にもならないため。
受講生の発信
理由事業者が自分の販売ページに載せ直した時点で、事業者自身の表示として点検されるため。
ヒヤリングで確認すること:実績を載せる前に聞く
表示を作る前に、次の点を確認します。回答によって、載せられる数字と、添える条件、保存する記録が決まります。
ヒヤリングの問い|実績の表示を整える前の確認
載せたい数字は、実運用、検証運用、バックテスト、デモ、受講生の成績のどれですか。
種類によって添える条件と根拠にする資料が変わります。複数なら見出しを分けます。
実運用なら、全口座の結果ですか。資金の規模と入出金の有無は。
成績のよい口座だけの抜粋になっていないかを確かめ、損益率の計算方法を決めるためです。
バックテストなら、データの期間と出所、コストの仮定、ルールを過去データに合わせて調整したかどうかは。
計算上の結果であることと、調整による見かけの成績の可能性を伝える必要があるためです。
画像は取引業者の画面ですか。誰が、いつ撮影し、どんな加工をしますか。
加工を隠す範囲に限ることと、画像の元データを保存する体制を決めるためです。
受講生の成績を使うなら、本人の同意、自己申告か確認済みか、特典の有無は。受講生が自発的に投稿したものを再掲載しますか。
同意の取り方と、広告であることの表示の要否、再掲載で事業者自身の表示になるかが、これで決まるためです。
第三者検証を使うなら、誰が、どの口座の、どの期間を、どの方法で確認しますか。
「検証済み」の表示が、確認された範囲を超えた印象を与えないようにするためです。
表示の根拠となる原本は、誰が、どこに、いつまで保存しますか。表示を取り下げる手順は。
根拠資料の提出を求められたときに用意できるかと、古い数字が残らないかを左右するためです。
セミナーや個別相談で実績を見せながら説明するのは誰ですか。台本や録画はありますか。
紛争では説明時の言動が契約の内容として主張されるため、説明を後から確かめられる形にしておく必要があるからです。
講師、販売パートナー、アフィリエイトはいますか。報酬は売上や粗利に連動しますか。表示のルールの周知と是正の手段は。
報酬が成約に連動すると説明が強くなりやすいためです。
受講者は会社員の副業が中心ですか、事業者ですか。最終確認画面に実績への同意欄はありますか。
表明だけで消費者に当たらないと言い切れるか、三層の連動が取れているかを判断するためです。
回答は、販売ページの表示文、契約書の条文、社内の表示ルールにそのまま転用できる形で整理しておきます。
起きがちなこと
運用実績・バックテスト・勝率・収支画像の表示は、数字の正しさだけでなく、種類・期間・資金・コスト・範囲を数字と同じ場所で言い切り、その根拠を保存しているかで決まります。個別の相談の場面での言葉の管理は投資・マネー講座の発言ガイドライン、申込み前に勧誘の内容を記録する書類の作り方は投資スクールの確認書・重要事項確認書で扱っています。
よくあるご質問
バックテストの結果を、販売ページに載せてもよいですか。
載せること自体はできますが、実際の取引の結果ではなく計算上の結果であることを、数字の近くに書く必要があります。あわせて、データの期間と出所、スプレッドや手数料などの仮定、ルールを過去のデータに合わせて調整したかどうかを示します。実運用の成績と同じ見出しの下に置かず、種類ごとに見出しを分けます。
勝率だけを示すのは問題ですか。
勝率には、勝った回の利益の大きさと負けた回の損失の大きさが含まれません。勝率が高くても、全体では損失になることがあります。勝率を示すなら、数え方(回数か金額か)を書き、平均利益と平均損失の比、最大の下落幅を同じ場所に示します。
受講生の収支画像を、広告に載せるにはどうすればよいですか。
掲載の都度、素材、掲載の場所と期間、加工の範囲、撤回の方法を示して本人の同意を得ます。口座番号や氏名を隠す以外の加工はせず、自己申告か事業者が確認したものかを区別して表示します。特典を渡して依頼した投稿は、広告であることが読み手に分かる形で示します。
法人や個人事業主向けの講座なら、実績の表示は自由に書けますか。
自由とは言えません。「事業者として申し込む」旨の表明があっても、事業のために契約したといえるかは表明の文言だけでは決まりません。相手が法人でも、虚偽や誇張のある実績は、民法の錯誤、詐欺、不法行為の主張の根拠になり得ます。
契約書に「成績を保証しない」と書いてあれば、成績の画像を載せても大丈夫ですか。
大丈夫とは言えません。広告の表示は景品表示法5条1号や特定商取引法12条の観点から、勧誘の場の説明は消費者契約法4条1項1号・2号の観点から、契約書とは別に点検されます。非保証の条項は、勧誘の場の言葉や広告の表示による誤認を打ち消しません。数字の種類、期間、条件の表示と、根拠の記録の保存が必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の講座やサービスが投資助言・代理業、業務提供誘引販売取引などに当たるかは、勧誘の方法や講座の実態によって結論が変わります。本サイトは個別の投資判断や投資の助言を行うものではありません。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 金融庁