「事業者として申し込む」条項と「代理店登録」名目の受講契約

開業前の会社員が副業のために受ける講座は、「事業のため」の契約なのか。申告の一文は、その答えを決めません。

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事業者向けの条項だけで組んだ契約書は、前提が崩れたとき、返金・免責・解除の定めがまとめて争われます。

このページの要点

  • 消費者かどうかは契約の目的と実態で決まり、申告は材料の一つ。営業のための契約を除く26条1項1号や50条1項1号も、実態で判断される。
  • 業務提供誘引販売取引の章(51条〜58条の3)には、営業のための契約を一般に除く規定がない。52条・55条・58条は、事業所等によらないで業務を行う個人が相手のとき。
  • 「代理店登録」「パートナー契約」の名目でも、実態が講座なら講座として評価される。登録料の名義の金銭は取引料に含まれ得るため、仕事の提供や紹介報酬の有無を確かめる。
  • 返金の制限、広い競業の避止、高額の違約金、抽象的な解除事由の組合せは、受講者側から点検したときに並ぶ項目。消費者に当たり得ても耐える条項にしておく。

結論:「事業者として申し込む」の一文が動かせるものは限られる

結論

副業・起業のスクールの受講契約に「受講者は、事業活動又はその準備として契約する」と書いても、それだけでは、消費者契約法の適用も、特定商取引法の適用も外れません。消費者に当たるかどうかは、契約の目的と実態で決まるからです。「代理店登録」「パートナー契約」という名目をつけても、実態が講座の受講であれば、講座として評価されます。受講者の目的を申告してもらう欄を設けたうえで、その申告だけでは法律の適用が決まらないことを契約に書き、消費者に当たり得る受講者にも耐える条項で組み立てるのが基本です。

副業・起業のスクールの申込者には、おおまかに三つのタイプがあります。会社に勤めながら、副業を始めたいと考えている人。すでに開業届を出し、屋号の口座で事業をしている個人事業主。法人として申し込む人です。このうち法人は、消費者契約法上の消費者に含まれません。問題は最初の二つ、特に、これから始める人です。事業を始めたいから講座を受けるのであって、事業を営んでいるから講座を受けるのではない、という人たちです。

運営者の側は、この人たちを「事業者」として扱いたくなります。事業者どうしの取引であれば、返金の制限や免責を、契約で自由に決められる範囲が広いからです。そこで、受講契約書に次のような一文が入ります。「乙は、事業活動又はその準備の一環として本契約を締結する」。この一文が、本当にその役割を果たすかどうかが、このページの主題です。

開業前の個人との一般的なコンサル契約で、事業者か消費者かをどう確かめるかは、姉妹サイトのコンサル契約の解説で詳しく扱っています。ここでは、副業・投資のスクールに特有の次の事情に絞ります。

  1. 会社員の副業準備や、未経験からの起業支援という、受講者の属性そのものが曖昧な講座
  2. 高額な講座を「代理店登録」「パートナー契約」の名目で受講させる構造
  3. 仕事や案件を紹介する、収入の可能性を示す、といった訴求と、業務提供誘引販売取引との交差
  4. 受講者側から点検したときに並ぶ項目が、運営者にとって何を意味するか

一文が動かすもの、動かさないもの:法律ごとの整理

「事業者として申し込む」の一文がどこまで働くかは、法律ごとに違います。次の表で整理します。

「事業者として申し込む」の条項と、各法律の適用

法律・規定条文が見ているもの一文の働き
消費者契約法2条1項・2項個人が「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」を除いて、消費者とする。法人は事業者申告は事情の一つにとどまり、契約の目的と実態で客観的に判断される。申告があるからといって、事業者とは決まらない
特定商取引法26条1項1号訪問販売・通信販売・電話勧誘販売で、申込者が「営業のために若しくは営業として締結するもの」を適用除外とする適用除外に当たるかどうかも実態による。除外されない場合、電話勧誘販売の書面やクーリング・オフの規定がかかる
特定商取引法50条1項1号特定継続的役務提供のうち、受領者が営業のために又は営業として締結するものを適用除外とするそもそも、講座が政令指定の7役務のいずれかに当たらなければ、この条文は問題にならない
特定商取引法の業務提供誘引販売取引の章(51条〜58条の3)26条1項1号や50条1項1号のような、営業のための契約を一般に除く定めは、この章にはない。ただし、52条、55条、58条は、業務を事業所等によらないで行う個人が相手のとき一文を置いても、この章の適用を外す根拠にはならない。当たるかどうかは、仕事の提供・あっせんと、収入の可能性による誘引で決まる
民法90条(公序良俗)・420条(賠償額の予定)契約の当事者の属性にかかわらず、条項の内容で判断される事業者どうしの契約でも、行き過ぎた競業の禁止や高額の違約金は無効となり得る

表は、条文が見ている事柄の整理です。具体的な講座がどれに当たるかは、勧誘の方法、仕事の提供の有無、教える内容などの実態で決まります。

この表から読み取れる点が二つあります。第一に、「事業者として申し込む」という申告は、26条1項1号のような適用除外の主張を支える材料にはなっても、それだけで適用除外が成立するわけではありません。第二に、業務提供誘引販売取引の章には、営業目的の契約を一般に除外する規定そのものが置かれていません。この取引について、ただ事業者であることを理由に適用を外す説明は、不適切です。

未経験者の起業を支援する講座の契約書では、次の点に注意が必要です。申込資格の条が、個人事業主又は法人を対象とし、事業目的で申し込む旨を定める一方で、役務の条が未経験から起業するためのサポートを含んでいる、という食い違いが生じることがあります。個人については契約の目的と実態を客観的に確かめるべきで、開業届、屋号、確認欄だけで結論を出してはならない。起業の準備だから常に消費者、または常に事業者、とも断定できない。法人は、消費者契約法上の消費者に含まれない。ここまでが整理の結論です。

会社員・開業前の受講者:一文より先に、申告と別紙を整える

副業の講座では、受講者の「事業」が実体を持つ前に契約が結ばれます。この場面で、運営者ができることは、事業者であることを断定して契約書に書くことではなく、受講者が何のために受講するのかを、事実として記録することです。

未経験者の起業を支援する講座の契約書は、次のように直す方法があります。受講者が、自分の受講目的と登録情報を正確に伝える。本講座を事業として又は事業のために受講する場合には、その事業の内容と、本講座との関係を別紙に記載する。そのうえで、受講者の法令上の消費者該当性や特定商取引法の適用は、契約の目的、勧誘の方法その他の実態に基づいて判断され、申告だけで法令の適用を排除するものではない、と契約に書く。申告方式にする理由は、単純です。申告を「事業者です」という宣言にしてしまうと、実態が違ったときに、運営者が実態を知っていたことの材料にもなり得るからです。

書き方の例(一般的な例) |未経験者の起業支援を含む講座の契約書(申込資格の条)

事業者であることの記載

よくある書き方申込者は個人事業主又は法人とし、事業目的で申し込む。
整えた書き方受講目的と登録情報を正確に伝える。事業として又は事業のために受講する場合は、その事業の内容と講座との関係を別紙に記載する。消費者該当性や特定商取引法の適用は、申告だけでは排除されない旨を明記する。

理由未経験者を含む実態と、事業者に限る文言のずれをなくすためです。

未成年者・成年被後見人等

よくある書き方成年後見等を受けていること自体を理由に、拒否や当然解除ができる旨の記載。
整えた書き方未成年者は法令に従い法定代理人の同意等を得る。成年被後見人等も、それぞれ必要な手続により、その属性のみを契約成立後の当然解除や不返還の理由としない。

理由属性だけを理由にした一律の扱いを避け、法令上必要な手続の確認に置き換えるためです。

認証情報の提供

よくある書き方SNSのアカウントの確認を広く認める旨の記載。
整えた書き方契約の履行に必要な範囲を超えて、外部のSNSのパスワードその他の認証情報の提供を求めない。

理由受講者の私的な領域への立入りを、必要最小限にするためです。

起業を目指す人から副業に関心のある人まで、対象を広く受け入れる講座の受講契約書には、受講者を個人として受け入れ、クーリング・オフに相当する取消しの制度を置く例があります。このように募集の対象が広い講座では、申込者のうち、すでに事業を営んでいる人は一部にとどまるのが通常で、「事業者として」の条項を前提に契約を組み立てると、前提が崩れる受講者のほうが多くなります。事業者かどうかを賭けるより、消費者に当たり得る受講者でも耐える条項にしておくほうが、運営者にとって安全です。

事業者であることを確かめる材料として、開業届の写しや屋号の口座などを提出してもらう運用もあります。事業者であることの立証を補う実務対応としては、開業届の写しや法人番号の提出、事業者としての意思を確認する書面への署名が挙げられます。ただ、書類が揃っていれば事業者と決まるわけではなく、書類が無ければ消費者と決まるわけでもありません。書類は、実態を確かめるための事実の一つです。確認できないときは、事業者を前提にした条項を使わず、消費者に当たり得る受講者向けの扱いで契約を進める、という運用を、申込みの段階で決めておきます。

ヒヤリングの問い|受講者の属性を確かめる前に決めておく問い

  1. 募集の対象に、開業前の人や会社員の副業準備の人が含まれていますか。

    含まれるなら、事業者を前提にした条項だけでは足りないからです。

  2. 申込みの際に、受講目的と事業の内容を書いてもらう欄はありますか。

    実態を記録として残し、事業者と書かれていても適用が決まらないことを契約に明記する前提になるからです。

  3. 開業届、屋号、口座などを、確認の材料として求めますか。求めるなら、確認できないときはどうしますか。

    確認できないときの扱いを決めておかないと、材料を集める意味が薄れるからです。

  4. 契約書は、受講者が消費者に当たり得る場合の条項(返金、免責、解除、違約金)で組んでいますか。

    事業者の前提が崩れたときに、条項がまとめて無効にならないようにするためです。

「代理店登録」「パートナー契約」の名目の受講契約:名前ではなく中身で見る

高額な講座を、「代理店登録」などの名目で受講させる契約があります。この種の契約は、形式上は講座の受講契約であっても、実質的には高額な情報提供型のサービス契約であり、事業支援を名目とするビジネス投資の性質を併せ持つものと整理できます。契約の中身は、講座の動画やテキスト、チャットでの質疑応答といった提供内容に、前払いの一括金、教材やノウハウの権利の帰属、秘密保持、競業の避止、抽象的な解除の事由などの条項が組み合わさったものになりがちです。

「代理店」と呼ばれていても、実際に受講者が行うのは、講座を受けることです。運営者が商品を卸して再販売させるわけでも、運営者が仕事を発注するわけでもなければ、この契約を代理店契約として扱う理由はありません。一方で、名目が「代理店」「パートナー」「登録」であるために、次の二つの類型の確認が必要になる場面があります。

  • 業務提供誘引販売取引(特定商取引法51条1項):商品や提供される役務を利用する業務で、運営者が自ら提供し、又はあっせんするものに従事することにより得られる利益(業務提供利益)を収受し得ることで相手方を誘引し、特定負担(商品の購入、役務の対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をするもの。同条2項は、取引料を、「取引料、登録料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず」取引をするに際し提供される金品と定めています。登録料という名目も、取引料に含まれ得ます。
  • 連鎖販売取引(同法33条1項):商品の再販売、受託販売、販売のあつせんをする者や、同種の役務の提供やそのあつせんをする者を、特定利益(他の者が提供する取引料などの利益)を収受し得ることで誘引し、特定負担を伴う取引をするもの。同条3項の取引料にも、「加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず」とあります。受講者が他の人を講座に勧誘すると報酬が出る仕組みがあれば、確認の対象になります。

「代理店登録」の名目の講座で、確認が必要になる場面

  • 当たらない方向名目だけが代理店で、実際は講座を受けるだけ。運営者が仕事を発注・あっせんすることも、紹介の報酬もない業務提供利益や特定利益を示した誘引がなければ、51条1項や33条1項の定義に当たらない。通常の役務提供として、消費者契約法などで評価される
  • 当たり得る講座の受講者に、運営者が案件を紹介する、または発注すると説明し、収入の見込みを示して誘う運営者が自ら提供・あっせんする業務で得られる利益で誘引していれば、業務提供誘引販売取引に当たり得る。勧誘の言葉と、案件紹介の実際の運用で決まる
  • 当たり得る受講者が、別の人を講座に誘うと報酬が出る特定利益で誘引していれば、連鎖販売取引の確認が必要になる。紹介制度の設計と、報酬の出どころで決まる
  • 当たり得る登録料や保証金の名目の金銭を、講座料とは別に受け取る名義にかかわらず、取引料に当たり得る。上の二つのどちらかの類型に当たるかを、あわせて確かめる

表は、確認が必要になる場面の整理です。結論は、勧誘の言葉、広告、仕事の紹介の運用などの実態で決まります。

業務提供誘引販売取引に当たる場合は、概要書面と契約書面の交付(55条)、不実告知などの禁止(52条)、契約書面の受領から20日以内の書面による解除(58条1項)など、独自の規制がかかります。これらの規定は、その業務を事業所等によらないで行う個人が相手の場合に働くので、自宅で在宅の仕事をする受講者は典型です。解除に伴う損害賠償・違約金の額は、58条の3で制限されます。この取引類型には、法定の中途解約権の定めはありません。講座の受講料と、案件の紹介や仕事の提供をどう切り離すか、当たる前提で整えるかどうかは、副業スクールと業務提供誘引販売取引で説明しています。

組み合わさると崩れる条項:受講者側から点検したときの項目

前節のような「代理店登録」名目の契約は、受講者側の視点でも点検できます。この種の契約書を、運営者側と受講者側の両方から評価すると、受講者側に並ぶ問題の項目は、運営者から見れば、「紛争になったときに、争われる順番」を示しています。

この種の契約書を、受講者側と運営者側から点検したときの対比

条項受講者側から見た問題運営者側の書き直しの方向
事業者として契約する旨消費者保護法制の適用が排除される設計に見える。実態が消費者なら保護される余地がある排除を狙う書き方をやめ、申告と別紙で目的を記録し、消費者に当たり得ても耐える条項にする
返金教材や動画に一度でもアクセスすると返金請求権がなくなる。返金の例外が、講座が全く開催されなかった場合に限られるアクセスだけで全額を消化したと扱わず、提供済みの期間や回数で精算する。事業者都合の終了は未提供分を返す
講座の停止・変更・終了運営者が裁量で停止・変更・終了でき、代替措置も返金もない理由を限り、通知、代替、精算を置く(変更・停止・終了のページで詳述)
競業の避止契約期間中と終了後長期間、国内で同種の事業を全面的に禁止し、違反に高額の違約金と損害賠償地域・期間・対象行為を絞り、違約金の根拠を文書にしておく
解除「信用を著しく損なう行為」などの抽象的な事由で、催告なしに解除でき、返金せず、未払金は一括請求事由を具体的な行為で列挙し、注意、是正の求め、解除という段階を踏む。軽微な違反は是正の機会を与える
免責「一切責任を負わない」軽過失の責任まで全部免除する形をやめ、軽過失に限った上限を置くなど、範囲を絞った形にする(消費者が相手なら、事業者、その代表者又はその使用する者の故意・重過失による場合を除く旨を、上限の一文の中に書く)
管轄運営者の所在地の裁判所だけが専属管轄で、遠方の受講者は訴えにくい受講者の住所地または運営者の本店所在地を付加的に合意管轄とする

このうち、競業の避止と違約金の組合せが、最も誤解されやすい部分です。「全国・長期間・同種または類似事業」という制限は、公序良俗に反するとして民法90条の議論が起こり得る広さです。地域を限る、対象を講座と同一の内容に絞る、違約金の額の根拠となる逸失利益の想定を契約の外で文書にしておく、という方向が考えられます。違約金には、民法420条3項が、違約金を賠償額の予定と推定するという定めがあります。つまり、定めた額は、損害の立証がなくても請求できる反面、定めた額を超える損害の賠償は、請求しにくくなります。

消費者契約法9条1項1号は、「当該消費者契約の解除に伴う」損害賠償の額の予定や違約金のうち、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。競業の避止に違反したときの違約金は、契約を続けたまま違反に科す形なら解除に伴うものではないので、9条1項1号が直接当たらない場合があります。その場合でも、同法10条の評価と、民法90条の評価は残ります。「消費者契約法の9条には当たらない」という理由だけで、違約金の額を高く設定することは、勧めません。

最後に、合意管轄の点です。事業者の所在地の地方裁判所だけを専属管轄とする条項は、受講者の住所地または事業者の本店所在地の地方裁判所・簡易裁判所を付加的に合意管轄とする定めへ改める方法があります。元の条項が常に無効という意味ではなく、遠隔地の受講者の裁判上の負担を減らすための変更です。民事訴訟法の事物管轄・法定管轄・移送の規定も妨げません。受講者が全国に散らばるオンライン講座では、実質的に争う道を閉ざす設計は、評価を厳しくする要因になります。

条文例受講目的の申告と適用法令の条(組み立ての一例)

  1. 受講者は、自己の受講目的及び登録情報を、運営者に正確に伝える。本講座を事業として又は事業のために受講する場合は、その事業の内容及び本講座との関係を、別紙に記載する。
  2. 受講者が消費者契約法上の消費者に当たるか、特定商取引法の適用があるかは、契約の目的、勧誘の方法その他の実態に基づいて判断される。前項の記載は、法令の適用を排除するものではない。
  3. 運営者は、契約の履行に必要な範囲を超えて、受講者の外部のアカウントのパスワードその他の認証情報の提供を求めない。
  4. 本契約のいかなる定めも、受講者に法令上認められるクーリング・オフ、解除、取消し、返還、中途解約の権利を制限しない。

第4項は、強行規定に基づく受講者の権利を契約が縮めないことを確認する条項です。条文例は組み立ての一例であり、講座の実態に合わせて書き分けます。

確認の順序:事業者条項より前に、勧誘の経路と仕事の提供を確かめる

受講者が消費者かどうかに加えて、取引のかたちが、どの法律の類型に当たるかを確かめる順序があります。未経験者の起業支援の講座では、次の順序で確認します。

適用される法律を確かめる順序

  1. 受講者の目的事業として又は事業のためか。実態で確認する
  2. 勧誘の経路広告からの直接の申込みか。電話・ビデオ会議などでの勧誘があったか
  3. 仕事の提供・あっせん運営者が仕事を出す、紹介する、それによる収入で誘うか
  4. 指定役務の該当性教える内容が、政令指定の7役務のいずれかに当たるか

複数の類型が重なる場合もあります。順に確認し、結果に応じて法定の書面や表示を契約書と矛盾しない形で整えます。

勧誘の経路は、見落としやすい点です。オンラインで申込みを受けても、その前に運営者が電話をかけ、または政令で定める方法で電話をかけさせ、その電話で契約の勧誘をして、後に郵便等で申込みを受けた場合は、電話勧誘販売(特定商取引法2条3項)に当たり得ます。この場合は、法定の書面を受領した日から起算して8日以内の書面等による申込みの撤回等が認められ(24条1項)、撤回等に伴う損害賠償・違約金は請求できません(同条3項)。営業のために若しくは営業として締結する契約は26条1項1号で適用除外とされますが、前に見たとおり、その判断は申告ではなく実態です。広告や勧誘の言葉の確認は「稼げる」「利益が出た」の表示と消費者契約法で、申込みの前に残す確認書の設計は投資スクールの確認書・重要事項確認書で説明しています。

この確認の結果は、契約書だけでは完結しません。電話勧誘販売の書面には、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し、8ポイント以上の文字を用いるといった様式の要件があります(施行規則46条2項・3項)。業務提供誘引販売取引や特定継続的役務提供でも、それぞれ法定の書面の記載事項が定められています。該当する類型が確定した場合は、法定書面を、契約書と矛盾しない内容で、別に整備する必要があります。広告、申込画面、規約、プライバシーポリシーが、契約書の返金・免責・変更の定めと食い違っていないかの確認も欠かせません。

起きがちなこと

よくあるご質問

受講契約に「事業者として申し込む」と書けば、消費者契約法は適用されませんか。

適用は外れません。消費者契約法2条1項は、個人が「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」を消費者から除いており、その判断は契約の目的と実態で行われます。受講者の申告は、判断の材料の一つにとどまります。開業前の人や会社員の副業準備の人が受講者に含まれるなら、消費者に当たり得る前提で条項を組みます。

開業届の写しを提出してもらえば、事業者と扱えますか。

それだけでは決まりません。開業届の写しや屋号の口座は、事業の実態を確かめるための材料の一つです。書類が揃っていれば事業者と決まるわけではなく、書類が無ければ消費者と決まるわけでもありません。確認できなかったときの扱いを、申込みの段階で決めておくことが必要です。

「代理店登録」という名目にすれば、講座の規制を受けませんか。

名目では決まりません。実態が講座の受講であれば、講座として評価されます。仕事の提供やあっせんによる収入で誘っていれば、業務提供誘引販売取引(特定商取引法51条)の確認が、受講者を他の人の勧誘に使い報酬を出す仕組みがあれば、連鎖販売取引(同法33条)の確認が必要です。登録料という名義の金銭も、取引料に含まれ得ます。

業務提供誘引販売取引の章にも、事業者を除く規定はありますか。

特定商取引法の第五章(業務提供誘引販売取引、51条〜58条の3)には、26条1項1号や50条1項1号のような、営業のための契約を一般に除外する規定はありません。ただし、52条、55条、58条などは、その業務を事業所等によらないで行う個人が相手のときの規定です。当たるかどうかは、仕事の提供・あっせんと、収入の可能性による誘引で決まります。

競業の避止と高額の違約金は、事業者なら自由に定められますか。

自由ではありません。地域、期間、対象行為が広すぎる制限は、民法90条により無効となり得ます。違約金は民法420条3項により賠償額の予定と推定され、消費者が相手なら、消費者契約法10条の評価も受けます。地域や対象を絞り、額の根拠を文書にしておくことが必要です。

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